213 イザークの変化
僕の言葉、心のマエストロになるんだーーーー、がガゼボ?に響き渡った。
誰もがマエストロとは何?となるだろう。
「えーと、マエストロとは芸術の巨匠とか音楽家の指揮者という意味なのですが、音楽や芸術やそのほか、卓越した何かで先駆者みんなの心を扇動するというか、まぁそんな感じです。だからイザーク、これ弾いて!」
僕はマジックバッグから、この前作ってもらったトランペット、バイオリンそしてピアノを出した。
「さあ、イザーク、僕が弾くから聞いて弾けるかどうかやってみて!」
「ケビンが弾いたのを聞いて、僕が弾くの?えっ?できるの?」
「イザークならできる。よろしく!」
イザークはあっけに取られているし、皆もポカーンとしている。まずピアノからだ。最初はゆったりと、そしてルーナに聞かせてあげたノクターンを披露。最初はゆったりと後半強く、流れるように弾いた。それから、ラカンパネラを弾いた。
「イザーク、どう?頭に響いた?なにかひらめいたことある?」
「うん、弾いてみる。頭の中で音楽が形になっているんだ」
音楽が形って何?やっぱり、芸術スキルがあると耳で聞いただけで弾けるのか?イザークは無心で弾き続けている。まるでベートーヴェンやショパンが憑依したかのようにって音楽室に飾ってあったのを見ただけだが、映画で見ただけだが誰かが乗り移ったようだった。
弾き終わった瞬間、拍手が沸き起こった。ジェラルディン様は泣いていた。
「イザーク、素晴らしいわ。あなたはこんなにすばらしい、感動できる音楽を奏でることができるのね。素晴らしいわ」
「イザーク、素晴らしかった。イザークのスキルは皆を感動させるスキルだ。こんな素晴らしいことはない」
フェルおじちゃんとジェラルディン様はイザークを抱きしめていた。イザークは恥ずかしそうに抱きしめられていた。さっ、次次。僕は余韻なんてぶち壊すようにイザークをせき立てた。
「イザーク、次だよ。今度はこれ!バイオリン。また弾くから見ていてね」
「え?次はそれ何?」
先ほどのラカンパネラはバイオリンでも弾くことできて、ピアノと合わせればちょっとした演奏会ができる。そして曲はチャルダッシュ、ユーモレスク、これもピアノと演奏ができるので耳で覚えてもらおう。
「イザーク、今度はどう?できそう?」
「や、やってみるよ」
ふふふ、イザークのバイオリンと僕のピアノ演奏だ。まずはイザークのバイオリンを聞いてからピアノで伴奏。イザークは弾きながらびっくりしているけど、僕のピアノに合わせてきた。すごいな、イザーク。弾き終わった後は盛大な拍手。執事、侍女、メイド、厨房の人、騎士達が集まってちょっとしたリサイタルになった。ブラボーだ!誰も言ってくれないけど、この世界にブラボーなる言葉はないがブラボーであーる。
皆素晴らしい、すごいのと絶賛だ。イザークのスキルはすごいんだぞ!僕が鼻高々だ。
メインのファンファーレ。競馬の時にアンファーレは必要。
「イザーク、今度はこれ!}
トランペット!先に僕が弾く。次がイザーク。そして重奏。競馬っぽい。
「イザーク最高だよ。イザーク、これらを楽譜に落とし込まないかな?今度王都で音楽スキルや絵のスキルを持った人と面談するんだ。イザークも一緒に面談をしてほしいんだ。今はできなくても将来的にすごい人になると言う人を発掘したいんだ。勿論、活躍の場を提供するよ。どう?一緒にやってほしいんだ」
「ぼ、僕はずっと役立たずだと思っていた。芸術スキルなんて何にも役に立たないと思っていたんだ。でも今日楽器に触れ、音楽に触れ、みんなが僕の演奏で感動してくれたことがうれしかったんだ。うん、ケビン、僕ケビンと一緒に音楽をしたい。こんな僕でいいの?」
