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5-2 結婚式

 ――光の降り注ぐ丘にて。


 季節は、柔らかな風が草木を揺らす穏やかな頃。


 戦火に焼かれた世界は、まだ完全には癒えていない。


 しかし――今日だけは、誰もが心から笑っていた。


 七勇者の仲間たち。


 各国の代表、獣人族の戦士団、エルフの賢老院、ドワーフの鍛冶師団、そして数多の亜人族の長老たち。


 さらには――ドラゴン族の長が人の姿をとり、神殿の外縁で巨大な翼を畳み、静かに控えている。


 丘の中央には、白亜の柱を円形に組み上げた特設神殿。


 蔦が絡み、花々が光を反射して舞うように揺れ、天から降り注ぐ祝福の光に満ちていた。


 その中心に――俺とレンカが立っている。


 「……緊張してる?」


 レンカが小声で尋ねてくる。


 そう言う彼女の頬も、ほんのり赤い。


 「してるよ。でも……緊張より、嬉しい気持ちの方が強いかな」


 俺が素直に答えると、レンカは小さく笑った。


 「ほんと……そういうところ、好きよ」


 柔らかな光が、二人を包み込む。


 進行役を務める大天使ガブリエルが撒いた祝福の光――


 緊張を和らげ、心を穏やかに整えるためのものだった。


 そして空には――


 四大天使、ミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルが翼を広げて浮かんでいる。


 それぞれが神聖な気配を静かに流し、まるで世界そのものを包み込むかのように祝福していた。


 その光景は、参列者すべての胸に、深い感動を刻みつける。


 「……まさか、天使様が四柱揃うとはな」

 

 レオンハルトが思わず呟く。


 「ええ。戦いの後に、こんな奇跡を見られるなんて……」


 エリシアは瞳を潤ませていた。


 「天族って感情を表に出さないって聞いてたけど……今日は、嬉しそうね」


 ミリアがそう呟いた瞬間――


 頭上を通りかかったウリエルが、いたずらっぽくウィンクする。


 「――っ!?」


 ミリアは一瞬固まり、周囲から笑いが起きた。



 天使たちの奏でる笛の音が、空いっぱいに広がる。


 その旋律は清らかで、過ぎ去った戦火さえも包み込むような優しさを帯びていた。


 「新郎、ユーマ・ヴァレンティア。

 新婦、レンカ・ルミナリア。

 今この場において、永久の契りを刻むことを、神々に代わり宣言する」


 ミカエルが、静かに告げる。


 かつて戦場で相対した時の威圧感はなく、今はまるで兄のような穏やかさを湛えていた。


 「……あれが、ミカエル様の“本来の”お姿か。優しい目をしておられる」


 カイルが腕を組む。


 「そりゃあ、あんだけユーマに世話になったからな」


 ダリオが肩をすくめる。


 隣では亜人族の長老たちが、感慨深げに頷いていた。


 「勇者殿と天使殿が、こうして笑い合うとは……変われば変わるものよの」


 各国の代表もまた、それぞれの想いを胸に、式を見守っている。



 二人は指輪を交換し、誓いを交わす。


 「レンカ。

 どんな未来でも、必ず隣にいる。

 幸せにする。世界中の誰よりも――絶対に」


 「ユーマ。

 あなたと歩く未来を、私は選んだわ。

 喜びも、涙も、全部分け合いたい。

 ……私の世界で、一番信じてる人よ」


 その瞬間、背後でラファエルが柔らかく微笑み、花の香りが一層濃くなる。


 癒しの天使の気配に、参列者たちは思わず息を呑んだ。


 ミカエルが、ふっと笑みを漏らす。


 「――では、誓いを抱きしめるように。

 キスくらい、してもよいだろう」


 直後、


「きたぁぁぁぁぁ!! はい拍手準備ィ!!」


 ダリオの叫びが響く。


「この大馬鹿ァァ!! 静粛にしなさい!!」


 ミリアが頭をはたき、子どもたちが大爆笑。


 会場は一気に、温かな笑いに包まれた。


 俺とレンカは照れながら顔を近づけ――そっと唇を重ねる。


 天使たちの羽ばたきとともに光の粒が舞い上がり、


 ドラゴン族の長が低く唸って祝福を送る。


 各国の代表が歓声を上げ、歓喜の波が丘を包み込んだ。


 こうして二人は、世界に認められた夫婦となった。



 式場脇の広場では、各国の料理が並び、種族を超えた宴が始まっていた。


 「飲めぇぇ! 今日は天使も来てんだぞ! 景気よくいけぇ!」


 ダリオが樽を抱えて叫び、ドワーフたちが大歓声を返す。


 「……あの人、式の時より楽しそうね」


 カイルが呆れたように苦笑した。


 ミリアは相変わらず子どもたちに尻尾をつかまれ、ウリエルにも笑われている。


 「ちょ、やめなさいってばぁぁぁ!!

 ウリエルさんも笑わないで!!」


 エルフの賢老院は神殿の装飾を褒め、


 亜人族の代表はレンカに贈り物を渡し、


 ドラゴン族は俺に、真顔で言った。


 「未来の子に、羽が生えるかもしれんな」


 「は、羽!? ドラゴンの!?」


 「ふふ、冗談だ」


 「……冗談だったのか?」


 周囲がどっと笑う。


 そこへ、エリシアがワインを手に現れた。


 「二人とも、本当におめでとう。

 ずっと……この日を楽しみにしてたの」


 「ありがとう、エリシアさん」


 「ふふ。次は――赤ちゃんの報告を待ってるわね?」


 「ちょ、ちょっと!?

 みんなの前で言わないでっ!」


 レンカは、ぷしゅーっと音がしそうなほど真っ赤になる。


 俺はそんな妻の手をそっと握り、夜空を見上げた。


 天使たちの光が、ゆっくりと空に溶けていく。


 「レンカ。これからも、一緒に歩いていこう」


 「……ええ。

 あなたとなら、どこへでも行けるわ。ユーマ」


 二人の指先を、そっと風が撫でる。


 天から落ちる光が星のように瞬き――


 その輝きは、世界に新しい始まりが刻まれた証だった。

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