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86 ブラッド始動(ブラッド視点)

 ブラッド視点


 なんなんだよぉ、この領地は。


 まず、俺がお仕えするケビン様、小さい子供だった。大丈夫なのか?俺、騙されているのか?


 イーサンにまず案内されたのが、単身寮という二階建てのアパート。食堂、温泉?というものが完備された寮。それだけではない。寮の一人一人の個室。これがまたベッド、収納、トイレ、お風呂、簡易調理器具がついていた。これだけでも高待遇だよ。こんな寮ないよ。これがあのケビン様が作ったという。マジで!


 それから温泉?に入った。なんだか疲れが癒やされるんだ。この温泉が寮にも設置されているなんて嬉しい限りだ。街にも大きな温泉施設があるらしい。今度行ってみたい。街に行くのも貸し馬車も出してくれるという待遇だ。


 それからこの領地には大きな酒蔵がある。何種類もの酒を作っているそうだ。


 そちらの施設に飲む場所がある。今回はそこで飲むことになった。


「では、ブラッド、ようこそ、フォーゲリア領へ。来るのが早かったよ」


「イーサンとランドルフから手紙をもらってすぐ出てきた。両親や兄には落ち着いたら手紙出すと言って家を出てきた」


 いてもいなくてもいい立場、穀潰しでめんどくさい俺がいなくなっていいのだ。それほど景気のいい領地ではないと説明した。


「俺は爵位は捨てて、母と出てきたんだ。イーサンの話を聞いて伯爵家と縁を切った方がいいと思ったんだ。今は母の姓を名乗っている」

 ランドルフは爵位を捨てたのか。確かにここは発展する。自分が働いていることで、そちらから集られても困るな。うちの親や兄達それほど権力に執着していないがそこは保留だな。


「俺は幼い兄弟たちがいるので仕送りをしているが、この前の面談で家族を呼んでもいいと言われた。その際は家族寮を建てるし、扶養手当も出すから大丈夫だよ、と言われたのだ。こんな高待遇なところはない。本当に呼んでいいのだろうか」


「ルーティー、家族を呼んでも大丈夫だよ。家族寮をケビンに作ってもらうからさ」


  イーサンは簡単にいうけど本当に家族寮作ってくれるのか?すごくないか?


 ルーティーは平民だ。王都の学園を平民枠で入学。それほど優秀なんだ。ただ入学しても平民というだけで、貴族どもは馬鹿にしていたが頭はお前らよりもいいんだよと思っていても、俺も子爵の息子。それほど大きく言えない立場だった。言えばいうほど当たりが強くなるから、近寄らないことが一番。


 だからこいつらとつるむことが多かった。それほど気楽な仲間達だった。


 セドリックも自領に戻り、商会で会計をしていたがそこの奥方に迫られ、不倫をしていると根も葉もない噂を立てられ、辞めようとしていたところにイーサンから話が来たから飛びついたと言っている。


「イーサンから連絡来た時、心身ともに疲れ切っていたんだ。今だからいうが、その時イーサンの家は貧乏伯爵だと言っていたのに大丈夫か?と不安があったんだ。だけど、今よりはいいかもしれないと思い、ここに来たんだ。来た時目を疑ったよ。どこが貧乏なんだ?と。領地に広がる小麦、大麦、野菜類、そして酒蔵がある。街は活気にあふれている。領地を間違えたのかとさえ思ったほどだよ」


 セドリック、お前の言っていることはわかる。マジ、どこが貧乏なんだよって基準が違うのかとさえ思ってしまったよ。


「それは俺も帰ってきた時に思ったよ。弟のロナウドと帰ってきたのだが二人であれ?うちの領地か?って」


 イーサンは当時のことを笑いながら話していた。それからが忙しすぎて大変だったと言っていた。姉上の嫁ぎ先の辺境伯領でスタンピードが起こり、その支援に行ったりもしたと。


 特に忙しくさせる要因はケビン様の無茶振りによる魔道具作成ということだ。


 一つのことが終わるまもなく次のことを言われるそうだ。もしくは複数言ってくるらしい。


 まだロナウド君、いやロナウド様だな、が商会の準備をしているので、それが稼働したらもっと忙しくなる可能性があるということだ。まぁ、この施設や温泉施設を見ても、見たことがない魔道具があるので知れたら反響が大きいだろうと予想はつく。


 娯楽のボードが楽しすぎる。俺はしょうぎというものの方が好きだが、リバーシは小さい子から年寄りまで遊べるものだ。これを木工部門で量産しているということか。


 本当に次から次へと物作りをしている領地だ。


「この酒美味いな。初めて飲む酒だが、深い味わいだな。喉越しにカァってくるのがいい」


 俺が飲んでいるのは琥珀色のういすきーというものだ。みんなそれぞれ違うのを飲んでいる。イーサンはビアーというエールよりうまい酒、ランドルフはワイン、ルーティはうめしゅ?それを水やお湯やソーダ?で割って飲む、よくわからない酒、セドリックはショーチュー。これもうめぼし?レモーンなど入れて飲むとうまいと豪語した。ここの酒はわからない。でも、ボトルキープしておけばここで飲めるし、今開発中の自動販売機、ドリンクバーというものでお金を入れれば飲める魔道具を作るらしい。あとは新酒時期は樽ごともらえるということで、領民達とっては嬉しい行事みたいだ。その樽を数年や数十年寝かせればより深みのある酒になるらしいが、みんなすぐ飲んでしまうのでないらしい。それは今後買えばいいと思っている領民達。領民割引きがあるからいいのだ、安心しているみたいだ。ここの領主一家は皆領民を第一に考えている、良い貴族だ。


「イーサン、明日からケビン様に仕えるが何を注意すれば良い?」


 みんな、口々に言う。

「無茶振りさせないで!」

「作ったあとの余韻期間を長く欲しい」

「ケビン様を執務室に囲って欲しい」

「おやついっぱい欲しい」

「アイマスクとマジックバッグを作ってもらえるけど、アイマスクを変な目にするなと言った方がいい」


「ちょ、ちょっと待て。なんだよ、マジックバッグ?作れるのか?え!くれるのか?」


「あははは、ケビンがいうには従業員特典だそうだ。アイマスクは休憩の時に短時間で疲れや眠気が取れる。仕事しろってことか?」


 イーサンは笑いながら言っているが規格外すぎてよくわからない。


「マジックバッグの容量を聞かれるから、大きくと言っておけば大きいのが作ってもらえるぞ。ルーティなんて、あははは、一軒家が入れるバッグなんて冗談で言ったら、外にある家族寮の戸建が入れるぐらいの容量を作ってきたよ」


 規格外すぎて、開いた口が塞がらない。ここにきてから驚きの連続だ。これは普通じゃない、普通じゃないのにみんなが普通なんだ!


「お前ら、おかしいぞ。普通じゃないのに全然驚かないじゃないか!」


「初めは驚いたよ。だけど驚き疲れしてしまったんだ。だから、またケビン様のか、とみんな諦めなのか慣れなのか、恐ろしいな」


 セドリック、お前は現実主義者ではないか、おかしいと思えよ。


「まぁ、ブラッドが一番ケビン様に近いところにいるから頑張れ。たまにはこちらのことを考えて、ブラッドがケビン様を抑えてくれ。頼むぞ。愚痴は聞くからここに飲みの来ような」


 みんな酒のことで盛り上がっているが俺がケビン様を抑える?


 ん?抑えられるのか?俺?



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