何を言っているんだ、イザーク。自信を持て、自信を!こんなすごいスキルうらやましいぞ。そうだ、芸術スキルだから絵も描いてもらおう。
「イザーク、僕が見本の絵を描くから絵を描いて欲しいんだ」
俺はマジックバッグから色鉛筆と画用紙を出し、馬の絵を描いた。俺が描いた絵を見たイーサン兄様、ロナウド兄様、イザークは不思議がっていた。
「ケビン、これは何を書いたのだ。黒い物体?魔獣?」
ガーン、分からないのか?馬を書いたんだけど。はっきり言って生産スキルで絵は描けなかった。想像上作ることはできる。でも自分で描くとなんだこれ?となる。絵心はなかった、ということだ。
「う、うまをかきました」
小さい声でボソリとつぶやいた。
「「う、馬?ケビン、絵心はないんだな」」
人はなんでも完ぺきにこなせる人なんていない、と思う。中にはそういう人がいるかもしれないが俺は違う。剣術、絵心の才能がない。魔法属性もない。でもいいんだ。皆に丸投げすればいいだけなんだから悲観することは全くなーい。開き直ってそう言ったらあきれられた。お前のその神経の図太さに感服すると言われてしまったよ。そしてみんなが賛同するように頷いている。
「ははは、イザーク、ケビンのように図太くなれ。そして行き詰まった時や不安な時など一旦立ち止まり、そして相談してほしい。一緒に考えていこう、イザーク」
「ち、父上。はい!」
はにかみながらもにこやかに、そして涙を目にためて、フェルおじちゃんと抱擁していた。
「で、ケビン、イザークはケビンのところに滞在させるのか?」
フェルおじちゃんの眼力が詰め寄ってきた。でもイザークを心配している眼だ。そうだ、皆隣国に帰ってしまうんだよね?家族と離れ離れになるのはやだよね。まだ小さいから不安だよね。
「イザーク、家族と離れると寂しいよね?イザーク、まだ小さいから両親と離れるのは寂しいよね」
「小さいってケビンの方が小さく見えるよ?僕は大丈夫だよ。ケビンがいれば。でも兄上がいてくれた方が安心かな」
「あははは、いいよ、イザークのお目付け役として一緒に滞在するよ。いいですよね、父上、母上。ちょうど上級学園は休みに入るのでこちらにその間はいられます。勿論課題は滞りなく致しますので安心してください」
隣国は通常の学園卒業後研究に特化した上級学園に進級できるようだ。難題の試験を突破した成績優秀な生徒だけが入れる学園だそうだ。フィルお兄ちゃんすごいね。
「そうだな、その後はケビンはうちに遊びに来ればいい。その時に相談に乗ってもらおう」
えぇ?僕はフェルおじちゃんをガン見した。何言ってるの?そういえば相談って何?大事案件ではないよね?俺は父様、イーサン兄様、ロナウド兄様を見て、一緒に行ってくれるよね?と目で説いた。
苦笑いをする3人だったが、頭をポンポンして、安心しろと言ってくれた。よかった、僕は一人はイヤ。
「僕も行く!」
安定のレオンだった。これもアルお兄ちゃんが一緒だろうなって一国の王子が行っていい案件なのか?そこは大人が考えてね。とりあえず、競馬に向けて少し前進した。
そしてその夜もお祖父様達を迎えに行き、のんびりゆったり静養しました。1週間ぐらい滞在し、今後も家族の交流を約束して、それぞれ帰っていった。勿論、隣国に送って行きましたよ。クルさん、ダメなものはダメと言ってね。安請け合い禁止だよ!お菓子とご飯に釣られないように分かった?気持ちよくブラッシングされているクルさんでした。トホホ。
ちなみにケビン様語録に書き加えました、と料理長以下料理人たち。我々は食のマエストロになります!と豪語していた。やめて、その語録、ほんとやめて、恥ずかしい。




