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219 それをフラグという

 今日も早くから並んでいる人がいるので整理券を渡した。集合場所、アナウンス、その時間に来てほしいことを説明した。美容部門が一番すごいと思う。朝から女性達が並んでいる。女性の美に対する情熱がうかがえる。


 さて予約の貴族達の対応は父様、フレッド様、アンジュ様そしてアニーベル様が応援で来てくれたのだ。しかし今日は王妃様であるお祖母様が来ているのだ。


「お祖母様、転移酔いなど大丈夫ですか?体調は大丈夫ですか?」


「ケビンちゃん、心配してくれてありがとう。大丈夫よ。ドキドキしてしまったけど全く問題ないわ」


「ケビン、クラリスを連れてきてくれてありがとう。クラリス、昨夜は君がいなくて寂しかったよ」


 お祖母様を抱きしめるお祖父様。けっ、他でやってくれ。


「はいはい、お祖父様。お仕事に行ってください。ロイドお祖父様と今日はウェルス様とライアン様が待っております。はい、行って行って」


 シッシッという感じでお祖父様を追い出すとお祖母様に笑われた。


「国王陛下であるお祖父様をこき使えるのはケビンちゃんしかいないわね。あら、私もこき使われるのかしらね。うふふふ」


「お祖母様、僕はこき使ってませんよ。お祖父様が仕事に行かないのがいけないのです。それでなくても飲んでばかりなのですから!」


 お祖母様のお顔が般若のように、あれ?


「あの人は仕事をしていたのではなく飲んでいたの?ケビンちゃん?」


 え?あー、ん?どうすればいい。飲んでいたことは確かだけど。


「お祖父様は仕事をしていました?」


 断言できないのでごめん、お祖父様。


「まあ、良いわ、お忍びで様子を見に行ってみましょう。今日はマーガレットは来ていないのかしら」


 ライアン様の奥様マーガレット様。来るかな?


「アニーベル様、マーガレット様はいつ来ると言ってましたか?お迎えに行きますが」


「お義母様は明日だわ。クラリス様、今日お帰りになってしまわれるのですか?」


「今日はここでみんなと過ごすのよ。楽しいわね。この子達が王城へ会いに来てから楽しいこと続きだわ。さて今日は美容部門で働くのよ。変装をするなんてわくわくするわ」


 王城であった時のお祖母様は物静かな感じだったが、ボロレスに頭が上がらない状況で静かになってしまったという。本来は明るく、朗らかな(少し気が強いのか、信念があるのか?)女性だったのだ。お祖父様もそこに惚れたのだろう。仕事はてきぱきとこなしているからカッコ内の方なのか?キッと見つめられた。心の声が聞こえてしまったのか。その後ニコリと微笑まれ、逆にドキドキした俺だった。背筋ピーンだよ。


 美容部門は人が多いほど有り難がられる。お祖母様はにこやかに対応していた。髪の色は赤なのだ。可愛い顔立ちなのに艶やかな赤髪で印象が違う。


 お祖母様も生き生きとしている。


 あっそうだ!オルコット領のアセロラ飲料とゼリーをここで試飲試食してもらおうかな。待っている間いいよね?


「母様、オルコット領へ行ってきます」


「ケビン、何しに行くのかしら?」


「オルコット領のアセロラ飲料とゼリーを待っている間に試飲試食をしてもらおうと思ったのです」


「まぁ、そうね、待っていただいている間に試飲試食していただいてもいいわね。ジュースも美味しかったけれど、ゼリーも冷やしたり凍らせたりして、より一層おいしかったわ。ケビン、お願いできるかしら。アンジュ様は予約者対応だったわね。私がそちらを対応するわ。だからアンジュ様を連れて行ってちょうだい」


「で、でも」


「ケビン、私は強いわよ。何を言われても、あなた達家族がいるから平気よ」


「か、かあさまぁ」


「それにこちらにはジェラルディン様と、お母様かいらっしゃるから安心よ。お母様が王妃としてではなく、一人の女性としてふるまっている姿を見ると私も負けていられないって思うのよ。だから大丈夫。アンジュ様を連れてオルコット領へ行って、ね、ケビン」


「はい、母様」


 うちの女性陣はやっぱり強いな。心が強い(決して性格が強いという意味で言っていないからね)、逆境にも立ち向かえる強さがある。かっこいいな。


 それから僕はアンジュ様を連れてオルコット領へ転移した。


「ヴィンセント様、また、失礼します。今度はアセロラをいただきに上がりました」


 転移してきた僕達にギョッとはしていたが、昨日の人員を調達してきたのに慣れたのか、またかという心境なのかもしれない。


「今度はどうしたのだ?昨日の応援者は戻ってこないのか?」


 あっ!皆、応援続行の意思があったのでそのまま配置してしまったが、そうだね、こちらの仕事もあるよね。


「まあ、よいよい。そんな気はした。ところで今回はどうしたのだ」


「お父様、アセロラを美容部門で待っている方々に試飲試食をしてもらおうと思うのです。お父様はいかがお考えですか?」


「確かに、今アセロラのジュース、ゼリー、化粧品を作っているが、ジュースとゼリーを先に出すのか。なるほど、ふーむ。化粧品はまだ改良の余地があるのでじっくり実験したいが、そうだな、ジュースとゼリーはすでに美味しいとお墨付きをもらっている。分かった、今回は試飲試食をしてもらい、後日売り出そう。大いにオルコット領産の美肌・貧血効果のジュースとゼリーです、と宣伝してくれ。そのうえでアンケートを取ってほしいんだ。もっとこうしてほしいという意見を聞きたい」


「ふふふ、お父様も皆さんの意見を取り入れて、より良い商品にしたいのですね」


 娘の褒められて照れている父親。この家族も自分の意見を言い、そして相手の真意も尊重できる人たちだ。良い家族だ。


「ところでケビン。私も商会を手伝ってみたいな。今誰が来ているんだ?」


「お父様、こちらの仕事は大丈夫なのですか?」


「ん?ああ、パトリックがすでに領地のことを手掛けている。この前、戻ってきたパトリックとブライアンが精霊の森に魔力奉納に行っただろう。そして、カルコーマの糸をケビン君が見つけてくれ、大忙しなのだ。そこへパトリックが戻ってきてくれたのだ。パトリックの妻と子供を連れてオルコット領へ戻ってくれたのだ。不仲と言われた私達だが、怒涛の忙しさで、会話をし、だんだん打ち解けることが出来たのだ。まだぎこちなさもあるがな。孫も可愛い。じいじ、じいじと言ってくれて可愛いのだ」


 なんだか好好爺がいるぞ。でも手伝いに来たいのか。


「今日はライアン様、ウェルス様、オスカーお祖父様がお酒部門を、クラリスお祖母様、ジェラルディン様が美容部門を手伝いに来ています」


「は?陛下達がいらっしゃっているのか?」


 僕は静かにうなずく。変装していること、リルと精霊達の結界が張られているので安全面は大丈夫であることを伝えた。


「はははは、本当に規格外なことだな。でも安全面が確立されているなら安心だ。それにしても入れない輩がいるのだな。そろそろアレが出てくるのではないか」


 アレとはポロレスだよな。来るかな?ガーゴイヤ商会の関係者がまた来るのか!それによりポロレス登場なるか!


 やめて、フラグを立てないでヴィンセント様!

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