後-7 ツーク国立学園への帰還
イーバラット学園都市に到着した四人は、
カールオ校長、ユーマ、レンカと面談していた。
「――という訳で、ルーシアちゃんのスローライフ計画は、現在進行形よ」
カールオ校長は天を仰ぎ、
ユーマとレンカは、どこか楽しそうにニコニコしている。
ユーマが口を開いた。
「いや、ちょうどな。
そろそろ嫡男に家督を譲って、隠居しようか――なんて話をしていたところだったんだ」
「そうそう。二人分の面倒くらい、見られるわよ。
私たち、いちおう“亜神”らしいから」
そしてユーマは、一度息を吐き、声を落として続けた。
『実はな……ルーシアは、ルシフェル様の生まれ変わりらしい。
一度、光り輝く十二の翼を見たことがある』
カールオ校長は言葉を失い、
エリシアは、思わず息を呑む。
『……ちょっと。それ、本当なの?』
『ああ。出発直前だったかな。
こっちをちらっと振り返った瞬間、時が止まったんだ。
そして、十二の光り輝く翼を背中に展開してね』
レンカが、静かに言葉を継ぐ。
『その時、声が聞こえたの。
“――恐れなくていい。
――この子は、この世界の『未来』そのものだ”って。
とても優しくて、澄んだ声だったわ。
ルーシア自身が発したのか……それとも、もっと古く、遠い誰かの声だったのか……』
しばし、重くも穏やかな沈黙が流れる。
やがてユーマが、その静寂を破った。
「だからな。
ルーシアには、好きにやらせようと思っている」
「スローライフでもいい。
また旅に出るのもいい。
俺たちは――あの子が疲れた時、帰って羽を休められる場所を用意してやるだけだ」
「そうね。
孫の顔は、アルトとフェイルがもう見せてくれたし。
ヴァレンティア家も安泰だもの」
エリシアは、深くため息を吐いた。
「……それで、隠居?
もう住む場所は決めているの?」
ユーマは苦笑しながら答える。
「本当は、エルフの森エルダリス――エルフの都に住みたいんだがな。
だが、精霊の声が聞こえない俺たちが行っても、迷惑をかけるだろう」
「だから、エルダリスとイーバラットの中間にある、
小高い山の中腹に別荘でも建てて、そこに住もうと思っている」
「魔物も滅多に出ないし……スローライフには、ぴったりだろ?」
ダリオが、呆れたように言う。
「お前たちまでスローライフか。
ルーシアは、つくづくお前たちに似たのだな」
レンカが、穏やかに微笑む。
「まあ……人族なのに、長寿種と同じ寿命を持つ私たちが、
人に紛れて都に住み続けるのは、さすがに無理があるもの」
ユーマが頷き、続ける。
「そういうことだ。
スローライフを送りながら、薬や各種ポーションを作って生計を立てる」
「そのための勉強も、実習も、
イーバラットの専門学校で一通り身につけてきた」
レンカが補足する。
「それに私は、もともと聖魔法のルミナリア家の出身だから。
回復魔法や状態異常回復魔法なら、ある程度の診療もできるしね」
カールオ校長は、ようやく現実に戻ったのか、
小さく肩を落とした。
「……しょうがないのう」
完全に諦めの境地だ。
「そういう訳だから、ルーシアと――アーシェちゃんだったか?
家で面倒を見るつもりだが」
エリシアが、少し考えてから言った。
「それなら、私もお目付け役として一緒に住もうかしら。
アーシェに、弓術と精霊魔法を教えないといけないし」
ダリオも腕を組んで頷く。
「まあ、農機具や鍛冶関係で困ったことがあれば、相談に乗るぞ」
ユーマは、最後に二人を見る。
「……二人とも、それでいいか?」
ルーシアとアーシェは、
目を輝かせながら、何度も何度も頷いた。
「――決まりね」
レンカが、静かにそう締めくくった。
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