71 姉様夫妻の屋敷とガゼボ
姉様達の簡易屋敷とガゼボの場所は決まった。姉様達の家は簡易と言っても普通の家だ。貴族の屋敷にしては小さい二階建ての邸宅。2階が姉夫婦の広々空間の寝室。吹き抜けのリビングダイニング。お風呂は温泉、シャワー完備。念の為調理場もあり。あとはメイドさん達の部屋あり。
ガゼボもガラスが多めの明るい空間。刺繍のカーテンやレースのカーテンなどはもちろん僕のお手製。まずいなぁと思うのはこの世界のガゼボや庭園を俺は知らないってこと。そもそもガゼボとはなんぞやなのだよ。僕が作ったのは全て前世の記憶。僕が作ったガゼボと言っているものは、ネズミのランドにあるクリスタルなんちゃらなのだよ。家でさえ展示場の家のパクリだ。庭園もフラワーパークやなんちゃら村などにあるものを作って並べたものだ。全てパクリなのだ!バラはこの世界にあるのだろうか?母様に作ってもらったから、有無はわからない。植物図鑑は忙しく読んでいなかった。
頭に思い浮かべた造りを作ったのはいいが、自分でもやり過ぎた感はある。振り向くのが怖い。みんなどんな表情をしているのだろう。
「いかがでしょうか?ガゼボ?を作ってみました」
あー、みんな呆然とみている。兄様達なんて口をあんぐり。
「ケビンや、これがガゼボ?お前一体何作っているんだ。これはすごい建物だよ。こんな建物見たことないよ」
兄様達が呆れている?やっぱりこの世界にないのか。
「お、お祖母様いかがですか?このような建物にしましたが、お茶会などできたらいいかと思い作ってみました」
嘘八百を並べ立てた。
「ここでお茶会なんて素敵だわ。このガゼボ?なら自慢できるわ、うふふふ」
「エメリア様羨ましいわ。この花園にこのガゼボ?はロマンチックだわ」
ガゼボにはてなマークがつくよね、みんな。やはりこれはガゼボとはいわないのか、あはは。まぁ作ってしまったものはしょうがない。このまま押し通す。
「ケビン、我々のお酒を飲むところも頼むよ」
「お祖父様、酒蔵に一番遠い所に作りましょうか?」
「ケビン、そう意地悪言うなよ」
「ケビン、そうしてちょうだい。一番遠いところでいいわ」
お祖母様の一言で決まる。お祖父様達が土下座をしそうなほどの勢いでお祖母様には頼み込んでいる。
「た、頼む、エメリア。なんとか、なんとか酒樽の近くへ頼む。試飲などして出来を確認しなければいけないのだ。酒造りをする者だって、休憩場所や試飲する場所が欲しいはずだ。そうだ、休憩所のような施設でいいのではないか?」
そういえば、休憩室を全く考えていなかった。酒造りの場所に少しスペースがありそこに椅子とテーブルが置いてあるだけだった。あとは事務所があるだけだ。
「休憩室を作っていなかったですね。みんなが頑張ってお酒を作っているのに、ブラック企業真っ青だ!」
「ケビン、またよくわからないぶらっくきぎょう?ってなんだ?」
ロナウド兄様のいつものツッコミ。
「ブラック企業というのはですね、従業員を酷使させ、心身共に疲弊させて働かせることです」
「ケビン、それはまずいではないか!うちで働く者たちは快適に仕事をして欲しいからな。休憩室と試飲できる施設が欲しいな。エメリア、従業員のためだ。施設を作っていいかな?」
従業員のためと前面に押し出すお祖父様。策士だ。お祖母様の意向次第だ。
「あなたはもう、はぁ、わかりましたわ。この領地で働く者たちは快適に働いて欲しいので許可しましょう」
「お祖母様、本格的に飲める部屋は酒場みたいにお金を取りましょうか。飲みたい人はそこに行ってもらうというのはいかがですか」
「まぁ、お金を取るのですか?でもどうやって」
「ボトル、樽をキープという一本、一樽いくらという価格を設定し、その人専用の酒を置いておくのです。そこで飲める時間は決められていて、時間が来たら強制的に施設から出される。お祖父様や父様達もずっと飲むことはできないという施設。そうすれば領民の目がありますから、そんなにガバガバ飲まないでしょう?一ヶ月に一度ぐらいは飲み放題の日という機会は作りますが、どうですか、お祖父様達。お酒の管理はお祖母様と僕がやりましょう。きっちりと本数確認をしていきましょう。チョロまかすなんてさせないですよ」
「ふふふっ、ケビンいいわね。お酒の本数の管理をしていきましょう。そして自分で飲みたい人は買ってもらうことにしましょう」
「で、イーサン兄様、相談です。お金を入れれば、お酒が出てくる装置を作ってください。一本や一樽ではなく、コップ一杯だけ飲みたい人もいるでしょう。それを持ち帰りたい人もいるでしょう。量り売りできる装置を作ってください」
「はぁ?お前また丸投げか?どういうものなんだ」
僕は動作でお金を入れる真似をした。
「コップや持ち帰り用の瓶を置く、お金を入れる、お酒の種類のボタンを押す。そしてお酒が出てくるというものです。氷置き場は隣にある、というかんじです。あと個人の酒樽に本人登録できる装置をお願いします」
ドリンクバイキングもしくは自販機戦法。
「というかんじです、と簡単にいうお前は全く。はぁ、おもしろそうだから考えてみるよ」
「イーサン、早急に頼むぞ」
それができるまでは、支給制にしよう。マイボトルキープの棚を作ろう、そこも勝手に開けないように鍵を作ってもらおう。
「ドルトン、鍵を作って欲しい。それをお祖母様と厳重に管理するよ。でも、お祖父様、父様達、いっぱい買い締めると領民に示しがつかないのでやめてくださいね。もちろん、今まで通りお酒ができた時はみんなに酒樽を渡すので、そんなにお金は使わないと思います。みんなで飲みたい時に酒場でお金を使ってください。もちろん持ち寄りでその酒場を使って飲み会をしてもいいわけですから、やっぱりみんなで飲むのは楽しいですからね」
「ケビン、お前、飲み会なんて知っているのか?」
またもやロナウド兄様のツッコミ。ツッコミ担当だよなぁ。
「あっ、楽しいのだろうなぁと思っただけですよ」
これからその施設を作るとして、ガゼボ?の中を案内しよう。
「ところで、ガゼボの中を案内したいですがどうしますか?」
お祖母様たちはうっとりと庭園とガゼボ?を眺めていた。




