231 優遇しろ!そんなの知らないよ!
警備員が慌ててやってきた。
「ロナウド様、フレッド様、表にボロレス公爵様、ガーゴイヤ商会長様がいらっしゃっでもおります。えーと、中には入れませんでした。警備室前に椅子を用意し待っていただいております。いかがいたしましょうか?」
ラスボス登場か。まったくはた迷惑な人達だ。この前はガーゴイヤ商会長が分解したドライヤーを持ってきて修理しろ、もしくは新品に取り換えしろと言ってきた(警備室前で)。精霊達の結界が張ってあるので、悪意ある者は中に入れない、ということは悪意ある人ということだが自覚がないのだろうか?
「私が行こう。ボロレス公爵殿がいるなら私が話をつけようではないか」
たまたまアルお兄ちゃんとレオンと一緒に遊びに来ていたケンおじちゃん。ケンおじちゃんご覧話をつけようとしている。アルお兄ちゃんは卵育成のため時々僕の魔力補完をしに来るのだ。卵は順調に育っているよ。
”我はもうすぐ復活するぞ、楽しみに待っておれ”
って。復活って何?魔王かなにかか?と考えていたら、”魔王ではない、ドラ、ん、ん、楽しみに待っておれ”だってさ。正体バレバレ、ポンコツ感あふれるよ。
それはさておきボロレス公爵と腰ぎんちゃくのことを考えなくては。
"あやつらは放っておけ。我のことを愛しめ"
言葉がおっさんくさいから、可愛い女の子だったら良かったのになぁ、クルさんもなぁと考えているとクルさんの猫パンチ炸裂!アウチ。戯れていると父様やケンおじちゃん達が誰が相手にするかを議論している。
「いえ、私が出ます。ケンドリック様、はじめは控えていてください」
おおー、最後はこのお方をどなたと心得る、ジャジャーンってかんじか。父様が先に話を聞くことになった。ロナウド兄様とフレッド様も追随する。僕も行こうかな。
「ケビンはケンドリック様と影で聞いていなさい」
みんなで警備室前に移動。陰で見ていると、自分は公爵なのに入れないとはどういうことか、など怒っていた。
ケンおじちゃんと父様の考えは表立っては魔道具で結界が張られているとされているが、ボロレスには本当のことを伝えることにしたみたいだ。俺達が初めて王宮に行った時にルガリオ達が出てきてしまったから、精霊がいることは分かっているのだろう。ただ、ボロレス率いる南地域の人には精霊の姿は見えないのだがね、声は聞こえるのかな?
「ボロレス公爵様、我が商会は結界が張られております。入り口に注意が掲げております。見ませんでしたでしょうか?”悪意ある者は入ることが出来ない"となっております。それにその結界は、ボロレス公爵様には見えない精霊様が結界を張ってくださっております。ここには高位なお方たちがいらっしゃるので厳重に安全な対策をしているのです。入れないということは何かあるのですか?精霊様達は純粋なお心を持っております。邪な思考は受け入れないので、ボロレス公爵様やガーゴイヤ商会の方々は何か雑念がおありということですか?」
「な、なにを言う!私は公爵だ!優遇するのが当たり前だろう!それにそんな邪な考えなど持ってはおらぬ。せ、精霊様などいるわけがないではないか!現に私は見えない。見えないものを信じるわけがない。くだらないことを言うな」
「しかし、神獣のフェンリル様や幻獣のカーバンクル様も滞在しておりますので悪い感情を持つものを受け入れることが出来ないのが現状です。結界内に入れないことは我々にはどうすることもできないのでお引き取りください」
父様、強気。母様を冷遇した張本人だから、コテンパンにやっつけてくれ。頑張れ、父様。優遇なんて、あなたにはしないよ、知らんがな!
「ふん、こんなすぐ壊れるような魔道具を売りやがって!」
商会長が大きな声でうちの製品が悪いような言い草。
「ガーゴイヤ商会長殿。うちで作る魔道具は故意に分解する以外はこのようなバラバラにはならないのですが、分解しましたでしょうか?」
「分解などせんわ!使っていたらバラバラになったのだ。こんなものを売りやがって」
後ろにいる従業員らしき人が買ったのかな?悲しそうな顔をしているということは無理やり、この商会長にバラバラにされてしまったのかな。
「商会長殿が買ったわけではないですよね?商会長殿は中に入れませんでしたよね?初日から」
「な、何を、お前達は嫌がらせで入れないようにしているだけだろう!この店は差別する店だぞ、こんな店入るに値しない店だ」
周りで見ていた人達の中から怒声が上がった。
「お前の商会の方が差別しているだろう。お前のところは金持ちしか相手にしないからな。平民、それも身なりが良くない者を入れないようにしているじゃないか、お前のところの方が差別しているだろう!ここは悪意を持っている者以外は入ることができ、買わなくても十分楽しめるんだ。逆に入場記念でこの前は飲み比べ券が当たったんだぞ!今日はそれを使うのを楽しみに来たのだ。こんな良い商会はないよ」
「本当だよ!うちは子供にお菓子を買ってあげられないのに、ご褒美デザートとして少額でも食べることができるサービスがあるんだ。それも新作でも食べて良いんだよ。こんな良い施設はないよ。私は入場記念はハンドクリームをもらったが、ほら見てご覧、こんなに綺麗な手になってしまったわ。少し使っただけでもこの効果。最高だね。あんた方は入れないということは悪意ある者達ということではないか!何、悪事を働こうとして、あー、その壊れたドライヤーと言っているが、自分達で分解したんだね。それを壊れたなんて酷い言いがかりではないか!だから入れないんだよ!」
おー、周りのお客さんがうちの商会の味方をしてくれている。ありがたいよ。
ポロレスとガーゴイヤ商会長は焦って、逃げるように帰って行った。
「塩を撒こう!父様、塩」
「なぜ塩なんだ?ケビン」
「え?邪気祓いです。塩で清めるのです」
「そうなのか、塩も大事だが、今回はしょうがない。邪気祓いだ!」
ルガリオ達も一緒に塩を撒いた。二度とくるな!心の中で叫びながら塩を撒いた。
「はぁ、これに懲りて来ないでほしいですね」
みんなで頷き合った。
ふと見ると首を垂れている先ほどの従業員がいた。膝下には分解されたドライヤーがあった。
「大丈夫ですか?」
「申し訳ございません、申し訳ございません。商会長が、商会長が分解をしてしまいました。わ、私ももうここに入ることができません。それにガーゴイヤ商会をクビになってしまったのでどうやって生きていけば。あぁー」
父様が事情を聞き、分解を反対したが、商会長に分解され、直すことが出来なり、歯向かったためにクビを言い渡されたということだ。お子さんが体が弱く、薬代を捻出しなければいけないがクビになったのでどうすればいいかと途方に暮れているみたいだ。
「中に入りましょう。多分、大丈夫でしょう」
やっぱり入ることができた。あのガーゴイヤ商会長が入れなかっただけだと思う。
「入ることができた、できた。うぅぅぅ」
座り込んで泣いてしまった。
「魔道具部門に行きましょう」
「は、はい」
ロナウド兄様と俺はこの人を魔道具部門へ連れて行った。




