2-20 初めての実戦訓練:反省会
学園に帰還した俺たちは、夕刻の講堂で反省会を行うことになった。
もっとも――こうした騒ぎは毎年の恒例らしく、教師たちはすっかり手慣れた様子だった。
本来なら、討伐後の後始末や報告は教師の役目らしい。
だが今回は、俺とレンカがその役を奪ってしまった形だ。
指導教官も苦笑しつつ、「助かったよ」とだけ言ってくれた。
まず、今回の失敗点を洗い出す。
最も大きかったのは、過剰な防御装備だ。
前衛も後衛も、動きが鈍くなるほどのフルプレートを着込んでいた。
おかげでゴブリン相手に一歩も動けず、ただ叩かれるばかり。
武器の選択もひどかった。
バスタードソードにカイトシールドは、まだましな方だ。
中にはツーハンデッドソードまで振り回そうとした者までいた。
重すぎて一撃を放つ前に隙を晒す――まるで自滅の見本だ。
後衛組は、恐怖のあまり最大級の呪文を詠唱。
ゴブリン相手に《ファイア・トルネード》とは、オーバーキルにも程がある。
案の定、精神が乱れた状態での詠唱は失敗し、危うく山火事になるところだった。
聖職者も似たようなものだった。
瀕死になった三人組を救おうと、《エクストラ・ハイ・ヒール》を詠唱――だが、これもファンブル。
結局、誰ひとり癒やせなかった。
反省点は明確だ。
「前衛は動けてこそ前衛」と、俺は言った。
これからは過剰な重装をやめ、軽量のレザーアーマーやブレストアーマーで統一することになった。
後衛もまた、ローブやクロスアーマーに杖――基本に立ち返る方針が決まる。
その場で教師が記録をまとめ、淡々と告げた。
「今回の訓練で、全体の三分の一が脱落することになった」
重苦しい空気が流れる。
だが教師は続けて言った。
「毎年のことだ。特に高位貴族や裕福な平民に多い。彼らは“死”を実感する機会が少ないからな」
一方で、下位貴族や騎士志望の平民は残る傾向にあるという。
「生き残るために学ぶ者ほど、成長は早い」
その言葉に、誰も反論できなかった。
脱落した者たちは、実戦訓練のない文官系学園へと転校するらしい。
そして――残った者たちは次の試練へ。
「次回は、ダンジョンでの実戦訓練になる」
教師の言葉に、教室の空気が一瞬で張り詰めた。
森とは違い、閉ざされた空間――逃げ場のない“迷宮”だ。
その恐ろしさを理解している者はほとんどいない。
俺とレンカは顔を見合わせ、小さくため息をつく。
「……次も苦労しそうね」
「ああ。今回は、まだ序章に過ぎない」
夕陽が窓から差し込み、薄暗い教室の中で俺たちの影を長く伸ばしていた。
戦いは終わったばかりだというのに――胸の奥では、次の試練の足音がすでに響き始めていた。
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