急がば回れ、最速に
初めから持っていて、今更ながら初めて使うスキル。
1P使って一時間寝る事が出来るとあるが、実際のところどうなんだろうか。
二人から少し離れ、小声で呟いた。
「仮眠」
―――……マジか。
ここは、いつもの空間だった。
仮眠でも夢の中に来れるのか。
良いこと知った!
よっしゃ、あそこ行こう!
俺は慌てて、ある場所へと向かった。
魔力というものは、前世では無い能力だった。
喧嘩するヤツ、本を読むヤツ、陸上に取り組むヤツ、宝くじに当たるヤツ。それらは体力や攻撃力等ステータスに変換出来る。けれど、魔力だけは違う。今でこそ使える人もいるが、魔法なんてものは昔は何もなかったのだ。
だから、魔力を知る必要があった。
サーチや鑑定を覚えた時は、モンスターやダンジョン特有の宝やドロップ品等を知ることで気配や物質の知識を持つことで習得となった。
では、攻撃魔法はどうか。
そこで現れたのが、春華さんだった。
春華さんは基本となる炎、水、風、土の4属性と回復魔法を使っていた。思った通り属性毎に魔力の質が違っていて、炎は少し温かく、風は呼吸がしやすくなるような心地よさをもたらした。
………少し、春華さんが羨ましい。
俺は魔法が使えなかったからこうして覚えていっているけれど、春華さんはダンジョンが出来てからずっと魔法と、この清らかな気配と共にいたのだ。
「―――鑑定」
「…………」
仮眠を終え、むくりと起き上がる。
あれここどこだっけ、と一瞬忘れたのは寝起きゆえだからしょうがない。うん。
今まで思念体でダンジョンに潜っていた経験上、5階みたいな大部屋は置いといて基本各階の階段のある部屋はモンスターが出ないため、覚醒者は基本休憩所として使っている。
俺もそうさせてもらったが、流石にダンジョン内で寝るのは初めてだったから、極限に眠かったさっきの状態と違い思考がクリアな今、大胆なことをしてしまったと割とドキドキしている。
「あ、起きたわね」
「すげぇ、キッチリ一時間だぜ」
「え、時間ってダンジョンの中でも分かるのか?今何時だ??」
「通信機に載ってんだよ、今はちょうど5時になったところだな」
へー、便利だな。
ダンジョンって基本、念入りに準備して行けるところまで行くから、時間は関係ないんだよな。だからスマホとか電波届かなくても気にしないんだが、確かにこういう時とか仲間と連絡連携したりする場合は時間も分かるとありがたい。
…………5時、か。
流石に限界か。
「じゃあ俺、行ってきます!」
「ねぇ、本当に一人で大丈夫なの?私も魔力回復したし、少なからず戦力になると思うわよ」
「有り難いですが、取りこぼして下に通してしまうモンスターも出るかもしれないので、その対応をお願いしたいです」
「でもよ、春華さんじゃねぇけど本当に虎太郎一人で大丈夫なのか?」
「まぁ、不安だけどさ。そうだ金森、一時間経っても戻って来なかったらAランクハンターの応援を頼むよ」
「お、おう!頑張ってくれよ!」
「気をつけてね、絶対生きて帰ってくるのよ!!」
「はい!!!」
二人の応援を背後に、階段をのぼる。
一歩。
二歩。
三歩。
上がるたびにプレッシャーが半端ない。
けれど。
今やれることは、やった。
33階。
階段の前のフロアにも、まだモンスターはいなかった。
気配は物凄い量あるものの、一箇所に留まっている。
「ストーンウォール!」
時間稼ぎに、階段周辺に土魔法で壁を創る。
初めての魔法だったが、軽く叩くとコンコンと音がすることから、それなりに強度はありそうだ。
どうやら成功したらしい。―――良かった。
一歩。
一歩。
冷や汗が止まらない。
でも―――やるしかない!!!
「ウォーターリップ!!!」
水圧がゴブリンを襲い。
耳を。
腕を。
胴体を。
切り裂いた。
「「「ゴァアァァアアァッ!!?」」」
「良いね、上等ぉ!」
俺とお前ら、どっちが生き残るのか。
―――さあ、開幕だ!!!!!
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