221 報連相
ステージ上で演奏が終わった。拍手喝采であーる。
僕は感想を聞きたくてみんなの元へ戻った。そして場所を移動した。
「どうだった?自分にできそう、何かイメージが湧いたという人いる?そういえば音楽スキル持ちか絵を描くスキルを持っているかそのほか?か聞くのを忘れちゃった。ごめんね。音楽スキル持ちの人たちは弾けそう?イメージが湧いたかな?」
「はい!頭の中で何かが弾けてました」
「はい、私も何かが浮かび上がっているのですが何かはわからないです」
音符かなぁ。イザークに戻ってきたら聞いてみよう。
「お、あ、いえ、わたしはピアノを聴いて頭の中に絵が浮かび上がりました。あの曲は素晴らしい曲です。イメージが次から次へと湧いてきます」
芸術スキルの中でも音楽スキルと絵画スキルは違うのだね。ふーん、面白いな。音楽スキル持ちの人たちには競馬でのファンファーレの重奏をお願いするのだ。楽しみ楽しみ。
戻ってきたイザークにも確認し、頭の中で音符が浮かび上がるみたいだ。
「イザーク、音楽スキルの人達にピアノやヴァイオリンを教えようと思うんだ。そしてトランペットでファンファーレを皆で弾いてもらうからね」
「馬の競技の時の開始の音楽だね。うん、みんなで弾ければかっこいいよ。じゃあ、僕が今日弾いた曲を覚えているかな。それを皆に弾いてもらうよ」
率先して進めていってくれるイザーク。ありがたい。イザークに任せれば大丈夫かな。
「ケビン、僕に丸投げしようとしているよね。ダメだよ、僕はあくまで補佐だからね。ケビンがメインで支持するんだからね。ケビンってそっと自分以外の人に振るよね」
グサッ、暗に丸投げしていると言っているようだ。同年代に言われると丸投げできなくなる。父様や兄様達に丸投げするのは身内による甘えなんだよな。俺は甘えている。そう、甘えん坊キャラだ?ん?違うか。まあ、同年代の子に丸投げするのも申し訳ないからここは自分でするけど。
「では、この劇場でリサイタルなどをしたいと思っているんだ。音の反響などを体感したいのでみんなにいろんな楽器を弾いてもらうことにするね。絵のスキルの人たちはこちらで聞いていてほしい。音楽を聴いて生み出されるイメージで絵を描いて欲しい。これ、スケッチブックと色鉛筆ね。今は色鉛筆だけど今後、水彩画、油絵、立体的建造物などを作ってもらうので、これはまず初めの一歩。どんな絵を描きたいかなどじっくり考えてほしい。ではここで描けるかな?」
みんな頷いて、各々椅子に座りそしてスケッチブックに絵を描いて、笑顔になっていた。
「では今度は音楽スキルの人達ね。ここに楽譜があるけどまずは音楽を体感してほしい。僕とイザークで何曲かピアノ、ヴァイオリン、ビオラ、トランペット、フルートを演奏するね。それから自分が弾きたい楽器と曲を選んでほしい。どうかな」
神妙な面持ちで頷いた。自分たちが果たしてできるのか不安なのかもしれない。そこは練習あるのみ。イザークがおかしいんだよ。すぐ聴いて弾けてしまったのが。
「みんな、自分のペースでいいんだよ。そして自分は何が一番得意なのかをじっくり考えてほしい。楽器以外だって歌もある。そうなんだ、歌える人を探しているんだ」
「ケビン、ケビンが見本を謳えばいいのではないか?この前みたいに」
あー、ハカセさんとセリーヌさんのやつ。それもしますか。
「ではこれから僕とイザークでこれらの楽器で曲を弾くので聴いてください」
うわー、一番恥ずかしいのはやっぱり歌。まだ声変わりをしていないので高い声が出る。
「ケビン、待て」
ん?フェルおじちゃんとアルお兄ちゃんがいた。
「ケビン、劇場はライアン様も融資するのだろう?それに商会の施設の一部ならロナウドも連れてこないとダメだろう?」
「ロナウド兄様はそれほど音楽の耳をもっているとは思えませんが?ロナウド兄様、要りますか?」
2人は笑いをこらえているみたいだ。
「一応商会長ならこの劇場運営もすることになるだろう。何をするかを報告連絡相談は必要ではないのか?」
フェルおじちゃんが正論を言う。報連相は大事。勝手に進めてはだめだね。また暴走するところだった。思い立ったが、が僕の悪いところ。そこは大人になれ、でも基本思い立ったが路線だろう。脳内反省終了。
「まあ、そうですね。分かりました。呼んできます。ルーアン、呼んできてもらえるかな?」
「かしこまりました。ルーク様、ロナウド様、ライアン様、フレッド様でよろしいでしょうか?」
「そうだね、ルーアン。休憩している人達を連れてきていいよ」
休憩って、家族みんなが来たよ。
「ケビン、お前、先に進めようとしていただろう」
「へ?ロナウド兄様、何のことかなあ?」
小言を言うロナウド兄様。このところお説教が長いんだよなあ。商会長として僕を説教しているんだからしょうがない。勝手にすることが行けないのだ。ごめんなさい。
「ロナウド、まあ、ケビンを怒らないでおくれ。今回ケビンが思い描いている劇場を知りたいのだ。私は漠然と音楽スキルを持っている人達を援助できればと考えていたのだが、まさかこれほどの劇場を作り、りさいたる?をしたいと言っている。ケビンのやりたいようにさせてくれないか?」
「分かりました、ライアン様。私も芸術スキルを持っている人達の支援をしたかったのでこれが足掛かりになってほしいです」
ロナウド兄様も考えていたんだ。僕がロナウド兄様を見つめていると、表情を崩し語りだした。
「イーサン兄様や魔道具士の友人達、そして学園の友人達を見ているとそういう機会があれば、自分のスキルでやりたいことが出来るのにと思っていたのだが、なかなかどうしていいかわからなかったのだ。でもケビンが動くことによって、本来持っているスキルの活用や有用性が開けるんだ。このことを友人達に伝えたいんだ。良いかな、ケビン」
「もちろん、ロナウド兄様。まだまだやることが多いのだから人が必要です。とりあえず、今いる人たちの演奏を聞きましょう」
「そうだな」
頭をワシャワシャされて抱っこされた。
”ありがとう、ケビン”
照れちゃうよ。