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94 9歳の誕生日

「ケビン様、誕生日おめでとうございます」


 朝一番、ルーアンからのお祝いの言葉。屋敷内でも、いつものルーティンで外に出てもお祝いの言葉の嵐。


 ありがと、ありがと。精霊達も金色の粉を振りかけて行く。結婚式のライスシャワーの如く振り撒いて行く。この金色の粉はなんでしょうかね?まぁ、いいか。


「みんな、ありがとう。これからもよろしくね」


 なぜみんなに言っているかというと、ラジオ体操は従業員ほぼ全員で行われているからだ。朝の当番の人と料理人は無理だが、なぜか朝の恒例になってしまった。


 朝のルーティーンが終わり、朝食後、みんなから誕生日プレゼントをもらった。


 父様とお祖父様からは、剣となぜか樽のお酒をもらった。名前はケビン・ラムッシュと名付けたお酒。ラム酒だ。ネーミングが・・・。でもカクテルやレーズンに付ければラムレーズンだ。お菓子に使える。うれしい。


「ありがとう、父様、お祖父様。ラム酒なんて嬉しい。でもケビン・ラムッシュなんて恥ずかしいけど」


「良い名前だろ」


 あ、う、うん。父様とお祖父様がどや顔だったので、笑顔で答えた。


「今度は私達よ」


 母様とお祖母様。


「母様からはバラの種だけど、いつもあなたに絵をかいてもらって作っていた花を自分で思い描いて作ってみたのよ。初めて自分で想像した種を作ったのよ。それをケビン貴女に渡したかったの」


「母様、うれしいです。母様が想像したバラなんて。一生懸命育てます」


「わたしはこれよ」

 お祖母様からはアート刺繍。俺がルガリオ達の刺繍を額に入れたものを気に入り、お祖母様はアート刺繍にはまっていった。もらったアート刺繍は家族を刺繍にしたものだ。俺を中心に家族がいる。涙が出てしまった。


「まあまあ、この子は、何泣いているのかしら」


 お祖母様は俺を抱っこして涙を拭いてくれた。


「だって、みんなが僕を囲んで幸せそうに微笑んでいるのですよ。僕の家族、うれしい」

 ヒック、ヒックと嗚咽をもらしてしまった。執事、メイド達がそっと涙を拭いていた。


「もうこの子ったら」


「ありがとう、お祖母様。僕、これをお部屋に飾るね。劣化防止の付与をしておくね」


「今度は俺だな。これだ」

 イーサン兄様が布を取った。そこには自転車があった。


「えっ、イーサン兄様、自転車完成させたの。自転車だ!」


「ああ、ケビンが作ったパーツを組み立てたが、なかなかうまくいかなくてな。やっと出来たんだよ。始めは回転がうまくいかなくて、試運転は怪我が絶えなかったぞ。そのたびにポーション飲んで、お腹がタブタブになったよ」


「うわー、ペダルを回すと動くね。うんうん、いいね。サドルもふかふかだ。でも兄様、これ大人用ですよね。僕が乗れないじゃないですか」


「ああ、ケビンはこれだ」


 子供用椅子?小さい子供が前か後ろに取り付ける椅子。ん?


「これを前に取り付けて、ルーアンが運転すれば大丈夫だ。ルーアン、乗れるように練習するんだぞ」


「かしこまりました。じてんしゃ?を乗れるように訓練します。そしてケビン様を前に乗せて領内を視察に行きます」


 おいおい、ちみたち、なに俺抜きで話をしているのだ。俺が一人で乗らないとだめじゃないか?ああん?くそー、パーツを子供用を作って渡せばよかった。大人用を作ってしまったよ。やだよ、9歳にして前に乗るなんて。せめて後ろにしてくれ。


「イーサン兄様、なぜ前なのですか?後ろでいいではないですか?」


「後ろは襲撃があった時にお前を守れないことと、前なら領民達にケビンが見回りに来たことが分かるじゃないか。手も振れるぞ」


 俺は皇族ではない。お手振りなんてしない。そんなえらい身分ではないんだよ。


「イーサン兄様、子供用を作ってください」


「ブフッ、そうだな、検討するよ。でも、ルーアンの前にいたほうがいいよ」


「ケビン様、乗れるように頑張ります。しばらく待っていてください」

 ルーアンが深刻な顔で言ってきた。自転車は娯楽だからそんなに命にかかわることではないのだから、軽く考えてよ。


「ルーアン、急がないから、怪我しないように練習してね。お願いだよ、怪我はだめだよ」


「ケビン様、大丈夫です。ケビン様が楽しみにしているので、早く習得いたします」


 楽しみにしていたのは自分で乗る自転車だから。前に乗る子供用椅子に乗ることではないですからー。


「う、うん、ルーアンよろしく。怪我しないようにね。無理しちゃだめだよ。イーサン兄様、試験実施したということはもう乗れる人がいるってことですよね」


「ああ、騎士団に頼んだ。騎士団は乗れるようになっている。スピード競争したり楽しそうだったよ。」


 何だって!いつの間に。俺が執務室にこもって仕事をしている時か。ずるい。


「それでは、俺からのプレゼント」


 ロナウド兄様がマジックバッグから茶色いものを出した。


「ロナウド兄様、これソーセージですよね。わーい、ソーセージ。生ハムもある。すごいすごい。これどうしたのですか?作っているところがあったのですか?」


「やっぱり、ケビンはこれらを知っていたのか。ソーセージ?なまはむ?ケビンが言っていたことを思い出して、地域を回った時に見てきたんだ。珍しいものでなんとなくケビンが言っていたものに近かったので購入してきたんだ。よかったよ、合っていて」


「あと、この果物を知っているか?他国からの物々交換したが食べられないと言っていたものだ」


 その形はパイナップルとグレープフルーツ?オレンジ?


「えー、見せてください」


 手に取り、パイナップルはまんまだからわかる、こっちはやっぱりグレープフルーツとオレンジだ。匂いが柑橘系。


「これ食べられますよ。ただ完熟していないと美味しくないと思います。ソーセージ食べたいです、ロナウド兄様」


「あー、ケビン。ケビンが探していた物でよかったのだが、その、臭いんだ。獣臭いというか。子供のお前にはきつい匂いかもしれないんだ。すまない。でも、ケビンなら美味しくなる方法が気づくかなと思って持って来たんだ。美味しくなったら教えてあげたいなぁと思ったんだ」


「ほー、ロナウド兄様、教えてあげたい人がそこにいるのですね、ムフフ」


「な、何を言っているんだ、単なる友達なんだ。友達が悩んでいたから、解決策があれば教えたいなと思っただけなんだ」


 臭いのは血抜きをしていないのではないか?うちはきちんと血抜きするように料理長達に教えたからどんな肉でもうまいんだよ。ロナウド兄様は食べ専だから、わからないよなぁ。


「ソーセージを食べましょう!」


 臭いのか。後で意を決して持って来たソーセージを食べましょう。


 ソーセージを食べる前にジュリからジュリが初めて剣で倒したツノウサギのツノをもらった。えっ、転生後、俺が倒せなかったツノウサギ、5歳のジュリが倒したの?へ?


「ありがとう、ジュリ。何かこれで作ろう。ジュリも一緒に考えてくれる?」


「うん?」


 かわゆし。強いけど可愛い。


 さてソーセージはどんな味?




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