98 公爵家一日目〜公爵様にばれてーら
ここは公爵邸応接室。ルガリオ達精霊が飛び交っている。どうしてだ?
「ケビンずるーい、お菓子食べてる。僕たちも食べるの」
「何でルガリオ達来てるんだよ」
「僕たちも一緒に行くよ。中級、下級精霊達が領地にいるから大丈夫。それに海にも行くんだろ。海精霊のウルンとウルルンが楽しみにしていてさ、火精霊のアスターとガーファイア、風精霊シュールとリズン、リバーを誘ったんだ。みんな一緒だよ。そうだ、みんなにお布団作ってよ。一緒に寝ても寝相が悪くて困るんだよ!ケビン、お願いね」
「わかったよ、お布団作るよ」
やったー、と言ってみんなで舞っている。はっ、みんなが大注目している。
「父様、すみません。何だかみんな来るそうです。いいですか?」
「ああ、というか、ついていかなくても、勝手に移動できるのではないか?まぁ、気をつけて行くんだよ。みんなの迷惑になる行動はしないこと。わかった?フレッド様が一番年長者だから、いうことをよく聞くんだよ」」
なんだか父様諦めた感があるね。
「「「「うん、とうさま、ありがとう。フレッドの言うことを良く聞くね」」」」
わー、と言って舞っている。
公爵様がフレッド様の方を向き心配していた。
「フレッド、お前大丈夫か?精霊様を制御できるのか?」
「できるわけないじゃないですか!父上。ケビン、どうする?」
「いえ、僕は子供だからわからないです」
「ずるいぞ、こう言う時だけ子供というのはやめろよ」
「えー、子供役やっていいといったではないですか!」
「もうバレてるよ。ここでは普通でいいよ」
フレッド様、ちょっと投げやりになっていませんか。
「わははは、ルーク、楽しい息子だな。ロイドも可愛い孫だな」
「そうだろう、可愛い孫なんだよ。末の孫娘も可愛すぎなんだよ。なぁルーク」
「ええ、子供達みんな可愛い。特にルーナは可愛い。可愛すぎるんだ」
父様とお祖父様のルーナ自慢になってきた。でも、ルーナは本当に可愛いな。ジュリも可愛いけど。弟妹達が可愛すぎる。これはしょうがないことだ。
「ケビン、お前も可愛い弟だよ」
ロナウド兄様が俺を慰めてくれた。
「それをいうならロナウドもケビンもジュリもみんな可愛い弟妹だよ」
くー、イーサン兄様は優しいんだ。
「「イーサン兄様は優しくてかっこいい兄様ですよ」」
「兄弟仲がいいよな、お前達は」
フレッド様が呟いた。
「フレッド、俺たち兄弟も仲がいいだろ?ん?」
「頼りにしてますよ、兄上。問題は兄上に全て丸投げします」
フレッド様がステファン様に丸投げ宣言。
「ステファン様、それ、ケビンがいつも俺たちにやっていることですよ。だから、兄である俺たちが受け止めているのです」
兄様達、ステファン様に同調している。同じ状況に陥るかもね。
「それでは、私もフレッドの丸投げを受け止めるのか。大変そうだな。イーサン、ロナウド」
「それはもう、大変です。絶対、ケビンのやらかしがフレッド様に行き、フレッド様がステファン様に丸投がする構図が出来上がっているようですね」
「では、父上、よろしくお願いします」
ステファン様、公爵様に投げたー!
「ケビンくん、ほどほどに頼むよ」
えー僕ですか?
