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七人の勇者と婚約者殿~世界と異世界を救う絆の物語~  作者: 童爺
第2章 学園都市イーバラット
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2-14 監査官来訪と模擬戦事件

 数日後。

 学院に、王立本部からの特別監査官が到着する日がやってきた。


 生徒会室の空気は、いつもより重い。

 俺は書類の山を前に、無意識にペン先を回していた。


 「……やっぱり緊張する」

 レンカが小声でつぶやく。


 「でも、準備は完璧だよ。監査官が何を言おうと、堂々とやるだけだ」

 俺は軽く肩を叩く。


 そこへ、静かに扉が開き、二人の監査官が入室した。


 第一印象――若く、精悍な二人組。

 ひとりは冷徹そうな黒髪の青年、もうひとりは沈着で物静かな女性。

 制服からは高位魔導士の風格が漂う。


 「ツーク国立学園・生徒会に来た。監査官、ファルクとミレーナだ」

 黒髪の青年が低く告げ、書類に目を落とす。


 レオンハルトが軽く頭を下げ、控えめに言った。

 「お待ちしておりました。我々は、生徒会の任務に従い、全力で対応いたします」


 監査官の視線が、俺とレンカに鋭く向けられる。

 その刃のような眼光に、思わずレンカが息を飲んだ。



 監査は書類確認から始まった。


 提出された予算案、魔力結界設計書、イベントスケジュール――

 監査官は一つ一つ、淡々と目を通していく。


 「……ふむ。書類に不備は見当たらない」

 ミレーナの声は冷静だが、その目は鋭い。


 だが、緊張はすぐに別の形をとった。


 監査官ファルクの口から、突然の提案が飛ぶ。


 「次は、実技確認を行う。模擬戦を一度見せてもらおう」


 胸の奥で心臓が跳ねる。

 生徒会の仕事は事務処理だけではないが、突然の“実技試験”は想定外だった。


 「模擬戦……?」

 レンカの声にも戸惑いがにじむ。


 レオンハルトが問いかける。

 「学院祭の魔導競技と関係あるのか?」


 ファルクは冷たい笑みを浮かべ、答えた。

 「書類だけでは力量はわからぬ。実際の動きと判断力を見せよ」


 やむを得ず、生徒会は模擬戦の準備に取り掛かる。


 俺は即座に戦略と結界配置を計算し、レンカも補助魔法の準備に入る。

 レオンハルトは指示を飛ばし、全体を統率した。


 戦闘フィールドは学院の中庭。

 結界が張られ、観覧用の魔力席も設置される。


 俺は深呼吸をひとつ。

 目の前の光景を一瞬で読み取り、次の行動を決めた。



 戦闘開始。


 俺は無詠唱で魔法を発動。

 光のバレットが空を切り、風と炎が複雑に絡み合う。


 レンカは支援魔法で結界を安定させ、攻撃軌道を補正。

 レオンハルトは剣技で斬り込み、空間を切り裂いた。


 監査官ファルクの目が光る。

 「見事だ……予想以上だな」


 ミレーナはメモを取りながら冷静に分析していた。


 しかし、緊張の糸は張りつめたままだ。

 魔法の衝撃で小石が飛び、結界が揺れる。

 わずかな油断が、致命傷になりかねない。



 戦闘終了後、監査官は静かに評価を口にした。


 「力量は文句なし。書類も完璧。だが、組織運営と判断力の面で課題がある」


 その言葉に、俺とレオンハルトは視線を交わす。


 「課題?」

 レオンハルトが尋ねる。


 「君たちは個々の力量は素晴らしい。だが、全体を統率する柔軟性がまだ足りぬ」

 ミレーナが補足する。


 「監査の目的は、派閥に偏らぬ“安定運営”の確認だ」


 俺はゆっくりとうなずいた。

 「……わかった。次はもっと見せてやる」


 レオンハルトも微笑む。

 「いいか、みんな。これからが本番だ」



 監査官が去った後。

 中庭には安堵と興奮が入り混じる空気が漂った。


 レンカが小さくつぶやく。

 「でも、やっぱり怖かった……」


 「怖さは、強さに変わる」

 俺は静かに答える。


 「俺たちは、誰のために戦うのか――忘れちゃいけない」


 夕陽が学院の塔に影を長く落とす。

 その光の下で、俺たちは新たな決意を胸に刻んだ。

もし、面白い。


続きが気になる。


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