234 産まれそう?
とうとうすべての貴族にリル、クルのお披露目と古き時代の精霊様達との関係性とこれからの構築について説明をすることになった。
「この前作った新型貴族服を着て行きますよね?父様も兄様方もかっこいい装いです。楽しみだなぁ」
「そうだな、あの貴族服はシュッと見えてかっこいいな。ケビンが襟の縁などに刺繍をしてれただろう。あれがゴージャスに見えるんだよな」
ふふふ、肩マントを翻し、細マッチョ全開なパンツをブーツイン、縁取り乗ったの刺繍は王家の金のカルコーマを施したのだー。
試着したお姿がもう全員キラッキラの王子様風。
しかし、しかしだ、僕とジュリに対して母様達女性陣は半ズボンとタイツを要求している。いやだぁ、僕もブーツインしたい、肩マントしたい。泣く泣く母様達女性陣の圧に負けて子供らしい正装となった。でも、ジュリはジュリは王子様風なんだぁ。かわいいぞ。
僕は少し反抗した。せめてせめて白タイツではなく紺のソックスにしてほしいことをお願いした。白のタイツは絶対やだ。かわいいのにと言われたが男としてタイツは嫌なんだ!
準備段階は整った。あとは行くだけだ。
招待状は全貴族に渡ったということだった。子供達も一緒だ。だから昼から執り行うことになったのだ。僕達は数日前から王城へ入りクルさんのお披露目の準備を一緒にすることになった。母様はクラリスお祖母様や大お祖母様と今までの時間を取り戻すかのように一緒に過ごしている。クラリスお祖母様に似たルーナはオスカーお祖父様の腕に抱かれていることが多い。威厳もなく好好爺になっているのだ。お祖父様の反動もすごい。大お祖父様は俺とジュリに剣術を教えてくれるが、まったく上達しない僕。ぐんぐん上達しているのはジュリ。6歳なのに大人顔負けの剣術なのだ。まあ、大お祖父様は僕の剣術レベルに合わせてくれているので、見た目チャンバラごっこをしているような感じなのかもしれない。
「えーーーい。とりゃあー」
「わははは、ケビン、掛け声だけはいいのだが、全くできてないぞ」
「えー、大お祖父様これでも僕は真剣なのです。キエーーー」
大お祖父様に突っ込んでいくが軽くあしらわれた。くそぉ、やっぱり人を斬るのは無理なんだよ。腰が引けてしまう。
「ケビン、お前は優しすぎるから生き物を斬るということが嫌なのだろう?しかし、時として守るべき人を守る時、出来なければいけないのだよ。だから精進しなさい」
「はい、大お祖父様。僕、頑張ります。でも休憩していいですか?」
ズコッていう音が聞こえてきそうな雰囲気だったよ。
「にいに、僕がにいにを守るからね。ぼくもがんばるね」
ありがとうジュリ。もうすでに身長が抜かされたようだ。目線が上だったよ。ジュリ、守ってくれ、頼むよ。
母様達とまったりと休憩。ああ、いい天気だな。クラリスお祖母様と大お祖母様の庭園にもバラを植えたんだ。大お祖母様は黄色、クラリスお祖母様はピンク、そしてアリステリア様を希望したので、アーチやトピアリーを作って癒しの空間を作ったのだ。
「ケビンちゃん、この前ね、バラの精霊様の、ローズレッドちゃんとローズイエローちゃんが遊びに来たのよ。びっくりしてしまったわ。そして妖精たちも舞っていたのよ。ケンドリックやアリステリアが急いでこちらにやってきて、みんなでお話をしたのよ。ローズピンクちゃんはフランソワのところへ行っていると言っていたのよ。最近、この王城も精霊様やリル様やクル様、妖精様がいらっしゃって大忙しよ」
ん?クル様?クルさんや?一人王城に来ているのか?
「クラリスお祖母様、クルはここに遊びに来ているのですか」
「あら、やだ、内緒って言われていたのだったわ。クル様ごめんなさいね」
「あー、良いのよ。別にバレても。だってケビンは執務で忙しくて相手にしてくれないんだから、私がどこへ遊びに行こうとも勝手にやるわ。でも帰るところはケビンのところだから安心して。魔力をいっぱい貰わないとね」
結局、僕は魔力補完要員ではないか、まったく。
「クル、王城に泊まる時は言うんだよ。無断外泊は禁止だよ」
「ケビン、あなたは私の父親か?パパと呼ぼうかしらね」
まったく、うちの姫様は。まあ、忙しくてかまってあげられないから、みんなのところに遊びに行くのは別にいいのだ。気分転換にあちこちで交流を持つのもいいね。
「クル、お菓子食べ過ぎて太らないようにね」
「まあ、失礼な。女の子にその言葉は厳禁よ!でも最近、ケビンが健康食品のトウフを作ったじゃない。おからのクッキー、おからドーナツ、トウフアイスを持参しているから大丈夫よ。ここの料理人たちも知りたいと言っていたから教えておいてね。特にトウフアイスはおいしいわよ」
まだ冷凍庫が普及していないからアイスは早いよ。氷魔法が使える人がここに居そうだから協力してもらえば実現できるよね。
その時、空気がビリビリとした。なに?オスカーお祖父様はお祖母様、母様、大お祖母様を守るように構えていた。僕とジュリはルーアンやエルビスがいつでも避難できるよう抱え込まれた。
何が起こったのだ?
頭に声が聞こえてきた。
”う、産まれそう、我が産まれる”
我が産まれる?卵?えー!




