61 女性陣の圧
1人気合いを入れた声を発した僕を見る面々。
「ケビン、何を気合い入れているんだ。何をする気だ?」
父様が僕の動向を見張っているよ。心配しなくていいのに。
「父様、心配しなくでも大丈夫です。この領民のために頑張るぞ、の気合いです」
「その大丈夫が心配だといつも口を酸っぱくして言っているのだが、はぁ、またやりすぎるのだろうなぁ、結局お前は。本当に全てが無かったことになるかもな」
それから、トーマス様が家が倒壊した人たちを呼び、今までの家の構造などを聞いてくれた。木材を用意し、土魔法士に、特に父様や兄様達にはレンガやタイルをいっぱい作ってもらった。強度も大丈夫だ。かなり魔力操作が上手くなったようだ。上から目線だな、僕。
木材が用意できた。さあ、やるぞ。木工大工スキルのランドさんと協力し、領民達の家を作っていく。ランドさんたちに木組み工法や梁、火打ち梁などを教えて、耐久性のある木造住宅を作っていた。大工スキルのある人はすごいなぁ。教えるとイメージが湧くらしい。
内部のテーブルやベッド、タンス、カーテンなどは俺が作った。これで精神的になものが払拭されれば安いものだ。俺のスキルだし。
奥様の意向を聞き、可愛いカーテンや丸テーブル。シックなカーテンと普通のテーブルなど様々な要望に応えた。僕はやりきったよ。
そして、あのお試しの家の改修。貴族仕様にお直し。パウダールームは豪華に鏡をつけてあげよう。自領での温泉施設の組子細工と同じようなデザインでランプを作ってみた。ご夫人達の意見を聞かないと!まずい、一棟作ってしまった。白亜の家仕様なんていいのでは?
一棟作ってしまったのでトーマス様達の意向を聞こう。
「すみません、トーマス様。一棟作ってしまいました。ご意見を聞いてから作ればよかったと反省しております。念の為、この一棟を見ていただいて、次の棟を作ろうかと思います。いかがでしょうか?」
「あ、ああ、領民達の家があっという間に出来てしまったのでびっくりしていたのだ。試作で作った家の改修をすでにしてあるのか?本当にすごいスキルだな。では、案内して欲しい」
それから、またゾロゾロと改修が終わった家の内覧会。
「何か不便やもう少しこうして欲しいという要望がありましたら言って下さい。私はこのソファーで座って待ってます」
「そうだな、ケビン君は働き詰めだったな。すまなかった。お菓子でも食べていてくれ。ロレイン、ケビン君にお茶とお菓子を出してくれ」
「かしこまりました」
執事というのはテキパキとして、それでいて存在を消す訓練でも受けているのだろうか?うちの執事のトリニティとどっちが強いだろうか?暗器持ってそうなんだよなぁ。戦う執事って感じ。特に辺境だからだろうか、ロレインさんは一緒に戦えると思う。
「ケビン様、こちらはケビン様達が持参していただいたお菓子です。大変美味しゅうございますね。料理長が教えて欲しいと言っておりました」
「そうなんだ、レシピは商業ギルドにすでに登録しているので教えることは可能だよ」
「本当ですか?そのように伝えてもよろしいでしょうか?」
「はい、姉様にも美味しい料理を食べて欲しいですからね」
ほっと一息ついて紅茶を飲んだ。はぁ、甘いお菓子と紅茶。合う。緑茶と大福が食べたい。温泉まんじゅうも食べたい。あんこに飢えている。しばらくのんびりしていたら、きゃー、という女性の声がした。えっ?何?まずい、何か不具合が出て怪我をしたのか?
ダダダと近づく音がする。そしてドアが勢いよく開いた。
「ケ、ケ、ケ、ケビンちゃん。なんですの、あれは!あの、あの自分の姿が映し出されるアレは何?」
あー、鏡か。そういえば母様やお祖母様も大騒ぎをしていたなぁ。
「ケビン、アレはなんなのよ!」
僕を揺さぶる姉様。ガクガク、首が揺れる。
「これ、クラウディア、ケビンの首が辛そうだ!やめなさい」
「お父様、ごめんなさい。でも、あの自分の姿がくっきりと見えるものはすごいわ」
興奮気味の女性陣。でも、見えすぎて、シワ、シミなどが目だ、ゲフン、ゲフン、あまり言ってはいけない。なんだか、姉様に睨まれたぞ。
「ああ、あれは母上やメルシーがびっくりしていたよ。自分の姿がよく見え過ぎるが、ケアができるから嬉しいと言っていたよ」
女性陣が一斉に僕を射程圏内に納める。ジリジリと詰め寄られた。
「「ケビン(ちゃん)、作ってくれるわよね!」」
「は、はい、喜んで!」
即答、あるのみ。拒否権はない。父様、兄様達が苦笑いしているよ。女性って美に対して、強い信念を持っている。シャンプー、リンスだって凄まじかったからなぁ。
父様が、やり過ぎるのなと言っただろう、と言ってきたが後の祭りである。
なんだか、屋敷の方の改修工事も承りそうな予感。ブルッ。




