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230 どうして入れないんだ?

 儂は南地域の有力貴族、ボロレス公爵様の後ろ盾があるガーゴイヤ商会長のドワンゴだ。娘は南地域ボロレス公爵様寄子ゴードン伯爵様の第三夫人として輿入れしたが、今は第二夫人になっている。ゴードン伯爵様の寵愛を得ているそうだ。ふふふふ、娘と孫は貴族の仲間入りだ。第二夫人だった女は伯爵様と縁を切って出ていったそうだが、馬鹿な女よ。飛ぶ鳥を落とす勢いのある南地域の貴族籍を抜けて平民になるなんでほんとバカな親子だ。まあ、わしの孫が嫡男になる日が近くなったのだから良しとしよう。わははは。わしのかわいい孫ミゲルとブリジッタ。儂に似て愛らしい子達なのだ。王都は儂の商会が牛耳っていると言って過言ではない。


 王都北側地区のゴードン伯爵の第二夫人だった女の兄が商会を営んでいたが潰してやった。ふふふふ。そして西地区のカトレイン商会もほぼ機能していない商会となっていた。それが最近ベリーのジャムを売り始めたのだ。赤いベリーなんてあるのか?どこでそんな果物を仕入れたのかわからない。そして従業員の家族に購入を頼んだが美味いんだ。大量買いを依頼したが、数量は制限されているそうだ。くそっ。


 北側地区には壁に囲われた土地がある。最近、儂から土地を買ったあの貧乏フォーゲリア伯爵様が商会を立ち上げるらしい。タウンハウスも兼ねているということだから商会で細々と生計を立てようとしているのだろう。もうそこまで落ちぶれてしまったということか。儂が金を出して爵位を買ってやってもいい。ただあそこは魔法属性がない、王家の恥といわれるメルシー王女が嫁いだ貴族だ。平民にはさせないだろうが、絶縁状態だから時間の問題なのかもしれない。ふふふ、商会を立ち上げるなんて、それも儂が牛耳る王都に進出だって!潰してほしいと言っているものではないか、わははは。


 まあお金を借りに来たら貸してやってもいい。ふっ、この王都でどこまでやれるのか見ものではないか。あそこの寄親は落ち目のボールドウェッジ公爵様だ。どんなにあがいてもうちのボロレス公爵様には負けるであろう。


 しかし、北地域のスティングレイ辺境伯が五本指ソックスなるものとアンダーシャツというものを売り出し、騎士達の足の改善をしたというのでうちも真似て作ってみたが、何かが違うらしい。スティングレイ産の方が好まれるのだ。どうにかしてあちらより良いものを作らなければ、騎士団への収入が減ってしまう。アンダーシャツというものも汗をかいてもサラッとした質感で心地よいと聞いた。何が違うのだ!王宮騎士団の購入口はうちだけだったはずが、5本指ソックスとアンダーシャツは直接スティングレイ辺境伯との取引をするらしいのだ。何かがおかしいのだ。


 そして、フォーゲリア商会の店が開業した。前日まであった土壁がなくなり、大きな施設が建っていた。土壁の奥にこんなでかい店?を作っていたなんて!土壁はどこにいったのだ?


 儂は貧乏フォーゲリア伯爵家の商会と高

 を括っていたのだ。従業員が慌てふためいて帰ってきて話を聞き、見に行くと大きな施設が立ち並んでいた。


 魔道具を買ってきた従業員に見せてもらい、見たこともない魔道具だった。何でも髪を乾かす道具、洋服のシワを伸ばす道具だと。あとはおるごーるという音色が美しく心が安らぐ道具もあった。


「これを分解しろ!そして調べるのだ!同じものを作るぞ」


「しかしこれをまた戻せるとは思いません」


「何を言っているのだ!お前達も魔道具士だろう!直せるだろう」


「無理です、構造が全くわかりません」


「ほら、このカードに修理券が付いているではないか、ダメなら修理して貰えば良い」


「購入した人のアフターフォローするためにカードに名前などを記載したのです。だから故意に壊した場合もう売っていただけない可能性があります。修理券は故意に分解したり壊したりは対象外と書いてあります。これは我が家のために買ったものです。分解などできません。それに入り口のところに悪意あるものは入場できない魔道具が仕掛けてあるとかいてあります。これを故意に壊したら、私は二度とあそこに入れなくなるのではないかと思っています。だから無理です、私には分解できません」


「ふざけるんじゃない!誰のおかげで稼げていると思っているのだ。儂が買ってやるから分解するんだ!そしてこれを作り直せ」


 しかし直すことが出来なかった。構造が全く理解できなかったのだ。優秀な成績で卒業した者でさえ、直すことが出来なかった。目の前には分解された部品が散らばっていた。


「ふん、儂が買ってきてやるから安心せい」


 まったく、本当に魔道具士なのか?フォーゲリア商会の魔道具士を大量に引き抜きしてもいいな。あんな商会より儂の商会の方が知名度と後ろ盾がいい。すぐ寝返ってくるだろう。始め好待遇で扱い、徐々に給料を減らしていけばいいのだ。


「まず、お前、ドライヤーが壊れたことを言い、すぐ直すか、新しい物に替えろと言うのだ」


 壊れたことを伝え、警備員が中へ通そうとするが入ることが出来ない。悪意ある者は入ることが出来ない、まさか!儂も入ろうとしたが何故か入れない。ドライヤーを購入した従業員は入れないことを嘆いて、儂を非難していた。


 警備員は何も言わない。冷たい視線が刺さる。


「なぜ入れないのだ。儂はガーゴイヤ商会の商会長だぞ。入店させるのがあたりまえだろ!儂を怒らせたら痛い目に遭うぞ!」


 警備員は全く反応せず、儂だけが一人喚いている状態ではないか。儂を横目で見ながら普通に入っていく人たちが多数いる。なぜ儂は入れないのだ。


 警備員が動いた。入れてくれるのか?


「お引き取りを。悪意ある者は入れません。ここに記載してありますよ。お引き取りください」


 そして定位置に戻っていった。ふざけるな、ふざけるな。儂はガーゴイヤ商会長ドワンゴだぞ!痛い目に合わせてやる。


 ドライヤーを分解された従業員がしつこく言ってくるがうるさい。どうせフォーゲリア商会の魔道具士が大量に我がガーゴイヤ商会に入ってくる。


「お前はクビだ!」


 まったく儂に楯突くとはいまいましい!ボロレス公爵様に報告だ。


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