85 俺に従者と事務官?
朝食後、父様呼ばれた。
「失礼します。父様、お呼びですか」
父様、兄様達、トリニティ、兄様の従者ディーンそして知らない男性。イーサン兄様やロナウド兄様より年下のような気がする。
「ケビン、紹介しよう。お前の従者になるルーアンだ。ルーアンはケビンの10歳上になる。トリニティの一族の者だ。従者や護衛としての訓練をしている。これからはお前の手となり足となりそばに仕える。ケビンも責任ある行動を取るように」
「あのー、父様、以前言いましたが僕の人生はこの家で脛を齧って、のんべんだらりと生きていくので、従者は必要ないと思います。従者の方がかわいそうです。えーと、ルーアンさん、一緒になって、ここで脛を齧って生きていくことになっちゃうよ?いいの?今、ノーを突きつけた方がいいと思うよ」
ブフッ、くくくく。失笑が聞こえてくる。
ゴチン、痛!
「ケビン、お前なぁ。どうしていつもそう言うことを言うのだ。全く。すまなかった、ルーアン。ケビンはこういう奴なんだ。剣術は血を見るのが嫌で、突拍子もないことを考え出すのだ」
「聞いております。クロスボウという殺傷力の強い弓を考えたり、波動剣でしたか?剣に魔力を纏わせて切る、恐ろしい戦術」
目を大きく見開いてルーアンを見てしまった。恐ろしい戦術って何?
「ケビン、お前は動かず楽に戦いたいのだろうが、遠くから攻撃ができること自体すごいことなんだからな。まぁ、ルーアン、こんな奴なんだ」
「聞きしに勝る神童ですね。心してお支えいたします」
「えーと、ルーアンさん、やめたほうがいいですって。強く強く辞めた方がいいと進言します」
「大丈夫です、ケビン様。ご用命がございましたら、このルーアンにお願いいたします。これからはルーアンとお呼びください」
俺は必死に難点をつらつらと並べたて諦めるように言った。
「それではよろしく頼むぞ、ルーアン」
「はっ」
父様とトリニティとルーアンさんで話が進んでしまった。
執事の礼を綺麗にしている。トリニティもそんな感じ。この一族はやはりなんとかの軍団か?
しばらくすると部屋の外がバタバタしている。どうしたんだろう?
「旦那様、イーサン様失礼致します。今、外壁の門にイーサン様のご学友がお越しになっております。お名前はブラッド様と仰る方です。いかが致しましょうか」
だれ?イーサン兄様のお友達か。また魔道具関連の人かな。人員が増えるのはいいことだ。色々作ってもらえる。
「ブラッド、早すぎる。昨日魔鳥で手紙を送ったばかりだ。だいぶ馬に無理をさせたのではないか、全く。ケビンの事務官としてきてもらったのだよ」
「またまたぁ、事務官なら父様でいいではないですか。そうすれば僕が働かなくていいではないですか。父様の事務官で決まりです」
「ブラッドは優秀なんだよ。ただ自分が認めた人にしか良い顔はしない。会うだけ会ってみてよ。頼むよ」
兄様の顔を立てる意味で会うことにした。
応接室で待っていたブラッドさん。ヤンチャそうなライアン丸のような風貌。
「待たせてすまない、ブラッド。こちらがフォーゲリア伯爵家当主だ。私の父だ」
「お初にお目にかかります。私は東地域 ガーネイル侯爵が寄親、イグリシアート子爵の次男、ブラッド ルテリオ イグリシアートと申します。この度イーサン様にお声がけいただき、こちらに参りました。よろしくお願いいたします」
しっかりとした口上だ。
「東地域の出身ですか。遠い所から疲れたでしょう。夜通し走って来たのですか?」
「はい、休憩を少し挟みましたが、はい、急いできました」
「今日はゆっくり休んだ方がいいのではないか?」
「フォーゲリア伯爵様、私はここに仕事に来ました。すぐにでも仕事がしたいです」
