90 母様が帰ってきたけど、公爵家次男フレッド様?
母様達が寄親の公爵家から帰ってきた。若干疲れたような気がする。
母様が腕を広げたのでその胸に飛び込んだ。
「おかえりなさい、母様。お疲れ様です」
「もう、本当に疲れたわよ。ほら顔を見せて。見ない間に男の子らしくなったかしら」
「母様、そこは男らしくではないのですか?男の子らしくなんて言ったら、今まで僕は女の子っぽく見えていたのですか?」
目を逸らすな。わかっている、ドレスを着せたら女の子でも通じることは知っていたよ。あえて言わなかったのに。
「母様、それではこれから俺と言って良いですか?」
「それはダメよ。僕にしなさい」
はい、わかりました。この件はそれ以上は何も言えない。
「公爵家はどうでしたか?」
「気を遣ってしまって疲れたわ。ただ、公爵家は私のことを親身になってくれた唯一の貴族なの。今回の献上品などで恩返しが少しできたかしらね。ただ、領地が、と言ってルークは帰ってしまうし心配したわ。魔鳥が来て事情を知ってホッとしたけど。やっぱり我が家が一番良いわ。我が子の可愛い笑顔が見れるのですから。とこらで、ケビン、あの家はなぁに?帰ってきてびっくりしたわ」
「すみません、社員寮です。イーサン兄様がご学友を魔道具研究施設に呼んだのですが、宿泊場所は施設ので雑魚寝だったり、ご家族を街の宿屋に滞在させていたと言っていたので、至急、単身寮と家族寮を作りました。辺境伯領ですでに家を作っているのでさほど苦労なく建築できました。単身寮は食堂と温泉完備にしました。あと、屋敷の従業員も単身寮に移ってもらいました。ダメでしたか?」
「えらいわね、ケビン。働く者達のことを考えるなんて。他の領地などは働かせるだけ働かせて低賃金や休みがないのが現状よ。ここは待遇がいいと言われてしまうわね」
そうだ、あのことを言わなければ!
「母様、今度長老達がお酒を飲みに来るらしいのです」
「あら、そうなの?新酒狙いかしらね」
「正解です。それでですね、海精霊の長老様が来ることは確定しているのですが、その他に火精霊、風精霊様も来るかもしれないということです」
「海精霊様の長老?海精霊?そういうのもいるの?」
「いるらしいです。ブラッドがそちら方面でブラッドがイーサン兄様達と飲んだお酒の匂いを嗅ぎつけて、今度一緒に来るらしいです」
「あ、え、そうなの。いらっしゃるの。いっぱい料理や食べ物、お酒を用意しないとダメかしらね」
母様、順応が早いな。
「一体どのくらいの精霊様が来るのかしらね?他の種族の精霊様もいるのかしら。来るかしらね」
母様までやめてください。フラグは立てないようにお願いします。
「そうだ、母様に相談ですが、ロナウド兄様の商会の美容部員などの接客をどういたしますか?母様主導で所作を教えてくださいますか?僕は流石に教えられませんので。ランドルフ様のお母様のメメル様と一緒にお願いしたいです。メメル様は伯爵第二夫人だったのですが、ランドルフ様と一緒に絶縁してきたそうです。ここで美容部員の指導やピアノが上手いのでピアノを弾いてもらうことにしました。一度お会いになっていただけませんか?」
「まぁ、あの伯爵の第二夫人。かなりご苦労したのではないかしら。絶縁したなんて勇気がある方ね。そうね、ガゼボ?でお茶をしましょう」
母様達がボールドウエッジ公爵家から戻ってきたが、なぜか公爵家フレッド様と奥様アンジュ様が一緒にやってきた。母様が苦笑いをしている。
フレッド様が父様に挨拶しているのを、僕は隣で聞いていた。
「フォーゲリア伯爵様、私、ボールドウエッジ公爵家次男フレッドと申します。こちらが私の妻のアンジュです。私は馬車やお酒に感銘を受け、ぜひフォーゲリア伯爵家で働きたいと思いやってまいりました。どうか雇い入れていただけませんでしょうか?得意なものは交渉です。公爵家や他の貴族達の窓口になり、無理難題を跳ね除ける盾になります。どうかお願いいたします」
「フレッド様、我が領地は秘匿にすることが多すぎるのだ。公爵家次男の方に契約魔法などはできません。申し訳ないのですが、格上のフレッド様を雇うわけにはいきません」
フレッド様は被りを振って必死に説き伏せようとしていた。
「あの馬車を拝見し、あれはこぞって貴族達がやってきます。私が貴族たちの盾になります。ここにはメルシー様もいらっしゃいます。ルーク様が矢面に立たず、公爵家の私が窓口になれば、強く言われないと思います。お酒もそうです。ここには他で類を見ないものが多いと感じました。多分魔道具などあの施設で未知なるものを作成しているのかと推測しました。どうか、私をフォーゲリア家で雇ってもらいたいです。お願いします」
父様は母様のことを言われると弱い。それほど母様を大事にしている父様なのだ。フレッド様が矢面に立ってくれるのでお任せだ。僕も任せるぞ。丸投げだ。そしてフレッド様が商会の一員になりました。
その後、フレッド様に精霊たちを紹介し、これは本当に秘匿することが多すぎると頭を抱えていたのは言うまでもない。




