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予兆



家に着いて。

食事して。

お風呂に入って。


何にもないフリをして。

日常の夜を、やり過ごした。


今日は疲れたからと言って、両親におやすみと言って。

おやすみと言ってもらった。



「あ、そうそう」



寝室に向かおうとしたら、呼び止められた。



「なに?母ちゃん」



動揺、するな。

悟られるな。



「明日は虎太郎の5歳の誕生日でしょう?誕生日プレゼント、楽しみにしててね」


「父ちゃんも早く帰って来れるよう頑張るからな、夕食は皆で乾杯しような!」





―――ぞわっ……





「やった、ありがとう!」





悟ら、れるな。







「幻歩道!」


部屋に戻ってすぐ眠りに落ちる。

―――睡眠スキルで良かった、緊張して眠れなかったかもしれない。


思念体になって、ダンジョンへ向かう。

今は20時を過ぎた時間帯、即ち夜だ。


それでも、ダンジョンは開いていた。

覚醒者の中には夜に入りたい人もいるのだろう。


気配は多い。

人も―――モンスターも。



けれど、いつも通りだ。

昼間も同じ、むしろ今よりずっと多い。



けれど。

この、得も言われぬ不安感はなんだ?




俺が産まれて、5年が経つ。

つまり、ダンジョンが出来て10年となる、節目の年だ。


―――何も、なければいいのに。




今までダンジョンに潜って覚えた上への道のりを、最短距離で走り進む。


10階。

20階。


異常なし。




24階、人の気配が消えた。

昼間もこのくらいの階層で人がいなくなる。


敵もこの辺りから一気に強くなるからな。

日本では、最高何階まで進んでいるのだろうか?



いや、今は気にするな。

意識を、逸らすな。




30階、モンスターの気配が濃くなった。

けれど…………違う、ここではない。



これ以降はあまり行ったことがない。

まだ俺では敵わない、強いモンスターの気配がしたからだ。


サーチを駆使して階段を探す。



31階。

まだ少し遠い。



32階。

多くて重い、モンスターの気配が近い。





33階。





―――ここだ!!!






(なんだ、あれは!!!!??)







こんな高い階層にいるはずもない、無数のゴブリン達と。

大量のゴブリンロードやゴブリンメイジ、ゴブリンスナイパー等いろいろなゴブリンと。



何匹ものゴブリンキングと。





それら群衆を束ねる、ゴブリンエンペラー。






これは、まさか!

スタンピードか!!!!!





(駄目だ、これは。俺一人では流石に無理だ!)




仮初姿で攻撃しても、流石にこれだけの量を全部倒しきるとは思えない。


幸い、エンペラー達にまだ動く気配はない。

 


(今なら、助けを呼べる!)




俺はダッシュで、来た道を戻る。



走る。

走る。



23階、行きには居たが………くそっ、居ないか!


20階、いない。

19階、まだか。

18階―――いた!!






(仮初姿!)


「うぉっ、何だいきなり………人!?」


「突然で悪いけど、33階でスタンピードが出来てるんだ!討伐の協力もしくは助けを呼んでくれ!!」


「はぁ?何言ってんだコイツ?」


「嘘じゃない、本当なんだ!!」


「うるせーな、スタンピードなんてダンジョン出来てから一度も起きたことねぇだろ!つーか33階なんて誰も行ったことねぇのに、お前みてぇなガキが行けるもんかよ」



ガキ!?

俺のどこがガキ………ん?

そういえば視界が低いな、この男も背が高い。


まさか、そうか!

年齢言わずに仮初姿と言えば、実年齢になっちまうのか!



くそっ、信じてもらうために今からでも20歳に姿を変えるか?


―――いや、それは悪手か。

気味悪がられるだけだ。


俺以外にも姿を変える術を持つ人がいるかも分からない今のこの状況で、必要ない情報は見せない方が良い。



「つーか、よくガキが入り込めたな?ここはダンジョンだぞ、ライセンス持ってんのかぁ?」


「……ライセンス?」


「はっ、そんなことも知らねぇのかよ!日本政府が覚醒者に渡す身分証みてぇなモンだよ、ちなみに俺ぁ天下のヤマダイハンターギルド所属でB級ライセンス所持者だぜ!!」


「ヤマダイ……?」


「分っかんねぇヤツだなぁ!」



ヤマダイハンターギルド?

そんなのあるんだ、初めて聞いた。



って、今はそれどころじゃないんだって!



「無知で悪い、勉強する!頼む、時間がないんだ!スタンピードを止める協力をしてくれ!!」


「だから、そんなのあり得ないって!夢でも見たんじゃねーの?」



ははははは!!



高笑いとともに、俺に背を向ける。


駄目だ。

信用されない。




確かに、夢で見た。

これは俺が眠っている状態で見ている、(げんじつ)だ。




このままだと、スタンピードは確実に起こる。


―――起こしては、いけないんだ!





「仮初姿、解除」





自分の夢の中へ戻った俺は、すぐに目を覚ます。

時計を見れば、21時。

あれからもう一時間経っていたのか。



あのモンスターの動きからして、数時間は大丈夫だろう。




今のうちに戦力を集めれば、まだ間に合うはずだ。




俺は両親と会わないように、窓を開けて外へと出た。





目指すはダンジョンに特化した、覚醒者が集う場所。





ヤマダイハンターギルドだ!





お読み下さり、ありがとうございます!


反応があるほど更新速度が上がります!(多分)

続きが気になるとか興味や関心等ありましたら、気軽に評価や感想等よろしくお願いします!

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