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七人の勇者と婚約者殿~世界と異世界を救う絆の物語~  作者: 童爺
プロローグ:転生と試練の始まり
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0-3 ヴァルハラへ

 ──いつの間にか場を仕切っている存在。

 ヤハウェの声が、落ち着いた響きで説明を始める。


 『これが現状だ。李が引き起こした“アザトースのまどろみ”──その余波である。

 その程度で、すでに世界は、いくつかの並行世界を含め消えた。

 我ら旧神エルダーゴッドは、消えゆく世界から助けうる者を救い、ミドルアースへ避難させたのだ』


 「ミドルアースとは何ですか?」と俺が問う。


 『うむ。 エデンや高天原など、天界の一部を分け、人の子が住める世界を作った名だ。

 汝らには望むスキルを与え、そこへ転生もしくは転移させる』


 俺は即座に答えた。

 「スキルは要りません。 代わりに天界で修業させていただけますか?」


 『……何故だね?』


 「過ぎた力は扱いに困りますし、身を滅ぼすこともあります。

 努力は裏切りません。 修行で身の丈に合った力を身につけてから、転生か転移したいのです」


 しばしの沈黙の後、ヤハウェは言った。

 『そうか。 努力は裏切らぬ、か……良い言葉だ。 ならばオーディンと話をつけ、ヴァルハラでの修業を手配しよう』


 蓮花が割って入り、力強く続ける。

 「私も悠真と共に修行したい。 お願いします」


 『よかろう。 では二人そろってヴァルハラで修行させよう。

 その前に、肉体をここに預けていってもらう』


 ヤハウェの提案に、俺は尋ねる。

 「何故ですか?」


 『ヴァルハラで修行を行うのに、肉体を伴って行くと修業の途中で寿命を迎え、老衰で天に召される恐れがあるからだ。

 どの神に稽古をつけてもらうか決めてあるか?』


 俺は即答した。

 「では、須佐之男命様に武術を、魔術は誰がいいでしょうか?」


 天御中主神がてきぱきと答える。


 『古神道等の術式は瀬織津姫に学ぶがよい。

 西洋魔術はマーリンがヴァルハラにいる。

 須佐之男は感覚で教える者ゆえ、教育者向きではない。

 武御雷に学ぶが良い。 須佐之男は全体の監督だ、良いな』


 その指示のもと、魂のみの姿となった俺たちは、静かにヴァルハラへと導かれていった。

 肉体をここに置き、魂だけでの修行だ。

 俺たちは望んでその形を選んだ。


 道中、蓮花が疑問を口にする。


 「天御中主神様と天照大御神様、月読様、須佐之男様はわかるけど、なぜ瀬織津姫命様まで?」


 「前世の縁だ」と俺は説明する。


 「前は石川県金沢市にいた普通の高校生だった。

 急性リンパ性白血病で一度ここに来ていてね。

 金沢には瀬織津姫神社があって、幼いころから遊びに行って、おやつをお供えしたりしていた。

 その縁で、土御門家に生まれ変わるときにいくつかスキルを貰って転生したんだ」


 蓮花は納得して頷く。


 「だから“土御門の神童”って言われたのね」


 と蓮花は頷くが、


 「いや、実戦向きじゃないスキルばかりだよ。

 料理全般神級とか杜氏神級とか、食べ物関係ばっかりだ」


 「え、何で? て言うか、それでやたらと貴方の作る料理が美味しかった訳⁉」


 「それは──もがっ」


 瀬織津姫命に口を押さえられ、言葉が遮られた。


 『それは、秘密じゃ、良いな。

 それに霊力と魔力を一流術者の九倍付与して転生させたであろう』


 神気を放ってくる瀬織津姫命に、俺と蓮花はガクガクと縦に首を振る。


 落ち着いた所で、蓮花がぼつりと呟く。

 「良いな、私も欲しいな」


 それを耳にした瀬織津姫命が、

 『よいぞ、ほれ、今付与した。 ついでに霊力・魔力もな』


 「えっ、あ、ありがとうございます」

 『よいよい。 ただし神以外に神級の料理を振舞うでないぞ。 理由は後で悠真に聞くと良い』


 「はい、重ね重ね、ありがとうございます」

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