7.入院生活② 病棟の夜は時に騒々しい
手術から3日目、担当医から飲水の許可が出る。
「水ならいくらでも飲んでいいですよ。」
やった。実は喉が渇いて仕方なかったのだ。
だが、コップがない。
仕方がないので、歩行訓練も兼ねて自販機の所まで行き、ペットボトルの水を買う。
途中、看護師に「あ、歩いてますねー」と声を掛けられる。
それにしても、3日で水が飲めるとは、思っていたより早かった。
◇
そして、何もすることがないまま夜になる。
夜の病棟は、基本静かなのだが、時々色んな声が聞こえてくる。
「やんない。」
「やんないよ。」
これ、近くの病室から割と毎晩聞こえてくる声。
何をやんないのか分からないが、一時間おきくらいに何処からか聞こえてくる。
普段はこれくらいなのだが、ある晩、ナースステーションの辺りから大きな声が繰り返し聞こえてきた。
「俺はもう4時間待たされてるんだよ。」
そう言えばこの声、昼間から時々聞こえていた。その時は「2時間」だったが。
「他の患者さんの迷惑でしょ!」と、気の強そうな看護師の声が聞こえる。このやり取りが暫く続いた。
一体何があったのか。
翌日から、看護師は全員名札を着けなくなった。何があったのだろう……。
◇
あと、こんなことも。
その日の晩は、談話室で看護師のセミナーが開かれていたようで、講師が何やら説明している。この講師の声が大きいもんだから、話の内容が結構良く聞き取れる。
つい、聞き入ってしまった。
「今日は、『胃ろう』について説明します。」
ああ、あの胃に穴を開けて栄養を流し込むやつだな。
「胃ろうの『ろう』は、穴のことです。だから、耳に開けるピアスは『耳ろう』と言います。」
そうなんだ。
「胃ろうを開ける場所は、胃と他の臓器が重なっていない所を探して、そこに開けます。どうやって探すかというと、まず、胃に内視鏡を入れます。」
ふんふん。
「で、内視鏡にはライトがついていますから、それを点灯する。」
ふん?
「そうすると、体の中が光って、胃と他の臓器が重なっていない所は明るく見える。そこを狙って穴を開けます。」
うーん想像してしまった。かなり不気味な絵面である。でも、確かに合理的なやり方だ。
こんな感じでセミナーは1時間くらい続いた。いや、勉強になりました。
◇
次回、待望の食事が始まります。