告別
君は優しく眼を閉じ、一声も発しない
人形のように白い肌を水滴が艷やかに飾って居る
浴槽には、君の裸体と処置の為の水が満ちている
窓から差す陽光が光景を彩る
処置は完了した様に思えた
僕は君を浴槽から連れ出すと、タイルの床に横たえた
残った汚れを洗い落とし、君の全身を清める
とても大切な事だから、匂いまで確認しながら気の済むまで行う
最後にタオルで水滴を一つ残さず拭き取った
肩を貸す様な格好で君を立たせると、僕は浴室を出て自室へ移動した
「どうして」
「僕を拒んだの」
布団に君を寝かせると、答えの無い問い掛けを呟く
殺す為に付けた傷痕はどんなに洗っても、白い皮膚を醜く汚していた
「殺してやりたいのに」
「もう殺せないなんて、酷いよ………」
君は優しく眼を閉じ、一声も発しない
それは永遠の拒絶だった