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七人の勇者と婚約者殿~世界と異世界を救う絆の物語~  作者: 童爺
短編:前日談~全ての始まり~
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前-8 幼児退行

 土御門家へ戻ると、俺は当主への結果報告もそこそこに、真っ先に蓮花の見舞いへ向かった。


 正直に言えば、酒呑童子と茨木童子を式神にした件よりも、彼女の容態の方が、はるかに気がかりだった。


 当主は当主で、


 「鬼神二柱を調伏したというのに、

 それより婚約者を優先するか……」


 と、半ば呆れ、半ば感心したような表情をしていたが、俺は気にせず、蓮花の部屋の障子をそっと開けた。


 「ただいま、蓮花。

 体調はどう?」


 すると、布団からぴょこんと顔を出した彼女が、少し潤んだ目で俺を見た。


 「……ユーちゃん、どこ行ってたの?」


 その声は、普段よりもずっと幼く、震えていた。


 「私から離れないって、約束したのに……」


 【……あ】


 その瞬間、俺は察した。


 【幼児退行している。

 しばらく離れていたことが、よほどストレスだったんだろう】


 無理もない。


 前世の記憶が完全に戻っていなくても、


 「大切な人が突然いなくなる恐怖」だけは、

 魂の奥に焼き付いているのだろう。


 「レンちゃん、ごめんね」


 俺はできるだけ柔らかい声で言った。


 「寂しい思いをさせた。

 レンちゃんの体調が良くなるように、お薬を探してきたんだよ」


 そう言って、持ってきた椀を差し出す。


 「はい、玉子酒。

 熱いから、火傷しないようにね」


 「……ユーちゃんが、フーフーして」


 「え?」


 「フーフーして、飲ませて?

 それで、許してあげる」


 「……分かったよ」


 俺は椀を持ち、ゆっくりと息を吹きかけながら、少しずつ口元へ運んだ。


 「ほら、起きられる?」


 「……うん」


 そうして、慎重に玉子酒を飲ませていく。


 「……おいしい」


 ほっとしたように微笑む蓮花を見て、胸の奥が、きゅっと締め付けられた。


 「ねえ、ユーちゃん」


 「なに?」


 「一緒に寝よ。

 寂しかったから……埋め合わせ。ね?」


 「……分かった」


 俺は少し迷ってから頷いた。


 「じゃあ、布団を――」


 「嫌!」


 即答だった。


 「一緒の布団がいい!」


 「……わかったよ」


 苦笑しつつ、布団に入る。


 「じゃあ、一緒に寝ようか?」


 「うん……」


 ぎゅっと、蓮花が俺にしがみつく。


 「ユーちゃん、大好き」


 「……俺もだよ」


 その言葉を聞いて、彼女はようやく安心したのか、すうっと、静かな寝息を立て始めた。



 翌日――


 正気に戻った蓮花は、一緒に寝ている俺を見て、しばらくきょろきょろと周囲を見回した。


 そして。


 何も言わず、ぎゅっと俺を抱きしめ直し、そのまま、また眠りに落ちた。


 この一部始終を、後で酒呑童子様から念話で教えてもらった。


 『いやあ、なかなか微笑ましい光景じゃったぞ』


 『茨木など、

 「これは見ていて良いものなのか」

 と真剣に悩んでおった』


 ……見てたのか。


 【中学に入るまでには、直さないと……】


 そう思った。


 【いや、でも……難しいかな】


 だが不思議なことに、もう直ぐ11歳になり、あと少しで中学生になる年頃。


 蓮花の幼児退行は、まるで嘘のようにピタリと収まった。


 ――代わりに。


 俺が仲良くなった他の女子が、翌日には距離を置くようになった。


 というより、どこか怯えたような表情を見せるようになったのだ。


 理由は、分からない。


 蓮花は、何もしていないように見えたし、俺自身も、特に変なことをした覚えはない。


 謎だった。



 なお、その後の話だが――


 現当主から、正式に式神・十二天将を継承した。


 また、酒呑童子と茨木童子を調伏した功績により、特例として、退魔庁の天竜八部衆の試験を受けることが許された。


 結果は、合格。


 年齢を考慮され、俺は末席――


 摩睺羅伽マホーラガとして名を連ねることになった。


 それ以降、末端の退魔士では手に負えない案件が、次々と俺のもとへ回されるようになった。


 ――まだ、子供だというのに。

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