5-1 天界の静かなる会議
その頃、天界。
永遠の光が満ちる玉座の間では、
一柱の神と四大天使が、静かに語り合っていた。
神域特有の淡い霧がゆるやかに揺れ、
どこまでも澄んだ空気が、場を満たしている。
「下界の復興は、順調のようですね」
報告するミカエルに、玉座の上のヤハウェは穏やかに頷いた。
「うむ。
あれだけの試練を越えた世界だ。そう簡単には揺らぐまい」
ウリエルは腕を組み、わざとらしく溜息をつく。
「しかし……まさか、あそこまでの邪神を封じるとはな。
あの二人、もう我々天使より強いだろう」
「妬んでいるの?」
ラファエルが肘でつつくと、ウリエルは顔をそむけた。
「妬むか。……少し、興味を持っただけだ」
「はいはい、素直じゃないんだから」
ガブリエルが微笑ましげに肩を揺らす。
ヤハウェは、誰よりも静かに、そして深く語った。
「ユーマ――アダム試作零式。
レンカ――イブ試作零式。
試練を超え、なお成長を続けるあの二人が、
これから何を選ぶか……。
神である我らとて、未来のすべてを読み切ることはできぬ」
「ですが……」
ガブリエルは天界の外へと視線を向け、柔らかく微笑む。
「彼らなら、きっと良い未来を切り拓くでしょう。
戦いではなく、希望のために」
その時──
空間がわずかに揺らぎ、六柱の神々が姿を現した。
「お邪魔だったかな?」
最初に口を開いた天御中主神に、ヤハウェは穏やかに首を振る。
「いや、構わぬ。
あなた方も、下界の行く末が気になっているのだろう?」
「それもあるが……今日はな」
天御中主神は楽しげに壺を掲げる。
「戦いの終結と復興を祝おうと思ってな。
インドラからソーマとアムリタを分けてもらった。一献どうかね?」
「ふむ。
珍しいな、あなた方が酒を持ち寄るとは。……いただこう」
瀬織津姫命が笑みを浮かべ、杯を掲げた。
「今回は絆もそうだけど……愛が勝利を呼んだみたいね。
見ていて、胸が熱くなったわ」
「まったく、あそこまで情熱的とはのう」
天照大御神が肩をすくめる。
「正直、リリスが姿を現した時は、どうなることかと思ったが」
「我もだ」
須佐之男命が豪快に笑う。
「武御雷と酒呑童子、茨木童子を装っていたが……いやはや、骨が折れた」
「……姿が見えないと思えば、そんなことをしていたのか」
月読命が、呆れたように目を細める。
「まあ、間近であの二人の成長を見たかったからな」
武御雷が杯を傾ける。
「天界のルールに……多少は抵触しておるが……
まあ、済んだことか」
ヤハウェは苦笑しつつも、咎める様子はなかった。
須佐之男命が、ふと思い出したように周囲を見渡す。
「ところで、ルシフェルの姿が見えぬが?
本来の肉体は取り戻したのだろう?」
「彼は……肉体も魂も、深く傷つきすぎた」
ヤハウェは静かに告げる。
「しばらくは“人間の子”として休ませるため、
転生の手続きを進めている」
「転生先は……聞くのは野暮よな」
天御中主神が、肩をすくめた。
天界の光は、静かに揺れている。
その揺らぎは、祝福の脈動にも似ていた。
──新たな物語の幕開けを、
天もまた、言葉少なに見守っているかのようだった。
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