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七人の勇者と婚約者殿~世界と異世界を救う絆の物語~  作者: 童爺
第2章 学園都市イーバラット
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2-3 ツーク国立学園入学試験:剣技試験

 今日で最終日。

 キャンパスに行くと、後衛職合格者欄に俺とレンカの名前があった。

 これで手続きをすれば入学は確定するが、剣技試験を任意で受けることもできる。

 もちろん落ちても、後衛職合格者として後衛専門の授業を受けることになるだろう。


 俺たちは剣技試験を任意で受けることにした。

 受付の職員は驚いた表情を見せたが、すぐに手続きを進めてくれる。


 今回の試験は、戦士ギルドから派遣された戦士が相手だ。

 ちなみにこの世界には冒険者ギルドはなく、職業ごとにギルドがある。

 護衛などは酒場や宿屋で仲間を集めるか、ギルド同士で斡旋することもある。

 ギルドの斡旋だと中間手数料が発生するため、酒場や宿屋での仲間集めが一般的だ。


 今回は男性七名、女性三名のBクラス戦士が試験官として参加している。

 最高クラスはAで、Sクラスは存在しない。

 Sクラス相当の剣士は剣聖や剣王などの称号で呼ばれる。


 レンカの母・レティシアさんのおかげで、女性でも剣聖になれる希望を抱く者が増え、最近はCクラス女性剣士も多く、Bクラスも少なからず存在する。

 今回の配分は受験者の割合を考慮した結果、男性七名・女性三名になったようだ。


 試験開始の鐘が鳴り、受験番号順に名前が呼ばれる。

 最後の方で任意組の番になる。

 中衛職は絶対数が少なく、練度を上げにくいため敬遠されがちだ。


 任意組の最初に俺が呼ばれる。

 模擬のバスタードソードを手に舞台に立つ。


 バスタードソードは片手でも両手でも使える便利な剣で、攻撃意図を読まれにくい。

 相手はツーハンデッドソードを持つ。

 両手持ちで剣が長く、先に刺突を繰り出せる武器だ。


 俺は間合いギリギリまで詰め、相手の動きを探る。

 最初の刺突を避けて間合いに入れば、剣撃でこちらが有利になる。

 相手も分かっているのか、じりじりと間合いを詰めてくる。


 俺の剣は約120cm、相手は約180cm。その差は60cm。

 両手で剣を構え斜め前にかぶり、10cm間合いを詰める。


 相手は反応して突きを繰り出すが、転生前に天界で鍛錬し元剣聖に教示された俺には、避けるのは容易だった。


 その場でしゃがみ込み、相手の剣をこちらの剣の腹で滑らせる。

 模擬剣が火花を散らし、金属が擦れる音と心拍が同期するかのようだ。


 間合いを詰め、カウンターを放つ。

 しかし相手もそれを読んでいた。

 即座に持ち直してガードしてくる。


 一撃、二撃、そして二十撃を過ぎたあたりで、相手に焦りが見える。

 こちらの攻撃をガードして疲れた隙を狙うが、気にせず剣撃を加える。


 三十撃を超えたあたりで、相手のガードが崩れる。

 その隙を突き追撃を加えようとしたが、バスタードソードが折れた。

 模擬剣では斬撃に耐えられなかったようだ。


 「参りました、ありがとうございました」


 折れた剣先を拾い、その場を後にする。

 試験役のBクラス戦士や周囲の受験者は呆然としていた。


 俺はそそくさと舞台を離れ、レンカの元へ向かう。


 「模擬剣だということを忘れていたでしょう? 自分の相棒のコンディションを把握することも剣士の素質よ」

 「面目ない、返す言葉もありません」


 頭を下げながら、プチ反省会を行う。


 次はレンカが呼ばれる。

 レンカは模擬ショートスピアを選び、女性試験官の元へ向かう。


 舞台に上がったレンカは、ショートスピアの状態を確かめるように構える。

 相手はブロードソードと円盾ラウンドシールドを持ち待ち構える。


 ショートスピアは2m、ブロードソードは80cm。間合いは約1.2mだ。


 レンカは一気に約1mまで間合いを詰め、突きの連撃を繰り出す。

 相手は円盾を巧みに使い、全ての攻撃をガードする。


 レンカは突きながら間合いを詰め、相手の間合いに入ったところで柄の中央に持ち替え、穂先と石突を交互に繰り出して揺さぶる。


 だが相手は剣と盾を巧みに操り、攻撃をことごとく防ぐ。

 やはりBクラス戦士だけのことはある。


 レンカは一旦間合いを取るが、相手に追いつかれ、上手く距離をとれない。

 「突き、返し、回避……」

 間合いを詰め、引き、フェイント――秒単位で緻密な駆け引きが続く。


 レンカは最終的に、穂先と石突での交互攻撃で押し切るスタイルに切り替える。

 膠着状態が続いたが、ベルが鳴り時間切れ。


 「ありがとうございました」と礼をして舞台を降りる。


 「攻めあぐねていた様だね」

 「ええ、さすがBクラス。隙が見当たらなかったわ」

 「それにしても、なぜショートスピアを選んだの?」

 「戦乙女ヴァルキリーの姉さま方が愛用していたの。使い方を教わったけど、思うようにはできなかったわ」


 まだ十二歳。

 これから体ができ、伸びしろは十分にある。


 終了の鐘が鳴り、帰宅する。

 明日の結果で、後衛職か中衛職かが決まる。

 そう考えると、中々眠れなかった。



 その頃、試験会場のアリーナには校長と剣技担当のBクラス戦士全員、その他全講師陣が集まっていた。

 ツーハンデッドソードの戦士が、


 「何者だ、あのユーマとかいう少年は。彼は確か後衛職だろう? なんであんなに強いんだ? 既にCクラスを超えているぞ! 模擬剣でなく真剣だったら危なかったぞ!」


 と剣を掲げて見せる。

 剣の一点にはヒビが入っていた。

 ユーマが集中的に狙った箇所だ。


 確かに真剣であれば、折れていたのはBクラス戦士の方だろう。


 そしてレンカにも話が及ぶ。


 「あの一緒にいたショートスピアの娘もヤバかったわよ! 本物のショートスピアだったらやられていたわ。いいえ、模擬のショートスピアでも十分危険よ! 見てこのラウンドシールド! 買い替えよ!」


 そう言って掲げた円盾は、表面こそ問題なさそうに見えるが、裏側にはヒビが入り、

 もう一撃受けていたら完全に壊れていただろうことが容易に想像できた。


 「悟られないようにラウンドシールドは極力使わず、ブロードソードでさばいていたわ。

 距離を取られて突きの連撃を受けていたら、完全に負けだった。

 必死に距離を詰めて、突きを放てないように苦労したわよ」


 と女性Bクラス戦士は述べた。


 校長はうなずき、


 「ふむ、では二人とも合格で良いな。

 今年は中衛職が二人か、ちょっと少ないが、試験結果は主席と次席だ。

 魔術理論でレンカ君が一歩及ばなかった程度だの、ほっほっほっ」


 とつぶやく。


 戦士たちや講師陣は肩をすくめたり苦笑したりするが、校長の言葉に異論を唱える者はいなかった。

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