先生の告白
「加山さん……。」
先生は次の言葉をのみこんで少し俯いた。
「先生。奈良さんの方から言わないように言われているのかも知れませんが、このチャンスを逃したくはありません。クラスのためにもお願いします。」
加山さんがそう言うと、クラスのみんなもそれに賛同した。
ついに先生はそれに押されて口を開いた。
「いつかは言うつもりだったのだが、」
さっきのざわめきが嘘のように静まり、いつになくみんなが先生の話を集中して聞いている。
「非常に残念だが、奈良さんはもういない。」
クラスに静けさが漂っているが、これはさっきまでのと違う気がする。
その空気に向かって先生は言葉を発した。
「みんなも薄々気づいているかもしれないが、奈良さんは一年前のいじめによって登校拒否に陥ってしまったんだ。そこでみんなと話し合うべきだったのだが、そうする前に奈良さんは家を出てしまったんだ。両親は直ぐに警察に捜査願いを届け出て、捜しに行かれたのだが時既に遅し……。見つかった時にはもう、木にロープをかけ……首を吊り息を引き取っていたのだそうだ。」
先生は今にも泣きそうだ。いや、泣いているんじゃないのか?これは。
いじめを知らなかった人達は目が腫れるくらい泣いているが、私を含め他の人は黙りこくっている。
まさか、そんなことになっていたとは知らなかったとでも言うように。
中にはその状況をまだ受け入れることができてない人もいるんじゃないのだろうか。
だが、その静けさは加山さんの発言により数分後に破られた。
「華播さん、このことを文映部の部長に言ってきて。今すぐに。」