0-1 神々との邂逅
それはまるで、深い夢のまどろみからゆっくり覚醒していくような感覚だった。
目を開けると、視界は純白に満たされ、どこまでも続く無垢の空間に立っていた。
重力も時間も、その意味を失ったかのような異質な感覚。
そんな中、突然、ぎゅっと手を握られる感触があった。
視線を向けると、そこには婚約者の──渡辺蓮花が、不安そうにこちらを見上げていた。
心配させまいと笑みを作るが、その笑みには、かすかなぎこちなさが滲んだ。
蓮花はその微妙な違和感を見抜いたのだろう、ふっと安堵の息をもらした。
俺もそれに応え、手を少し強く握り返す。
その瞬間、頭の中にここ最近の出来事が走馬灯のように脳裏を駆け抜けた。
ミスカトニック大学でのウォーレン・ライス教授の言葉──
「君に教えられることは何もない」
俺はその一言を「教える価値もない」と誤解し、打ちひしがれていた。
だが教授は、その後で禁書庫への立ち入り許可をくれ、さらに日本にいる蓮花にも連絡してくれたのだ。
蓮花は渡米し、俺の部屋を訪れて誤解をそっと解いてくれた。
そして……あの夜。
俺こと、土御門悠真が住むアパートの部屋の下階で蠢く、肌の奥を逆撫でするような異様な気配。
あれは間違いなく、ただの魔術ではなかった。
禁書庫から借りてきた魔導書が宙に浮き、俺と蓮花の周りを回り始めた。
そして突如まばゆい光に包まれ、次に目を開けると、この白い空間にいたのだ。
光の中、脳内に直接響く声──
『我は唯一にして、全である。 個であると同時に、無数の神々でもある』
千の声が重なり、宇宙そのものが語りかけてくるような圧倒的な存在感に、俺は問いかけた。
「あなた方は“群体としての神”と理解してよいのですか?」
『うむ、汝らは日本人だな。 では日本の神々の姿を取ろう』
すると光は、どこか親しみを感じさせる御柱の姿へとゆっくり形を変え、やがて神々の気配を伴って顕現した。
天御中主神、天照大御神、月読命、須佐之男命、瀬織津姫命──五柱の神々が現れ、俺と蓮花に語りかけてきた。
『汝らの身に起こったこと、いまだ理解していないようだ。 順を追って説明しよう』
言葉とともに光の幕が展開し、映し出されたのは――アメリカ、マサチューセッツ州アーカムシティに広がるミスカトニック大学のキャンパスだった。
俺が、西洋魔術と陰陽術の融合を研究するために留学していた場所だ。
スマートフォンで読んでみたら読み辛かったので、改行を入れました。
本文に、インパクトを与える為、戦闘シーンを冒頭に持って来ました。
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