5.いよいよ手術、そして入院
さて、いよいよ手術。
前日は例によってバナナのみで過ごした後、翌朝10:00に入院。その日は休日だったため、守衛室に言って病院内に入る。
病室に案内されて着替えたら、早速例の下剤を飲む。これでもう3回目なので、なんだかもう慣れてきた。
「トイレはこことこことここ。どこでも使っていいですよ。」
例によって1時間くらいかけて1800mlの下剤を飲んで、腸の中のものを全部出す。当然その日は絶食。水だけは飲めるがそれも21:00まで。
その後、点滴を入れられる。これから暫く(術後一週間くらいらしい)ものが食べられなくなるので、点滴で栄養補給をすることになるそうだ。
夕方、看護師がへそのゴマを取りに来た。
手術で切るのが丁度へその辺りなので、へそが汚れてゴマが溜まっているとまずいんだそうだ。
「先ずおへそに油を入れますね。」
この油で汚れを溶かしてから、へそを綺麗にするんだとか。
「あー……ゴマないですね。おへその中とても綺麗ですよ。普段から何かしてます?」
いえ、特には。
「とても綺麗なおへそですよ。」
へそを誉められたのは人生初だ。
◇
そして手術当日。
朝、駄目押しの浣腸をされるがもう何も出てこない。
手術着に着替えたら、手術室へは看護師に案内されて歩いてゆく。帰りはストレッチャーで運ばれて帰るそうだ。まあそりゃそうか。
手術室に到着。先ずは椅子に座り、麻酔等の処置を受ける。点滴とは反対の手に麻酔の点滴が入る。それから、脊椎からも麻酔の管を入れる。
「入れる時、ちょっと嫌な感じがしますよ。」
どんな感じなのだろう。
背骨のあたりになにか入っていくのがわかる。あ、痛くはないが確かになんか嫌な感じがする。
どんな感じかって?
素人とは言え、最近は一応小説らしいものを書いたりしてるんだから、ここはひとつ、なんとか言葉で表現してみろアララギ。
うーん。
「悪魔に背中を撫でられたような感じ」かな。
62点だな。
◇
その後、心電図の電極をつけられる。心臓の鼓動に合わせて「ピッ、ピッ」という音が聞こえてくる。
「では、手術台に寝て下さい。狭いので気を付けて。」
確かに狭い。ちょっと大きめの車のシート位だろうか。まあ、手術のことを考えると、なるべく患者の体の近くに立って作業したいだろうから、この寸法になるのかな。
手術台に寝ようとした、その時。
「ピピピ……」
心電図の機械から聴こえていた音が、突如尋常ではない速さで鳴りはじめた。
えっ、何これ。
手術室内が、一時ちょっと騒然とした。
暫くすると動悸は収まってきたので、手術は予定どおり進められたが、この一件で「こいつ心臓ヤバイ」認定されたらしく、以後、退院まで心電図の電極を常時つけられたまま、私の心臓はモニタリングされることとなってしまった。
手術台に横向きに寝て、「へそを見る感じ」で背中を丸める。
程なく麻酔が効いて、眠ってしまった。
◇
それから幾らも経っていないような気がしたのだが、「手術終わりましたよ。」の声で目が覚めた。
10分位のような気がしたが、実際には4時間程が経過していて、夕方になっていた。
全身麻酔って、こんな感じなのか。
そして、ストレッチャーで病室へ帰還となった。手術は成功だそうだ。これで、とりあえず体の中からがんの病巣はなくなったのだ。
良かった。
◇
次回、入院生活開始。




