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64 精霊様とドワーフ達

 ドワーフさん達が集まると騒がしいなぁと思ったらルガリオ達と一緒に戯れて輪をかけて騒がしくなった。


 ドワーフ三兄弟ギダンさん、ロゴさん、ビッツさん。このスティングレイ辺境伯領で鍛冶屋をしているドワーフさん達だった。三兄弟はドワーフ族の閉鎖的生活から飛び出してきた人達だった。


「うちにもドルトンさんという人がいるんだ。その人にいろいろ作ってもらっているんだ。ねっ、イーサン兄様」


「ああ、うちは魔獣討伐は頻繁にはないので、もっぱら魔道具を作ってもらうことの方が多いかな。でも防具や剣なども作ってもらっているよ」


 3人が何やら考えている。


「ドルトンとさっき言ったか?ドルトンは人間とドワーフのハーフで、腕はいいのだが、要領が良く自分で早く作ってしまうから、他の者達と協調ができなかったのだ。あいつがいるのか?元気にしているか?」


「ドルトンさんは元気だよ。イーサン兄様と魔道具や物作りしているんだ。とても優れた人だよ。知り合いなの?」


「ああ、弟のように一緒に過ごしていたが、ドワーフ族は閉鎖的だから、あやつは生粋のドワーフではなかった為か馴染めなかったのだよ。そうか、そうか、あやつはあなた方の領地にいるのですね?よかった、よかった」


 そうなんだ、三人はドルトンさんと兄弟のように育ったんだ。

「うん、奥さんと2人でうちの領地に移り住んでくれたんだよ。お酒造りも手伝ってくれているんだ。飲むのも多いけど」


 と、言ったところで、兄様達に口を塞がれ羽交締めにされた。父様はあちゃーっていう表情で片手で額を覆っていた。あっ、ドワーフ達にお酒の話はだめなんだよ!言っちゃった!


「なーにーー、酒造りを手伝って、そして飲んでいるだと!どんな酒を飲んでいるんだ!俺達も手伝えば飲めるのか?あ?手伝うぞ」


 素早い反応。聞き逃してくれなかった。何とかとぼけないと。ここはスルーするんだ。


「あっ、さっきの話は、あの、いえ、手伝ってはいないし、お酒なんて飲んでいないかなぁ、違う人と間違えたかもしれないです。あははは」


 眼力が強いぞ、ドワーフさん達。距離が縮まってきた。まずいぞ、逃れられない。兄様達に助けを求める視線を送ったが、首を振られた。父様は?だめか。頑張れケビン、負けるなケビン。シラを切るんだ。


「本当に本当に、酒造りをしていないのだな。飲んでいないのか。ドルトンは酒浸りになっていないのか?今度、ドルトンのところに訪問しよう。元気かどうか確かめないとな。いいだろ、坊主」


「えっ、えーー。でもここのお仕事があるではないですか。まだ復興が完全に終わっていないですし、騎士団たちや冒険者たちの防具の手入れはギダンさん達しかできません。領地を離れてはまずいのではないですか?」


「なぁに、弟子たちが育っているから平気だぞ。復興の見通しが立ったら坊主の領地に行くぞ。ドルトンに手紙を持っていってくれ。坊主はすぐ家を作れるから、ドルトンの隣にでも簡易な家を建ててくれ。金は出すから大丈夫だ。俺たちは声がでかいから普通の宿では迷惑をかけてしまうんだ。だから自分の家から出ないことがほとんどなのだ。ドルトンは嫁がいるということは迷惑はかけられん。頼む、坊主。坊主の領地に行ったら俺たちの宿泊する場所を作ってにほしい」


 トーマス様達が慌てた。


「おいおい、ギダン。まさか、そのままフォーゲリア伯領地に移り住むなんてことはないだろう?帰ってきてくれないとこちらが困る」


「領主様、大丈夫だ。弟子たちは優秀だ。まぁ、ドルトンの様子を見たら帰ってくる、たぶん。精霊様がいるところだから居心地がよかったら、うーんどうだろうか?わからん。その時の気分次第だ。わははは」


「確かに、今は弟子たちが活躍しているだろうが、やはりギダン達の方が信用できる。ルーク殿、帰るよう言ってくださいね。頼みましたよ」


「善処します」

 父様頑張れ。


「ケビン、わかっているな。仕事が増えるから、頑張れよ」


 ふぇー、お酒関係は父様とお祖父様だから、ドワーフ三兄弟の対応をお願いしたい。


「お酒関係は父様とお祖父様が担当なので、父様達が頑張ってください」


「いや、言い出したのはケビンだ。対応を頼むぞ」


 その夜は宴会になった。うちが作っているお酒を出したらドワーフ三兄弟は大喜び。


「こんな上手い酒が飲めるなら、早めにドルトンのところに行ってもいいな」


「そうだな、フォーゲリア伯爵様達が帰る時に俺たちも一緒に同行するか?」


「うんうん」


 なんだか怪しい会話が聞こえて来たぞ。目を向けると目が合い、ニカッとされた。ここのスティングレイ辺境伯領からうちに移り住まないよね?大丈夫だよね?


「ギダン達、戻ってくるよな。頼むぞ」


「こんな上手いお酒を作っているのだ。長居はしたいなぁ。そうだ、領主。この酒を頻繁に買えるようにすればいいのではないか?」


「そうなのだが」


 と言って父の方を懇願するように見ている。


「また契約を結びますか?」


  父様が折れた。うちとスティングレイ辺境伯との契約。これからどんどん出て来そうな予感。姉様がゆくゆくは辺境伯夫人になるのだよなー。親戚関係は続いていくのでいいだろう。姉様の生活が豊かに慣れば嬉しい。それでなくとも魔獣討伐で大変な土地だから、姉様の心の憂いになってくれればいいか。


「姉様、少しでもこの土地が豊かになってくれたら嬉しいです」


「ケビン、あなたって」


 姉様が涙ぐんでしまった。泣かせたいわけではなかったのに。それからありがとうと言ってギューっと抱きしめられた。


 辺境伯の女性陣も涙ぐみ、男性陣は父様達にお礼を言っていた。




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