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4-32 ミリアの覚悟と未完成の獅帝剛爪

 時は少し遡って、王都への一時帰還――


 イルミナ討伐を終え、束の間の安息を得た七勇者たち。


 だが、傲慢の魔王以外の情報は得られたものの、


 傲慢の魔王マスターテリオンの存在は、依然として謎に包まれたままだった。


 ミリアはその日、ひそかに決意していたことをレオンハルトに相談した。


 「レオンハルトさん、教えてください……!」


 初めて出会って数日後、彼女はレオンハルトが獅帝グラオルを倒したことを知り、胸の奥に火が灯ったのだが、なかなか言い出せずにいた。


 レオンハルトが兄の仇であるという事実に、折り合いをつけるために。


 表面的には、分かっていた――


 兄が戦いで散ったのは、仕方のないことだと。


 だが、その裏で、レオンハルトに負けたくないという気持ちが、なかったわけではない。


 それから間もなく、怠慢の魔王バルドルが兄の尊厳を踏みにじり、屍兵化したことの方が、ミリアにとっては重要で許しがたく、倒すべき敵という認識が強くなっていた。


 「私も、兄の技を自分のものにして、必ず魔王たちに立ち向かう力にしたい」


 それ以来、王都での一時滞在中、そして旅の合間。


 ミリアは、わずかな隙間時間も惜しまず、特訓を続けてきた。



 城内の練兵場で、レオンハルトは獅帝剛爪の型を示し、ミリアに一つひとつ教えた。


 「力任せではなく、体全体で動かすこと。

 腕の振りだけでは、獅帝剛爪の真価は出せない」


 「はい……!」


 最初はぎこちない動きだったミリアも、何度も繰り返すうちに、柔らかくも力強い動きが、少しずつ形になっていく。


 「ふふ……できたかも……!」


 小さな笑顔が、努力の証として光を帯びる。


 旅の途中、森や砂漠の合間でも、特訓は欠かさなかった。


 「ここで、体重移動と爪のタイミングを調整するんだ」


 「わかりました、レオンハルトさん!」


 疲れが溜まる夜でも、ミリアは屈せず、小さな光の衝撃を手のひらに集めながら、技の習熟に励む。


 その目には、楚々とした決意と兄への憧れ、そして魔王戦で仲間の足を引っ張りたくないという思いが溢れていた。



 レオンハルトもまた、ミリアの熱意に応え、厳しくも、ときおり笑みを浮かべた。


 「楽しむことも力になる。

 覚えておけ。型を身につけるだけでは駄目だ。

 心で技を感じろ」


 「はい……楽しむ……です!」


 そんな時、遠くで俺とレンカが練習の様子を見守る。


 ミリアは軽く手を振り、


 「大丈夫、心配しないでね!」と笑う。


 楚々とした柔らかい笑顔に、俺は胸を打たれ、微笑み返す。


 ◆


 だが、獅帝剛爪はまだ完成していなかった。


 「傲慢の魔王戦までには……完成させる……!」


 ミリアは、いつでも全力を出せるよう、


 雷と体術の連携を頭に叩き込みながら、


 旅の間に少しずつ練習を続けていた。


 俺やレンカが近くにいるときは、


 少し甘えるように笑いながらも、


 心の奥底では必死に自分を追い込んでいた。


 「私が皆を守る力を持たなきゃ……!」


 その決意は、旅の長い道のりを通じて、少しずつ、確かな形となりつつあった。



 ある夜、焚き火の前で、ユーマとレンカが顔を見合わせる。


 「マスターテリオン……どこかで聞いた名前だな」


 「うん……でも思い出せない……

 何か、いやな予感がする」


 情報は少なく、魔王の能力も未知数。


 だが、七勇者はそれぞれの力と絆を信じ、準備を重ね、未知の敵に立ち向かう覚悟を固めていた。

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