2-25 ダンジョン攻略完了
学園祭も終わり、秋の季節。
生徒会パーティでダンジョン攻略に挑むことになった。
前衛は俺、戦士、斥候。
中衛にレンカ。
後衛はシルヴィアと聖職者で構成される。
この頃になると、斥候は盗賊寄りか暗殺者寄りかのいずれかに分かれる。
盗賊寄りなら罠解除スキルが伸び、暗殺者寄りなら戦闘スキルが優先的に伸びる。
今回は暗殺者寄りの斥候だ。
斥候はバックスタブで魔物の背後に回り、致命傷の一撃を入れて次々と屠っていく。
戦士は憎悪を稼ぎ、盾役としてタンクを務める。
シルヴィアと聖職者はクロスボウで後衛を掃討し、メイジやシャーマン系の魔物が出現したら、聖職者が最優先でサイレントを唱える。
俺は前衛として敵を斬りつつ、状況に応じてレンカの指示で中衛に下がり魔法で援護する。
レンカは中衛でショートスピアのリーチを活かしながら、全体の指示をこなす。
今回の司令塔はレンカだ。
こうして俺たちは、深層九階層まで難なく進むことができた。
◆
十階層ではミノタウロス、ハイ・コボルト、ハイ・オーガが出現する。
オークは四層以降、なぜか姿を現さない。
最弱でもホブゴブリンが出現し、ボスはゴブリンジェネラル、キング、クイーン――これは先輩たちから事前に情報を得ていた。
九層のセーフポイントで十分に休息をとった後、十層へのアタックを開始。
最初に遭遇したのは単騎のミノタウロス。
幸い群れない個体だった。
戦士が角によるチャージを盾で受け止める間、斥候がバックスタブを狙うが、皮膚と筋肉が硬すぎて致命傷に至らない。
そこで俺はハイ・バインドで全身を蔦ごと拘束。
完全に固めたところで戦士が距離を取り、魔法とボウガンで遠距離攻撃を重ねる。
弱ったところで前衛とレンカでとどめを刺す。
戦士が頭蓋骨を叩き割り、斥候が首筋へダガーを突き立て、レンカは心臓へ鋭い突き。
俺はレンカが開けた胸の穴にショートソードを押し込み、心臓を貫いた。
こうしてミノタウロスを撃破。
その後もハイ・コボルト、ハイ・オーガを立て続けに討伐する。
ホブゴブリンの集団にはメイジとシャーマンが含まれていたため、聖職者とレンカがサイレントを発動。
声を失った隙に、ホブゴブリンの後衛をファイア・ボールとボウガンで掃討。
戦士はヘイトを集めて前を抑え、俺は盾を構えて前衛線を維持。
斥候は爆炎に紛れて背後へ回り込み、残るホブゴブリン・メイジをバックスタブで屠る。
俺は爆発後に距離を取り、残った前衛をハイ・バインドで拘束。
戦士・俺・斥候で一気に殲滅した。
こうしてホブゴブリンを全滅させ、ついにボス部屋の前へ到達する。
◆
ここで装備を変更する。
事前調査でボス部屋は広く天井も高いと聞いていたため、全力で動ける装備に換装した。
戦士はバスタードソードと新しい盾、
斥候は少し長めの新ダガー、
俺は童子切安綱とラウンドシールド、
レンカは蜻蛉切、
後衛二人はクロスボウに矢を装填。
隊列を整え、作戦を最終確認。
レンカと聖職者でサイレント。
俺とシルヴィアでファイア・ボールを連発して絨毯爆撃。
その後、生き残った魔物を前衛が処理する方針で一致した。
ヒールポーションとマナポーションを補充し、休憩を挟んでからボス部屋の扉を蹴破って突入。
五体の魔物を確認し、作戦通りサイレントとファイア・ボールを連発。
爆発が止むと、五体の魔物はなお立っていた。
さすがゴブリンジェネラル三体、そしてキングにクイーン。
満身創痍ながら最後の抵抗を見せる。
追撃に移り、俺はアイスランスとサンダーボルトを叩き込む。
ジェネラル三体を撃破し、キングとクイーンは痺れて動けない。
「今よ!」
レンカの号令で前衛が突撃。
戦士はバスタードソードを振りかざしキングへ突撃。
俺は側面へ回り込み、首を狙って攻撃。
キングは戦士の攻撃で生まれた隙に俺の一撃を受け、致命傷となり沈黙。
斥候はクイーンの背後へ回りバックスタブ。
レンカが正面から心臓へ突きを叩き込み、クイーンも沈黙した。
こうしてボス部屋を攻略。
奥の祭壇に安置されていたクリスタルが輝き、攻略完了の合図が告げられる。
クリスタルを取得した瞬間、転移魔法陣が展開され、全員が一気にダンジョン外へ転送された。
◆
待ち受けていた教師にクリスタルを提示すると、驚きの表情。
「……最短期間での攻略、レコード更新だな」
皆でガッツポーズを決めた。
通常は四年生になって初めて攻略完了する者が出るが、三年生での達成は初めてだ。
報酬は
・表彰状
・攻略完了を示す勲章
・常時体力が回復するアミュレット
・半年間の学食無料券
アミュレットはありがたく、学食無料券は貧乏貴族の次男である斥候と戦士に大好評。
斥候・戦士・聖職者の三人は表彰状と勲章で箔がつき、就職にも有利だと喜んでいた。
四年生になる前に、戦士と斥候は国立騎士団への入団が決定。
戦士は騎士、斥候は特別斥候部隊への配属。
聖職者は通常は下級から始まるところ、中級聖職者としてのスタートが決まった。
あとは単位と命を落とさず卒業するだけ。
未来は明るい。
俺とレンカは魔導通信で両親に攻略完了を報告した。
画面の奥で執事が「坊ちゃん、御立派になられて……」と涙を流していた。
レンカの方も同じ光景だった。
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