2-13 査察
数日後、生徒会室に一通の封書が届いた。
差出人――「王立魔導院 第一師団顧問」。
開封した瞬間、室内の空気が一変する。
新書記のシルヴィアが文を読み上げる。
“新生徒会内に、特定の思想を持つ集団が存在するとの報告あり。
必要に応じ、上級監査官を派遣する”
読み終えた後の沈黙が、重く長く落ちた。
「来やがったか……貴族派の監視網だな」
レオンハルトが低くつぶやく。
「どうします?」と俺。
「決まってる。――堂々と、俺たちらしくやる」
「でも、“監査官”って名ばかりじゃないですよね」
レンカの声には、不安と覚悟が混じっていた。
シルヴィアは一呼吸置いて、冷静に言う。
「向こうの目的は“失脚”です。小さな失言や書類の瑕疵でも口実になるでしょう」
「だからこそ、完璧に見せるんだ」
レンカの瞳が力強く光る。
「誰にも突かれないように、全部整えてあげますわ」
「はは、頼もしいな。さすが俺の後輩たちだ」
レオンハルトが笑い、俺は静かに頷いた。
だが、彼らの知らぬところで――
すでに学院の一角では、“貴族派”と呼ばれる者たちが動き出していた。
その影が、音もなく生徒会室の扉へと近づいていた。
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