えっ、そんなに仕事をしたくないけど。
「くくくくっ、ケビン、顔が働きたくないって言っているよ。ブラッド、これが手紙に書いた弟のケビンだ」
「ケビンです。よろしくお願いします。そしてガツガツ働かなくていいですよ。ゆっくりしましょう。お茶して、お風呂に浸かって、疲れを癒した方がいいですよ」
「そうだな、ブラッド。温泉に入ろう。みんなを呼んでくるよ。今日は語り合おう」
うんうん、今日はゆっくりしよう。
「ケビン様、ケビン様がゆっくりしていると書類が増えていきます」
トリニティ、なんでそんなことを言うのかなぁ。父様に任せればいいんだよ。
「旦那様も帰って来たばかりなので、体を休めないと体を壊してしまいますよ。メルシー様が悲しまれます」
トリニティに先越された。くっ。
「トリニティ、ケビンにいじわる言うな。この家を紹介する意味でも今日は仕事保留でいいのではないか?明日からケビンに頑張って貰えばいい」
結局、俺がやるのかよ。妹のところへ癒しを求めに行こう。
「では、ブラッド様、明日からやりますか?やるのですか?やりたくないなぁ」
みんな大笑い。
「ケビン様、私のことはブラッドとお呼びください。明日から一生懸命働きます。よろしくお願いします」
ブラッド、今日来たばかりなのにそんなに働かなくていいんだよ。ゆっくりやろう。
「兄様、ブラッドに沢山お酒を飲ませて、起き上がれないようにしてください」
「残念だが、ブラッドは酒が強いんだ。ドワーフ並みだ。だから二日酔いで仕事というのはないよな?」
ニコニコしながら頷いているよ。
「げっ。では明日の日課、散歩、剣術など一緒にやります。体力増強は大事です。明日、庭に集合です」
「かしこまりました」
俺はルーアンを連れてルーナに会いに行った。父様は温泉に入って綺麗になってからルーナと戯れるらしい。
そうだ、ランドルフさんのお母様に来てもらってピアノを弾いてもらおう。あとで話を聞きに行こう。
「ルーアン、ランドルフのお母様に会いにいくので、いつが良いか先ぶれをしておいてほしい」
「かしこまりました」
ルーナの部屋に入ると姉様とゼーファン義兄様があやしていた。いい雰囲気ではないか。
「なぁに、ニヤニヤして’
「いえ、新米パパさんとママさんって感じでいいなぁと思っただけです」
「もう、またケビンはからかって」
真っ赤になっている姉様。
「でも、抱っことか慣れて安定していますね。ルーナも安心し切ってますよ」
「ふふふっ、そうでしょう。ルーナは泣かなくなってきたわ。オルゴールの音が美しいのよ。あら?その方はどなた?」
2人が俺の後ろに控えているルーアンを見ているので紹介した。
「ルーアン、こちらは僕の姉様と義兄様です。こちらは僕の従者になったルーアンです」
「ケビンに従者!お守り役?」
「ひどいです。お守り役ではないです。僕の代わりに仕事をしてくれるかもしれない従者です」
「ケビン、違うと思うわ」
「ケビン様違います」
「ブフッ」
「僕はそう思っていたんだけどなぁ。でも、イーサン兄様のご学友で事務官になる人が来たの。名前はブラッドさん。その人に丸投げすればいいかな」
「それも違うわ」
「全く違います」
「あははは」
「ルーナ、酷いんだよ。みんなが僕を働かせるんだ。まだ8歳になのに。あっ、もうすぐ誕生日だ。誕生日ケーキ作ろう。料理長に頼まないと」
ルーナに愚痴を言う俺。ルーナは俺の髪の毛を引っ張って楽しんでいる。楽しそうだなによりだ。
しばらくして父様にルーナを取られた。癒しだよ、ルーナは。癒しの魔力を垂れ流しではないのか?心配だ。
ルーナに柔らかおもちゃを作ってあげるからね。もふもふぬいぐるみでもいいよね。




