2-4 ツーク国立学園入学試験:合格発表
翌日、俺とレンカは受験結果を見にツーク国立学園へ赴く。
掲示板には、次のように記されていた。
•主席 321 ユーマ・ヴァレンティア 中衛職
•次席 322 レンカ・ルミナリア 中衛職
•他 合格番号 003、014……
二人で小さくハイタッチを交わす。
その後、早速受付に行き、受験票をそれぞれ提示する。
「321、ユーマ・ヴァレンティアと、322、レンカ・ルミナリアです」
そう告げると、女性講師が応えた。
「校長が特別に受け付けます。こちらへどうぞ」
俺たちは「はい」と返事をして後をついていく。
沈黙が少し気まずい。
しばらく歩き、中央奥の部屋の前で女性講師がノックをする。
「来たかの。入られよ」
中から声が聞こえ、俺たちは女性講師に先導されて中に入る。
目の前には、ローブを身にまとい、御伽話に出てくる魔法使いのようなとんがり帽子をかぶった人物が座っていた。
顔はよく見えないが、話し方から相当なご年配なのは間違いない。
「おっと、客人の前で帽子をかぶったままではよくないの」
帽子の下から現れたのは、若々しいエルフの男性だった。
「わしはハイ・エルフのカールオ。ここの校長をしておる」
女性講師はその場を下がり、次の言葉に俺たちは息を呑む。
「ユーマ・ヴァレンティア、レンカ・ルミナリア。勇者の二人よ、ようこそツーク国立学園へ」
その言葉を聞き、俺は反射的にレンカをかばう位置へ移動する。
「な、何故それを? そのことは両親と国王以外には知らないはず!」
カールオは穏やかに答えた。
「ふむ、それは国王から聞かされておるからの。この学園には既に一人、勇者候補が在籍しておる。貴族派の家の出身だが、派閥に囚われない好青年でな。レオンハルト・グランベルク。聞いたことはあるじゃろ。
あと、わしの姪の孫娘の玄孫も勇者候補じゃ。勇者つながりで関係者じゃからの。まあ、玄孫は森に引きこもっておるヒッキーじゃがの」
姪の孫娘の玄孫……ツッコミどころは多いが、ここはスルーだ。
ハイ・エルフだから、下手すれば古代からの生き残りの可能性もある。
森に引きこもるのはエルフ全体に言えることで、外に出てくる方が少ない。
「それで、どのようなご用件で?」
「何も取って食おうというわけではない。いつか勇者を探す旅に出るなら、まずエルフの森へ先に行ってもらおうかと思っての。紹介状も書くでな。その気になったら言っておくれ。さて、入学手続きに入るかの」
カールオは手続き書類を渡してくる。
俺たちは警戒を解き、書類作業に入った。
一通り書き終え、チェックしてカールオに渡す。
「ふむ、問題はなさそうじゃの。改めてようこそツーク国立学園へ。入学式は来月の一日じゃ。別邸から通うか、寮に入るか決めておるかの?」
「私はユーマと一緒に別邸でも構わないと思っていたけど、両親がね」
レンカが答えると、カールオは紅茶を飲みながら、
「まだ早すぎるとかかの、ほっほっ」
レンカは頬を染めて答えた。
「いえ、家を購入するから二人で住まないかって」
カールオは吹き出してむせる。
俺は肩をさすって慰める。
レンカはさらに付け加える。
「私は家で二人きりがいいかなって……きゃっ」
おませさんだと思ったが、前世で二十歳だった記憶もあり、抵抗はない。
「まあ、校則に違反しないなら、それでも良いかな」
俺がそう答えると、カールオはようやくむせから解放される。
「校則にそんなことは載っておらんし、婚約者同士じゃから野暮なことは言わん。使用人はどうするのじゃ?」
「使用人に頼っていては、やがて勇者探しの旅もままならないでしょう。自活できるように頑張ります」
俺の言葉に、カールオは納得したように頷く。
何とか有耶無耶にできたと胸を撫で下ろす。
レンカはジト目で俺を見ている。
手続きが終わり、俺たちは別邸に帰宅する。
「おお、そうじゃ。新入生代表の挨拶、期待しておるからの」
「はあ……頑張ります」
――その頃、天界で様子を見守っていた神々は、
『まあ、同棲⁉』『良いんじゃないか?』『元々二十歳だったのだから、問題なし』『それを言うならヴァルハラで二千年修行していたから』『仲良き事は良きかな』
と、無責任に盛り上がっていた。
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