「公爵様大丈夫です。さほどやらかさないので安心してください」
この言葉、父様達に言ったことがある気がする。父様達を見ると首を振っている。
「この言葉、父様達に言いましたか?」
みんなが大きく頷いた。
「その言葉は全く当てにならない言葉だよ、ケビン。何度聞いた言葉だろうなぁ」
父様は目を閉じて思い出していたことだろう。そんなにあったかな?あははは。
「そうだ、フレッド。この前お前が忘れて行ったアイマスク?というのか。これはすごいな。疲れが取れるんだよ。それも少し寝ただけで効果がある。あれはどうしたんだ?」
「あ、ああ、従業員特典で頂いたものだ」
「従業員特典?」
「ああ、従業員になったら、アイマスクとバッグと寮を作ってもらえる。快適だよ。そのアイマスクは少し寝てスッキリしたところで馬車馬のように働けというアイマスク」
もうわかっている人達はくすくす笑っている。
「フレッド様、何を言っているのですか!馬車馬のように働けではないです。短い時間で寝てもスッキリして、また頑張って働いてねという意味です」
言葉が違うだけで同じ意味のような気がするが、馬車馬のように働けとは言っていない。
「そ、そうか??まぁ、アイマスクをすれば短時間でも疲れは取れるから、いっぱい働けるよ」
「それではダメなんですよ。きちんと休暇をとって、家族団欒や恋人との語らいなどに使ってほしいのです。仕事中毒は体を壊し早死にしてしまうのです。絶対にダメです。フレッド様はアンジュ様を悲しませていいのですか?アンジュ様との明るい家庭生活を目指してください」
「ケビン、仕事を増やすなよ」
「うーん、それはわからないです」
厳格だと思っていた公爵様がお腹を抱えて笑っている。
「メルシー様が降嫁された時から、我が公爵家は寄親として味方をしてきた。今後も変わることがない。何かあれば私やステファンが盾になる。思い存分とは言わないが、我々を頼ってくれて良い。君たちが作る魔道具は楽しみなんだよ。魔道具界の重鎮、ドバイン様までフォーゲリア伯爵領にいると聞いた時にはびっくりしたよ。ドバイン様を交えて、新たな魔道具開発が進むことを期待しているよ」
皆で公爵様に頭を下げた。何て懐のでっかい人なんだ。こういう人が上に立つべき人なんだよ。寄親でよかった。
公爵様がルガリオに話しかけた。本当に仲がいい。お菓子もらいすぎてないだろうか?迷惑かけていないか心配だよ。
「ルガリオ、この前渡した黒い実をケビンくんに渡したのかい?」
「あー、忘れていた。遊びに夢中で忘れていた。ごめんね、ケビン。ケビンが欲しがっていた実をじっちゃまの土地で見つけたからかもらったんだよ。これ、はい」
色々な色の実、これはカカオ。この土地に自生していたの?マジで?母様に種を作ってもらったけど、やったー、あるんだ。
「やっ、やったー、これはカカオの実だ。えー、自生しているの。すごい。ルガリオ達すごいよ。見つけてくれてありがとう」
「ふふーん、すごいでしょう。また、ケビンが欲しいものを色々な土地で見つけるからね。だから僕らもいろんなところに連れて行ってね。留守番じゃやだよ」
父様達が不思議そうに実を手に取っている。
「ケビン、これは温室に作ったものか?自生していたのだな」
「父様、僕もびっくりしました」
「これを何に使うのだ?」
「お菓子です」
「お菓子?これがお菓子になるのか?」
「手間は掛かりますが美味しいです。イーサン兄様に魔道具を作ってもらわないといけないのですが、余裕は?」
魔道具士達は日夜研究と考察と作成で忙しい。そして受注があるためさらに忙しい。そこへまた僕が作成依頼。どうだろうなぁ。
「ない!魔道具施設も人手不足だよ」
だよねー。では。
「うぅー、そうですか。じゃー、ロナウド兄様、魔法でチャッチャとやってください」
「ケビン、お前」
無茶ぶりをロナウド兄様にお願いしたら呆れられた。ごめんなさい。
「ルガリオ達ごめん、帰ってきてからゆっくり作っていい?」
「いいよー、まだいっぱい食べたことないお菓子があるから大丈夫だよ」
しかし、公爵様が残念そうな顔をしていた。甘いもの好きなのかな?ロナウド兄様も気づいたらしく、ため息をついていた。
「ケビン、どんな感じになるのか少しだけやってみようか?」
「本当ですか?ロナウド兄様」
兄様に抱きついたら、ルガリオ達も抱きついてきた。多数の精霊に抱きつかれ、発光しているロナウド兄様。どれだけの精霊達が抱きついているのか、あははは。
「父様、作り方とか見せてしまって、公爵様に任せてしまっていいですか?」
「ああ、そうだな。この領地で自生しているのだ。公爵様に任せてしまおう」
父様はこれ以上面倒ごとを抱えたくなくて、公爵様を巻き込むことにしたらしい。うちはうちの温室にあるカカオでチョコレートを領内で食べられればいいのだ。
大きいことは公爵様にお任せだ。それを使って商売しようが別に構わないよ。
厨房で料理教室の開催だ。今回のテーマはまさにチョコレート!パチパチパチ。トーマスとランドルがやる気だ。公爵家の料理人と仲良くね。その前にロナウド兄様に魔法でチャチャカやってもらいましょう。
カカオ豆を取り出し、発酵、乾燥、焙煎、すりつぶす、甘みはお好みで、そして固める。魔法って便利。
その後、料理人にバトンタッチし、チョコマフィン、チョコパイ、チョコババロア、チョコクッキーを作った。もちろん俺の大好きなアーモンドチョコも作ったよ。普通のチョコも形は歪だけど作った。
ルカリオ達が大喜び。初めてのお菓子だと飛び回っていた。
イーサン兄様にはこの工程の魔道具をお願いした。忙しくしやがって、というお小言もいただきました。トホホ。
しかし公爵様は、これはフォーゲリアのお菓子だからフォーゲリア商会から公爵家へ卸すことになった。
僕は公爵家でやりとりすればいいと思ったが、そうはいかないらしい。結局のところフォーゲリア商会の後ろ盾にボールドウエッジ公爵家がいるという構造にするらしい。難しいことはみんなにお任せだ。




