35 兄様達の決意2
「でも、イーサン兄様は王都が好きなのではないですか?ロナウド兄様は自由に動き回りたいのではないのですか?」
兄様達は顔を見合わせて笑っていた。
「ケビン、お前なぁ。確かに王都の華やかさは好きだが、魔道具や物を研究し作れるなんて夢だったのだ。今まで夢を諦めていたから、華やかさで紛らわせていた弱い心を持つ兄だよ、ケビン」
「イーサン兄様は弱くありません。精神的に強いです。学園などは高位絶対志向が強い中、兄様は素晴らしい成績を残して、そして宰相様の補佐官に就いているではないですか!それはすごく大変なことだけど、その成績を残したのは兄様の実力です。誇っていいです!ロナウド兄様だって、魔法や商業両方に力を入れていてすごいよ。魔法で討伐できるのはすごいことだよ」
「あははは。ケビンがアイデアを出したものはすべてすごいものだと思うし、形にしたいんだ。私がしたいんだよ、ケビン。今の方が楽しいが、ケビンが突拍子もないことばかりするから、みんなハラハラドキドキ、父様なんて禿げると思うぞ、あははは」
イーサン兄様楽しそうだな、生き生きしている。やっぱり魔道具作りをしたいのか。それならいろいろ便利グッズ作ってもらおう。
「父様、錬金で毛生え薬作りましょうか?」
頭をゴチン。いたっ!
「全くお前は、父様を煽るな。ケビン、お前の考えたものを形にしていくのは楽しい。だけど、実行に移す前に必ず相談だ。本当にお前は。また新たなバネというものか。これは馬車の揺れや振動の軽減になるぞ。木で作るバネと金属で作るバネか。錬金で金属が作れそうだが、手堅くいくのは木で作るバネだな。姉様のところに行く前に作りたい。ケビン、もう少し詳しく教えてほしい」
イーサン兄様とロナウド兄様が楽しそうだ。確かにクラウディア姉様のところに行くのは長旅だから、バネで軽減したほうがいいよな。俺も馬車に乗る苦痛を軽減したい。
「ケビン、次から次へとアイデアを出すのはいいが、もう少しゆっくりにしてくれないか。今はお酒、快適綿、ポーション、リバーシ、あとは食事改善などいっぱいいっぱいだ。それでなくてもイーサンの魔道具が形になってきているし、これ以上は無理だ」
「父上、バネは早く対策した方が、我々も快適な馬車の旅になります。バネの必要性は大きいです」
「わかった、わかった。ロナウドはリバーシとバネを早急に手掛けてくれ」
「わかりました、父様」
「ケビン、お前は父様と領地経営の方を手伝ってもらうぞ。これ以上遅れては、予決算を提出できない。わかったか?」
「えっ、僕、子供だからわからないなぁ。できるかなぁ?」
「ケビン、そういう時だけ子供と言わないように。これだけ大掛かりになってきたから、みんなで協力し合おう。ということで、ケビン、父様の補佐を頑張れ」
イーサン兄様ー、兄様の方が事務処理できるでしょう?NOーー。俺が領地の予決算を手伝うの?俺、子供だよ、子供。イーサン兄様が領地の予決算を手伝えばいいのに、魔道具が忙しい?だって!そんなぁ。母様には負担はかけられないし、俺ですか?
その前に狩りに行って、魔法の指導もするんだって。俺、魔法使えないのに。発動方法も知らないけど適当にイメージすればできるとしか言えない。イメージしたものを言えば、みんなイメージできるかな。ノートに絵を描いてみんなに見せればイメージしやすいだろう。良い考え。言葉ではイメージしにくいからね。
でもな、俺が父様の方を手伝うのか。形にして流れを作れば、引き継ぎが楽だよな。引き継ぎをしやすいように書式化すればいいのか。今後丸投げするには今からしておいた方が良いのか。しょうがない、将来の脛齧り生活のために頑張るか。
数日後、アーロンさんがクロスボウを作って持ってきてくれた。おおー、弓の強化版。
「アーロンさん、ありがとうございます」
「ケビン坊ちゃん、念の為試し撃ちをイーサン様、ロナウド様、騎士団長様にお願いしましたので、性能は完璧だと思います。あとはケビン坊ちゃんの腕かと思われます」
「兄様と騎士団長が試し撃ちをしてくれるの?やったぁ。あとは僕の腕次第かぁ」
「気をつけてくださいね、これは人も殺傷できる代物です。たぶん、伯爵様のきょかを」
「ケビン、待て、それはお前には早すぎる」
「父様?」
「イーサンや騎士団長から聞いた。これは大人達が使う。威力がありすぎる。人をも殺めることができるものだ。ケビン、お前は弓矢よりもすごい武器を作ってしまったのだよ」
「え?武器とかじゃなくて、遠くから魔獣を仕留めたいだけです」
「お前は、まったく。子供のお前にこれはダメだ。誤射してしまうと危険だ。これは別の部隊で使うことになる。お前は剣で頑張るのだ」
「ええー。接近戦が嫌なんだけど、父様」
結局、剣で狩り?ヤダよー。




