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1) 天才ハッカーと俺
「失礼します!」
部室の扉を開けた瞬間、俺は息をのんだ。そこには、大量のサーバーとPCに囲まれて、一人の美少女が座っていた。
彼女の名前は澪。学年で一番の天才プログラマーだ。だが、誰ともつるまない孤高の存在で、このパソコン部は彼女と、あとは幽霊部員が数名いるだけだった。
「……何の用?」
涼は俺を一瞥すると、冷たい声で言った。その声には、明らかに「お前なんかが、ここにいるな」という拒絶がこもっている。
「えっと、その、パソコンをやってみたくて!入部希望です!」
俺の名前は茜。PCなんて、起動方法もろくに知らない初心者だ。それでも、どうしてもこの部活に入りたかった。
「……悪いけど、ここは遊び場じゃない。初心者には荷が重い」
涼はそう言って俺を追い返そうとした。だが、俺は諦めない。この部活には、何か特別なものがある。涼の瞳の奥に隠された、情熱の炎が見えたからだ。
「お願いします!俺、ここにいさせてください!」
俺の決意のこもった声に、涼は静かに、そして呆れたようにため息をついた。
「……勝手にすれば」
これが、俺と天才ハッカーの出会いだった。