2-24 揺らぐ秩序と新たな学び
スキルスチールの一件が影響したのか、今年は騎士派による生徒会の「監査」と称した嫌がらせは姿を消した。
今後も、このまま無くなってくれればと思う。
その代わり、
「スキルの熟練度が思うように上がらない」
「アドバイスが欲しい」
といった声が、派閥に関係なく生徒全般から上がるようになっていた。
さらに、この一件は国内外にも広く知れ渡り、国内の騎士団や魔法師団はもちろん、外国の大使館からも使者や大使本人が派遣されるなど、事態は大きく膨らんでいた。
こうして、生徒会主催による講習会が開かれることになった。
講習の内容はシンプルだ。
スキルの熟練度は、
・ひたすらスキルを使い続ける
・あるいはスキルに頼らず、同等の技を実践する
ことで上昇する。
特に後者は伸び率が高いと説明した途端、あちこちから唸り声やため息が漏れた。
そこで俺たちは、スキルスチール防御の術式も公開し、当面はそれで凌ぐ方が現実的だと伝えた。
講習会場には、各国から派遣された使者や従者、魔導師が混じっており、彼らの視線が一斉に術式の説明に向けられる。
熟練者たちの目は真剣で、知識を取り入れようとする鋭い光を宿していた。
結果として、多くの参加者は納得し、会場を後にした。
早速、王国や各国で検討や実践練習が始まることになった。
◆
そんな慌ただしい日々の中、レオンハルトから手紙の返信が届いた。
鑑定してもらったところ、戦闘スキルはすでに魂に定着しており問題ないとのこと。
謝意の言葉も添えられていた。
さらに、マナーやダンスなど貴族必須のスキルも、貴族として日々実践しているため魂に定着済みだという。
思い返せば、貴族の学生からは戦闘スキルに関する相談が圧倒的に多かった。
平民の学生からも相談はあったが、深刻な事態に至ることはなかった。
もしスキルスチールを持つ者が現れたとしても、真っ先に狙われるのは戦闘スキルだろう。
ちょっと聞きかじった程度のマナーやダンスを奪うほど、相手も暇ではあるまい。
◆
今回の件で、スキルスチールの能力を持つ人物は国家によって保護されることになった。
そうでなければ、怪訝な目で見られ、場合によっては迫害される危険もあったからだ。
さらに、対魔物・魔族戦でも役立つだろうという思惑もある。
魔物の脅威は日増しに強まり、魔族の動きも活発化していると、諜報部からの報告も上がっている。
油断できる状況ではなく、有用な人材を遊ばせておく余裕はない。
講習会場では、参加者たちの熱気と緊張が混ざり合っていた。
各国から派遣された魔導師たちは術式を実際に試し、互いに意見を交わす。
生徒たちは互いの技術を観察し、競うようにして習得しようと目を輝かせていた。
場内の空気は、静かだが確かな覚悟と学ぶ意欲で満ちている。
こうして、講習会は単なる知識の伝達ではなく、国全体に波及するスキル文化の形成の場となったのである。
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