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七人の勇者と婚約者殿~世界と異世界を救う絆の物語~  作者: 童爺
短編:前日談~全ての始まり~
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前-2 天界にて

 俺は、ゆっくりと目を開けた。


 そこは純白に満たされた空間だった。


 上下も左右も判別できず、地平線すら存在しない。


 ただ白だけが、どこまでも続いている。


 足元に地面があるのかどうかも分からないのに、俺は確かに「立って」いた。


 重力も時間も、その意味を失ったかのような異質な感覚。


 心臓の鼓動すら、遠い世界の出来事のように曖昧だった。


 ――ああ、死んだんだな。


 そう理解した瞬間、背筋を正されるような気配が空間を満たした。


 その時、厳かで威厳のある女性の声が響いた。


 『よく来たな、悠真』


 声は頭の中に直接流れ込んでくるようで、耳ではなく魂で聞いている感覚だった。


 「あなたは一体、どなたですか?」


 白の奥から、ゆっくりと姿を現したのは、気高い雰囲気を纏った女性だった。


 その姿を見ただけで、ただ者ではないと理解できる。


 『瀬織津姫命じゃ。汝は天に召されたのだ』


 その名を聞いた瞬間、胸の奥が強く締め付けられた。


 「じゃあ……レン姉を、守れなかったんだ」


 膝から力が抜け、視界が滲む。


 気付けば、俺は涙を流していた。


 『確かに、あのゲス男からは守れなかった。

 蓮花は、ゲス男に無理心中を図られて、バールで殴られ天に召された。

 だが安心するが良い。

 あのゲス男は今後、人に生まれ変わる事は無い。

 永遠に虫へ転生する事にしたからの』


 冷淡にも聞こえる裁定の言葉。


 だが、その奥にある怒りと慈悲を、俺は確かに感じ取っていた。


 「そんな……レン姉には、生きて幸せになって欲しかったのに」


 悔しさと無力感が、胸を満たす。


 『いや、違うぞ悠真。

 蓮花は、お前が倒れたのを見て錯乱し、自分のせいだと後悔しておった。

 ここに来た時も、次に転生するなら悠真と一緒になりたいと言っておった』


 その言葉に、胸が強く打たれた。


 「でも……自分は守れなかった。

 次に転生しても、レン姉を守れるだけの力が無いと……」


 自嘲気味に呟く俺を、瀬織津姫命はじっと見つめる。


 『そうじゃの。条件付きで、力のある家に転生させてやっても良い』


 「その条件とは、何ですか?」


 わずかな希望が、胸に灯る。


 『そなた、焼き菓子ばかり供えよって、自分達はクリームみたいな物をなめておったじゃろ。

 それを今、再現して儂に食べさせてくれれば、望み通り力のある家に生まれ変わらせてやっても良い』


 一瞬、言葉を失った。


 「あれは……多分ソフトクリームと言って、氷菓子ですよ。

 お供えしても溶けてしまいます」


 『だから今ここで作れ。その為のスキルも付与してやる』


 あまりに唐突な神託に、思考が追いつかない。


 『よし、菓子作成神級にしよう。

 ついでに、ええい面倒じゃ。料理全般神級に、杜氏神級もつけよう。

 材料と道具は言えば用意するから、今すぐ作れ』


 威厳ある神様のはずなのに、どこか雑で豪快だった。


 俺は半分呆れながら、


 「はあ……わかりました。

 ソフトクリームと、アイスキャンディも作ります」


 『良い良いのう。では付与するからの』


 そう告げられた直後、世界が一瞬だけ軋んだ。


 沈黙が流れる。


 「あのう……本当にソフトクリームを……って、何だか頭の中に、作り方が流れてくる!」


 材料の配合、温度管理、工程――


 知らないはずの知識が、当然のように理解できた。


 『では、頼むぞ』


 言われるがまま、俺は作業に取り掛かった。


 そして小一時間後。


 俺の目の前には、ソフトクリームとアイスキャンディを頬張る女神様が居た。


 白い空間に座り込み、無邪気に食べる姿は、威厳の欠片もない。


 『ふう……満足じゃ』


 本当に満足そうな溜息をついてから、


 『そうじゃ、勢い余って神級スキルを付与したが、


 神以外に神級料理を出すでないぞ。せいぜい帝級にしておけ』


 「それは、何故ですか?」


 『神が満足するレベルの料理を人間が食べると、麻薬中毒の様な状態になって、神級料理をひたすら追い求める様になってしまうからじゃ』


 「ああ……成程。そうでしたか。

 それで、条件は満たせたでしょうか?」


 『有無。

 汝には、土御門家へ転生させよう。

 蓮花も、渡辺家へ転生させよう』


 「土御門家って……あの安倍晴明の子孫ですか?

 渡辺って、もしかして渡辺綱の子孫ですか?」


 『話が早いの。そうじゃ。

 汝らは日本の退魔士の名門に生まれさせる。

 土御門家は退魔士の血を欲しておるからの。

 汝らは、婚約する事になるじゃろうて』


 「そんなに、うまく行きますかね?

 転生って、記憶を消されるんですよね?」


 『汝の記憶は消さずに残そう。

 蓮花は、記憶を持ったままだと耐えられそうに無い位、魂が傷ついておるからの。

 後は、お前さん次第だ』


 「分かりました。

 でも料理全般神級のスキルで、どうやってレン姉を守るのですか?」


 『ふむ……サービスで、汝に霊力と魔力を、

 一級術者の九倍付与しよう。

 後は努力して何とかせい』


「はあ……わかりました」


『では、転生させるぞ。

 来世では、幸せになるのじゃぞ』


 「重ね重ね、ありがとうございます。

 努力は裏切らないという言葉があります。

 努力して、今度こそレン姉を守って、幸せにします」


 『そうそう、そのいきじゃ。

 言い忘れたが、何かのきっかけで蓮花は記憶を取り戻すかもしれん。

 前世の話は避けた方が良かろう。

 あと死因も、急性リンパ性白血病にでもしておけ。

 今は助かる病気じゃが、何とか誤魔化せるじゃろう』


 「分かりました。では、お願いします」


 『有無。上手くやりなさい。

 絆は、そうそう離れる物ではない。

 大事にしなさい。ではな』


 その言葉を最後に、白い世界が遠のいていく。


 意識が闇に沈む直前、俺は強く誓った。


 ――次は必ず、守る。


 そうして、俺は転生した。

 本編0-3の伏線回収です。


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