78 イーサン兄様にお願い
早速イーサン兄様に漁村を持っているお友達の話を聞くことにした。
「イーサン兄様、少しお話いいですか?」
「ん?厄介ごとか?」
「違いますよー、何言っているのですか。ひどいです。だいぶ前に漁村が領内にある友人の話をしたと思うのですが、魚介類が食べたいので紹介してください」
「魚介類を食べたいから紹介して欲しいだって?この前は貝殻が欲しいからだったけど、そうだなぁ、全く栄えていない、貧しい漁村だと言っていたんだ。ショーンとライザも領民を飢えさせないように一丸となって頑張っているみたいだがうまくいかないみたいなんだ。ショーンとライザは双子の子爵家の子供だ。ショーンとは寮の部屋が隣同士で仲良くしていたんだ。双子の妹のライザも時々一緒に勉強などしていたんだ。ライザにここの料理を食べさせてあげたいよ」
ん?ライザに食べさせたい?ショーンではなくライザ、ほー。それにライザ嬢ではなくライザ。
「何、ニヤニヤしているんだよ、ケビン」
「いえいえ、イーサン兄様はライザさんという方と仲がいいのですか?」
「ち、違うから。ショーンと仲がいいから必然的に一緒に行動を共にすることがあるだけだよ。何言っているんだよ、ケビンは」
真っ赤になりながら弁解しているイーサン兄様。ムフフフ、兄様とライザさんはお互いどう思っているのだろう。ただの友達か?片思いか?あまりつっこむと怒られそうだし、相手の気持ちがわからないから、希望的、楽観的なことを言ってはいけない。気持ちはデリケートなことだから煽ることはしない。自然の流れで、放っておこう。
「お友達の領地はどのあたりなのですか?うちと真逆な位置の領地ですか?」
「いや、魔導列車で行けば早いよ。うちより東側に位置する海沿いの領地なんだ。東地域はフレッド様の奥様アンジュ様のご実家オルコット侯爵家だよ。一度遊びに行ったが何もなかったよ。魚は骨が多かったから、食べ慣れていないと食べにくかったよ」
「僕は王都よりそっちに行きたいですね」
「ケビン、王都に来たついでに遊びに行ってもいいな。ラ、あっいや、ショーンに久々に会いたいよ」
さっき、ラと言いましたね。ぜひ訪問いたしましょう。
「イーサン兄様、これ、追加の作って欲しいノートです。見ておいてください」
「また増えている。おるごーる?ろくおんき?また聞いたことのないものだな」
「これはルーナのためです。兄様。ルーナが絶対喜びます」
「ルーナのためか!わかった、考えるよって、本当にお前、大変なのわかっているか?ついこの間はシャワー、ポンプ、蛇口を考えたのに、今度はおるごーる?ろくおんき?このおるごーるはすぐ作れそうな気がするが、ドルトンにも説明してくれ」
「わかりました。どんな音楽がいいか考えておきますね」
「おるごーるもろくおんきと何に使用するのかわからないけど」
ルーナの脳と安らぎのためのものなんだよ。
次の日、魔道具施設にやってきた。
「ケビン様、また作って欲しいノートに品物が増えたのですが、今度はどんなものですか?」
「一番早く作って欲しいのがオルゴール。錬金で金属を作ってきたのでこれで作ってね。まずゼンマイ部分。これで自動的に回る装置。シリンダーオルゴールでいいかと思ったんだ。突起がついたドラムが回転して突起が振動し音が出る仕組み。この音が出る部分を曲が流れるように作るのがオルゴールというものなの」
「円筒に突起があり、それが回ることにより突起が音が出て曲が流れるということが。で、ぜんまい?というもので回して自動に円筒が回るという仕組みか。なるほど。魔道具で回転させればずっと音が流れるということか。蓋をすれば音が鳴り止む、ふーむ、ドルトン、どうだ?イメージできたか?」
イーサン兄様、理解が早いんだけど。そしてドルトンさんと一緒にもう作り始めたよ。
念の為作って欲しいノートに書いてあるものを説明した。訳のわからないものでは興味が出ないから、説明して興味をひこう。
「ケビン、魔導車や魔導二輪車は壮大なことだ。これはじっくり考えていきたい。魔導に関係ないじてんしゃ?ならなんとか考えていけそうだ。それに魔導簡易コンロ?これも火魔法を使わなくても料理ができるのか?魔石でコイル?に熱伝導、ふーむ。本当にケビンはいろいろ考えるな。本当に早く王都の仕事の引き継ぎをしないといけないな。ショーンのところに行くのも遅くなってしまう。ケビン、ショーンのところに行くのをもう少し待っていてくれ。手紙も出しておく。それから日程調整しよう。私が王都に行く時に、ケビンも行こう」
「王都ですか、全く興味はないですが、市場調査がてら行ってもいいですね。どんなものを作っているか知りたいですね」
「そうか、そうか。ロナウドも王都の支店の調査をしたいと言っていたから一緒に行こう。ケビンがどんな反応をするか楽しみだ」
王都か。王都のタウンハウスへ行ったことがないから、社会勉強でいいか。今の僕の知識は領内だけだし、たぶん非常識なことを数々しているのかな?この世界の常識を知るためにもいいかもしれない。
王城なんてヨーロッパ諸国のような作りだろうか、それともタージマハルのようなものか、はたまた独創的なものなのか、日本の城と同じような感じなら面白いなあ。この世界の城はどんなものだろう。楽しみだ。




