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43 母様との語らい

 僕は今、だいぶお腹が大きくなり、重たくなって、腰が痛いと言っている母様の為に腹帯を作っている。記憶にある腹巻きのような腹帯があったはず。かぎ編みでお腹を包み込むように作っている。一編み、一編み、元気な赤ちゃんが無事産まれますように願いながら編んでいる。


「母様、女の子がいいですね。お腹の出方が女の子っぽいかんじがしますけど」


「なぜお腹の出方でわかるの?」


「なんとなく丸っぽいお腹だから女の子かなぁと思っただけです」


 胡散臭げな目で見られている。


「ケビン、まぁいいわ。追求しないでおくわ。あなたを追求すると深みにハマり、面倒ごとを押し付けられそうだからいいわ。本当に今度は女の子がいいわね。クラウディアは辺境伯へ嫁いで行ってしまったのでなかなか会えずに寂しいのよ。それでその手に持っているものはなぁに」


「あっ、これは母様がお腹が大きくなり腰に負担がかからないようにする腹帯です。お腹を冷えさせないで、それでいてお腹を支えるように作りました」


「ふくたい?これでお腹を覆うのね」


 母様は侍女に手伝ってもらいながら腹帯を試していた。


「まぁ、これはいいわ。お腹が温かいし、確かに重さの軽減があるわ。腰に負担がないわ。ありがとうケビン。ねえ、ケビン、侍女のサリーとメイドのロッテが身重でも働いているでしょ。あなたがこの前、職場の環境改革で言ったように女性でも働く意志があれば、さんきゅう?と、いくじきゅうしょく?短時間勤務だったわよね?それを実施すると言って働いているでしょ。あの子達にもこれを作って欲しいわ」


「いいですね。僕たちのために働いてくれているので、もちろん従業員支給します。そうだ、働く女性のために保育園でも作りましょうか。子供を預けられるところが近くにあれば安心ですよねって、そんなに女性は働きたくないかな。逆にそんなものを作ったら、働けって言っているものですよね。やめておきましょう」


「ケビン、そのほいくえん?というのは、働く人のために子供を預ける場所なの?」


「そうです。どうしても働かなくてはいけない、でも子供がいるから働けないという人のための子供の預かり施設です。そこで面倒を見てもらえるから働けるという安心感を与えて働いてもらいたいですね」


「なるほど、それは領地内、子供を持つ全てと考えるの?」


「母様?あくまでそういうのがあれば働きやすいのかなぁという例えですが?」


 まさか、それを実践しようとするのか?いやいや、俺に言われても困るから、あくまで理想論ということでスルーしよう。


「ケビン、これは旦那様とお義母様と相談案件です。確かにそういう施設があれば働きやすいと思うわ。あと、出産で奥様を亡くした男性が稼ぎに行こうとしても子供を預けなくてはいけなくなるけど、預け先を探すのが大変と言っていたわ。男女問わず、働く意欲のあるなら助けてあげたいわよね、ケビン」


「え?は、はい?僕が言ったのはあくまで理想論ですからできるかどうかは?ね?」


「ケビン、どういう感じがいいのか検討してみてちょうだい。その上で私たち親としての意見も言わせてもらうわ」


「あのぉ、母様。僕が計画するのですか?」


「ケビンの理想とするものを聞きたいわ」


 えー、なんですと。口は災いのもと。どうして俺はひと言多いのだぁ。


 母様はお腹を撫でながら、お兄ちゃまが頑張ってくれるんですって、それにあなたのために肌着とか作ってくれたのよ。楽しみにしていてね、とお腹に話しかけている。


「母様、僕もお腹触っていいですか?」


「まぁ、ケビン、ふふふっ、こちらにいらっしゃい」

 母様が座っているソファーに行き隣に座った。


「元気に産まれてくるんだよ。いっぱいおもちゃや肌着、ドレスなど作って待っているからね。ぬいぐるみもあるよ。気に入ってくれるといいなぁ」


 ポコポコと蹴ったようだ。


「母様、蹴りましたよね。動きましたよね?!おおー、返事してくれた。母様、返事してくれましたよ」


「よかったですね、ケビン。お兄ちゃんが待ってくれていることを嬉しがっていますよ」


 母様は俺の頭を優しく撫でている。気持ちがいいなぁ。俺は母様のお腹に頭をつけながらお腹を摩っていた。そして寝てしまった。


「まぁ、この子、寝てしまったわ。こんな可愛い寝顔久しぶりに見たわね。いつも大人顔負けの考えを出したり、書類仕事をこなしたり、時には突拍子もない考えた行動でみんなを巻き込むけど、やはり子供よね。ふふふっ、可愛い寝顔。私は幸せだわ」


 そこに父様が帰ってきたようだが眠くて目を閉じていた。気持ちいいなぁ。


「ルーク、お帰りなさい。この子、疲れて寝てしまったわよ。仕事のさせすぎではないの?この子大丈夫かしら?」


「ははは、確かに最近ケビンに任せきりだなぁ。でも俺がするより早いから、頼んでしまうことが多いんだよ。まったくこうして寝顔を見ていると子供なんだよ。可愛いなぁ。起きると色々とやらかすけどな」


「そうですね、みんなを巻き込んで色々なことをしでかしてますね。今回も」


「待て待ってくれ、メルシー。また何か増えるのか?増えるのか!」


「えっ?あの、これはルークに確認案件です。ケビンが私のためにふくたい?という腰巻きみたいなものを作ってくれたのよ。私の腰痛対策ですって。それをサリーとロッテにも作って欲しいというところから派生していったのよ。ほいくえん?という子供を預ける施設を作れば働きやすくなるのではと言っていたのよ、この子は。この前は働き方改革だと言って、産休?育児休職?短時間勤務などと働きたい女性のための改革をしていたのに今度は子供を預ける施設ですって。この子の頭はどんなことが詰まっているのでしょうね」


「本当だな。でも、やはり頭の良さと優しさはメルシーに似たいるんだよ。君は優しい、そして強さを持った女性だから」

 2人は手と手を取り、見つめ合っている。


 さて、僕はこのまま寝ていていいのだろうか?


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