31 木工技師 アーロンさん
数日後、父様が木工技師アーロンさんを紹介してくれることになった。
ドルトンさんも腕は非常にいいが妥協を許さない人だが、アーロンさんも同じような人みたいだ。ただおしゃれ感がないらしい。よく言えばオーソドックスなもので質がいいだけ。ただそれだけだった。
「アーロン、紹介しよう。これがうちの次男ロナウド、三男ケビンだ。この子たちが君の作ってほしいものがあるんだ。話を聞いてもらえないだろうか?」
「ルーク様、坊ちゃん方が話ですか。そんな子供のお遊びの話なんかぁ聞きゃせんよ」
「まぁ、そう言わず、話だけでも聞いてもらえないか?気に入らなければ受け入れなくていいではないか、頼む」
「領主様にそう言われちゃ、しょうがないですね」
おー、上から目線だなぁ、この人は。でも、置いてある家具など見るとしっかりした造りだな。デザイン性はない。普通だ。でも、細部まで丁寧に仕上げている。いい職人さんだ。
「アーロンさん、初めまして、フォーゲリア伯爵家次男 ロナウドです」
「初めまして、アーロンさん、三男のケビンです。よろしくお願いします」
元気いっぱいの8歳に見えるよね。
「おー、この坊ちゃんたちが何を作ってほしいんだ」
ロナウド兄様が俺の書いたノートと自分で作ったリバーシを見せた。
「なんじゃこれは?けったいな物を作らせようとしているじゃないか。こんなもの、わしにかかれば造作もない。これをわしに作れってのかい。ふざけんじゃない、こんなものをわしが作らないといけないんじゃ。帰ってくれ!」
これは頑固爺だな。それにこんなおもちゃじゃだめか。しかし、これだけ丁寧に仕上げる人だ、ここで逃すわけにはいかないのだ。これからジェンガ、滑り台、回転木馬、シーソー、ブランコ、オルゴール、木でピタ〇ラスイッチの装置を作るんだぞ。まずい、遊具しか考えてないぞ。俺の頭、幼児化してきたのか?そうだ、バイオリンや木琴だって作れるぞ。音楽家爆誕だ。ソロバンだって作れる。おもちゃだけではないことをアピール。
「アーロンさん、木にはいろいろな可能性があるのですよ。家具だけじゃないのです。固定観念を捨て、木で出来うるあらゆるものを習得できれば、木材マスターにあなたはなれます!」
自分で言っていて何言っているかわからん。木材マスターって何?
アーロンさんが腕組みして唸っていた。
「ようわかったぞ、ぼうず」
え?わかったの?俺も言っていてわからないんだけど。
「その木材マスターが何かは分からんが、木にはいろいろな可能性があるか、よーし、作ってやる」
おおー、よしよし。作ってもらえるんぁ。やったね。
「アーロン、いいのか?この三男のケビンのいうことを聞いているとはこき使われるぞ。全部が全部鵜呑みにしてはダメだぞ。ほどほどにしてほしい」
「なーに、ルーク様。大丈夫だよ。子供の言っていることではないか。子供のお遊びに付き合うだけだ。わははは」
「なあ、ケビン。さっき言っていたものをノートに書き記しておいてくれ」
「なんじゃい、その紙は。何が書いてあるんだ」
「アーロンさん、これはケビンが作ってほしいと思ったノートです。実用できるものを吟味して作ってもらおうと思っています。長男のノートには魔道具の作成です。そちらは鍛冶のドルトンさんに協力していただいてますが、もしかしたらアーロンさんにも話が来ると思います。酒樽もそうですが」
「ああー、あの樽は酒樽だったのか!おおーあれは喜んで作るぞ」
ここにも酒好きがいた。今後お酒で釣ろう。
父様がボソボソと言ってきた。
「酒で釣ろうと思っただろう。お前はいつも何かで釣ろうとしているだよな。まったく」
お酒の方は順調に蒸留し熟成させている。それも、様々な穀物で作っている。大人ってずるい。協力する大人たちが多い。そして早く飲みたい人がいるため、魔道具で進めているものと、じっくりねかせるものと分けて作っている。それも小さい樽を作ってそれぞれの住人に振舞い、ねかせる人、飲む人様々だった。俺の収納にも大きい樽をいれて熟成中。これは俺が大人になったら飲むのだ。いい具合にねかせられているのではないかと期待しているがそもそも時間停止なんだよ、熟成しないということなのか、さっぱりわからないがとりあえず将来のためねかせておく。父様、お祖父様、兄様達も自分たちの腰にあるマジックバッグに常時入れているんだから、酒に対する熱量がハンパない。
もちろん、精霊様達特に長老様達に持っていってもらった。みんなのおかげで、たくさん収穫が出来、質が良い。いっぱいお菓子、料理、お酒を持ち帰ってもらった。たまには里帰りしなよ、と言って帰らせた。まったく帰らずにここにいつもいるんだから。
と、話はそれましたが、さっそくリバーシ、将棋、チェス(これは凝ったデザインなので時間をくれと言われている)ソロバンを作ってもらうこととなった。シンプルだけど円を均一にする技巧。円の描き方はコンパスを作成。またこれがイーサン兄様の琴線にふれ、円イコール歯車となり、大きく時計開発に拍車がかかったことは言うまでもない。
簡易リバーシ完成。みんな始めると夢中になっていった、1セットが今や5セット作られた。なんだか昼間から酒を飲みぱちぱちしている爺さんたちがいる。暇人じゃないか!ロナウド兄様は商業ギルドに特許申請をさっそく出していた。抜け目ない兄だ。
兄様達は帰る時これを持っていきたいと言って、新たなリバーシセット作った。駒と盤を簡単に収納できるようにした。持ち運びが楽なことが一番いいことだ。
娯楽計画もうまくいっているぞ。将来の未来像、昼行燈生活が待っている。目に浮かぶ光景、俺は寝転びながら、お酒を飲み、対面している女性(ここ大事!)とリバーシや将棋でパチパチ打っている未来が俺を待っている。オオー。




