69 妹の名前は
僕は昼御飯を食べに食堂に行った。男性陣が一緒に付いてきた。赤ちゃんがいる部屋は女性陣達の話で花咲いていた。僕たちが入る隙はない。僕は腹が減った。お腹がグーッとなってしまって恥ずかしい。
「ケビン、ご飯を食べてきなさい。昨日の魔力消費してお腹が余計減ったでしょ」
「はい、お腹空いたので食べてきます」
「あっ、俺も行くよ、話がある」
ロナウド兄様の話。あー、赤ちゃんグッズだよね。
そして男性陣がぞろぞろと僕についてきたということだ。
「ケビン様、昨夜はお疲れ様でした。いっぱいお昼を用意しておりますので、おかわりしてください」
「ありがとう、トリニティ。お腹ペコペコだよ」
それからエッグベネディクトが出てきた。僕的にはイングリッシュマフィン。母様はパンケーキのエッグベネディクトが好きなようだ。
いつかはスモークサーモンを入れたエッグベネディクトを食べたい。海の物、どうにか取り寄せたい。
「父様、名前決まったのですか?」
「いや、まだなんだよ。メルシーが決めかねているんだ。みんなの意見を聞いてもピンとこないらしい。もしケビンがつけるとしたら何?」
「僕ですか?夜、月が綺麗だったからルーナかなぁ。もしくはルナ」
みんなびっくりした顔をしている。変なこと言ったか!
父様は部屋を飛び出していった。母様のところか?
「ところでみんなはどんなに名前を選ぼうとしたのですか?」
「ん?まぁ、決まるまでのお楽しみでいいのではないか、なぁ、みんな」
「そうだよ、決まるまでのお楽しみだな」
みんなどうしたんだ?みんな、自分の思う名前を伝えたのではないか?結局名前何にするのだろうなぁ。楽しみだ。ロナウド兄様と赤ちゃんグッズの話をした。なんといってもおむつだろう。おむつと言ってもスライムゼリーをシート状にしてそれを布にあてただけの簡易的なものだ。スライムゼリーが汚物を吸収するので不快さは軽減されるだろう。商会で赤ちゃん用品を少し売り出し様子を見ることにする。お母さん方の睡眠時間の確保に繋がればいい。その分、赤ちゃんが起きていると時に愛情を注いでほしい。段々商会が大きくなっているように思えるが大丈夫か?ロナウド兄様も考えがあるのだろう。人材を集めているようだしさすが僕の兄さま方は優秀だよ。
「料理長、今日も美味しかったよ。お腹いっぱいになった、ありがとう」
料理長も生き生きと料理をしている。このエッグベネディクトだって、初めはうまくいかなかったのが今や色々アレンジして美味しいものになった。さすが料理長だ。
僕が作って欲しいレシピを1いうと100以上の成果が出るのが料理長以下うちの料理人達。うまうまなのだよ。
そうこうしている間にトリニティがみんなを呼びにきた。
母様のいる部屋でみんなが揃った。
母様が赤ちゃんを抱っこして待っていた。産まれて間もない妹。みんなから愛情を注がれている。お兄ちゃんもいっぱい可愛がるよ。でもワガママはだめだよ。悪役令嬢なんかになっては困るからね。
母様の兄、王太子様の子供や第二王子の子供など王族側が妊娠したタイミングで他貴族の出産が多いらしい。
王太子様の第一子がイーサン兄様と同じ歳、その下が女の子で、僕に年が近いのは二個上の男の子、そして、数ヶ月前に産まれたのは女の子、第二王子の子供は男の子だということだ。盛大に王都で祝われたらしい。俺たちには関係ないけど。
今回も、妹の同級生は多いだろうと予測される。イーサン兄様の時も多かったらしい。タイミングが悪かったのだ。
それよりも妹と同じ歳では、王都の学園で妹がいじめられてしまうかもしれない!妹が王都に行かないで教育できるような場所を作ろうか?王都の学園に負けない学校を作ろうかな。そこは専門学校みたいに職業に特化した学校。
「ケビン、どうした。眉間に皺が寄っているぞ」
「すみません、考え事をしていました」
「また、よからぬことを考えていたのか?」
「ひどいです、父様。あとで話します」
「もう少しゆっくり考えようではないか、ケビン。妹が産まれたばかりだ」
みんな頷いている。まぁ、計画だけしておいて考えればいいかな。それより妹の名前。
「母様、名前決まったのですか?」
赤ちゃんを抱っこしてなんだか聖母様のような慈愛に満ちた姿。祈りたくなってきたよ。
「みんな、名前が決まったわよ。この子の名前は、ルーナ。ルーナにしたのよ」
えっ!僕がさっき言ったやつじゃん。
「ルーク、お父様がね、さっきケビンが言った名前を知らせにきたのよ。みんな、その名前を聞いて、これだと思ったのよ。ここにいるみんなも賛成なのよ。ルーナにしたわ。なんて神秘的な名前なんでしょう」
「母様達が考えたのはなんですか?教えてください」
「母様が考えた名前はアメリア、父様はエミリーと考えたのよ。この名前でいいのかなぁと思っていたの。みんなに名前をそれぞれ聞いたけど、一番名前でこれだと思ったのがルーナという名前。聞いたみんながルーナがいいと思ったのよ」
「本当ですか?母様。アメリアも、エミリーも可愛いですよ」
「でも、ルーナが一番落ち着くのよ」
「ケビン、姉様もルーナがいいと思ったわ。これよ!と思ったもの」
みんなが頷いている。
「あなたが母様とルーナを救ったのよ。ケビン、あなたがいなかったらどうなっていたのか考えるだけで怖いわ。逆子は母子共に危険と言われてきている出産だから、本当に感謝しかないわ。ケビン、妹だと言っていたけど、わかっていたのかしら?」
「母様、わかってはいないですけど妹が欲しいなぁという希望的観測です。妹、可愛いですね。母様に似て美人さんになりますね。父様、うかうかしていると嫁にすぐ行ってしまいますね。やりたくないですよね」
「嫁!ルーナは嫁なんかにやるものか」
みんなで笑い合った。親バカになっている。
お兄ちゃん、頑張るぞ。甥や姪にぬいぐるみや飛び出す絵本やふわふわおもちゃを作った経験を活かすぞ。そうだ、使わないピアノがあったから、子供の脳にいい曲を弾いてあげようかな、それともオルゴールだ!姪がぐずった時にオルゴールやピアノを弾いてあげたら眠っていたから、もしぐずったら弾いてあげよう。
録音機を作れば、弾いた曲が流せるじゃないか。これは作って欲しいノートにまた書いておこう。
傍でゼーファンお義兄様と姉様が手を繋いで寄り添っている。あっ、そうだ、家作らないとゆっくり休めないよね。
「姉様、すみませんでした。これから家作ります」




