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七人の勇者と婚約者殿~世界と異世界を救う絆の物語~  作者: 童爺
第2章 学園都市イーバラット
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2-11 学園祭の夜、誓いの杯

 年に一度の学園祭は、イーバラット学園都市のどの祝祭よりも華やかだった。


 ツーク国立学園の中庭には花々の結界が張られ、昼空には虹の輪が架かる。


 生徒たちは思い思いの装飾を纏い、屋台では香ばしい匂いが風に乗って広がっていた。


 俺は生徒会の腕章を巻きながら、人波を見回す。


 普段は整然とした学園も、今日ばかりは混沌そのものだ。


 笑い声、喧騒、魔法光の閃き――それらが不思議と心地よく胸に響く。


 「おや、ユーマ様。 随分と真面目に巡回なさってますね」


 振り向くと、料理研究クラブの屋台でレンカが白いエプロン姿のまま、客を手際よくさばいていた。


 普段の貴族的な気品は影を潜め、額に汗を浮かべながら笑っている。


 「お嬢様の料理は庶民の味とは違うな!」と冷やかされても、


 彼女は「そう言われると逆に照れるわ」と返す。


 その自然体な姿に、俺の胸の奥がくすぐったくなった。


 「楽しそうにやってるな」


 「当然よ。 誰だって、自分が作ったものを笑顔で食べてもらえたら嬉しいでしょう?」


 「……そうだな」


 短い言葉のやり取りの中で、レンカの“理想”の輪郭が見えた。


 身分や派閥に縛られず、誰もが笑い合える世界。


 彼女はきっと、それを夢見ている。


 互いの距離が自然に近づく。


 俺は彼女の横顔を見つめながら、胸の奥に温かい火が灯るのを感じていた。



 ──だがその一方で、別の場所では火花が散っていた。


 午後、学園中央ホールでは、生徒会主催の貴族交流パーティーが開かれていた。


 煌びやかなシャンデリアの下、柔らかな音楽と笑い声が満ちる。


 だが、そこに潜むのは“派閥の影”だ。


 国王派と貴族派。


 どちらにつくかで家の未来が左右される――そんな空気を纏う者たちの視線が、俺に注がれていた。


 「ヴァレンティア家の嫡子ともあろう方が、貴族派の若造と馴れ合うとは」


 「この学院も、貴族派の干渉が過ぎますな」


 笑顔を装いつつも含みのある言葉。


 俺は杯を傾けてかわすが、胸の底に微かな苛立ちが渦巻く。


 政治を子供の遊戯のように扱いながら、誰よりも他人の自由を縛ろうとする。


 その矛盾が、何よりも不愉快だった。


 「……不愉快だな」


 小さく呟いた瞬間、背後から響いた声が場の空気を切り裂いた。


 「彼を侮るのはやめろ」


 人垣が割れ、黄金の髪をなびかせた青年が歩み出る。


 ――レオンハルト・グランベルク。


 貴族派の筆頭ながら、セディアス殿下の懐刀と目される男だ。


 その真っすぐな声が、ホールのざわめきを一瞬で鎮めた。


 「ここは学びの場だ。 派閥の名など外に置いてこい。

 ユーマは、ただの生徒であり――俺の友だ」


 静かな怒気を孕んだ言葉に、周囲の貴族たちは顔を見合わせ、口をつぐむ。


 俺はその背中を見つめながら、心の底から思った。


 ――この男は、やはり本物だ。



 パーティーの後、夕暮れの屋台通りで、俺は再びレンカに会った。


 「また、庶民派の味を守っていたのか」


 「あなたは政治の火種を消していたのでしょう? どちらも似たようなものね」


 二人は並んで笑う。


 落ちかけた夕陽が彼女の頬を照らし、光の粒が髪に宿る。


 その横顔を見て、俺は言った。


 「……俺は、守りたい人がいる。 それだけだ」


 レンカは一瞬動きを止め、そっと目を伏せた。


 「そういうの、ずるいわ」


 その声は、祭りの喧騒に溶けて消えていった。



 夜。


 生徒会室のテラスでは、セディアス殿下を始めとした幹部数名が集まっていた。


 疲れ切った顔で笑い合い、湯気の立つ紅茶を傾ける。


 セディアス殿下が立ち上がり、盃を掲げた。


 「俺はいつか、この国を動かす立場になるだろう。

 だが、権力のためじゃない。

 誰もが胸を張って生きられる国を作るためにな」


 レオンハルトが静かに応える。


 「その時は、私がその国を守る剣になる。

 たとえ影に立つことになっても、信じた秩序は俺が斬ってでも守る」


 レオンハルトは杯を掲げ、穏やかに笑った。


 「ならば俺は、お前に恥じぬ王になる」


 二人の杯が月光に照らされ、静かに触れ合う。


 ──それは、青年たちの小さな誓い。


 だが、その約束はやがて王国の命運を左右する絆となる。

 スマートフォンで読んでみたら読み辛かったので、改行を入れました。


 本文には、手を加えていません。


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