211 ケビンちゃーん!ゾゾっ!
朝、ルーアンに叩き起こされた。もう少し寝ていたいよ。とりあえずルーアンに可愛くお願いしてみよう。
「ルーアン、もう少し寝ていたい、だめぇ?」
「皆さん、すでに起きていますが、ケビン様だけですよ」
キビキビとした返しだ。有無を言わせない。それにしてもみんな起きているの?周りを見るとあれ?いない。みんなベッドにいないよ。なぜだぁ。
「ちなみにケビン様、起こしたけど起きなかったと皆さんが言っておりました。起きなかったケビン様が悪いのです」
全く気づかなかった。小さい声で起こしたのかな?
「違います。揺さぶってました」
ルーアンくん、僕は喋っていないけどこころの声がわかるのか?
ため息が聞こえた。ルーアン、幸せが逃げるよ。ギロリと睨まれたので目を逸らす。心の声を読めるのか、そんな鍛錬をしていたのか?
「そんなわけないですよ。単にケビン様の考えは丸わかりです」
うそだー。
「さあ、皆様お待ちです。さっさと朝食をとり、陛下とルシアン様とクリスフォード様を王城へ送迎となります。さあ、行きましょう、ケビン様」
ルーアン、雑!僕の扱い雑。だって髪の毛を水で濡らしてとかしただけだから。身だしなみ大事!
「早く起きてください」
はい、すみません。起きない僕が悪うございました。
みんなに朝の挨拶をして、急いで食べようとしたがお祖父様にゆっくり食べて良いと言われてた。仕事に行きたくないのかな?ではゆっくり食べよう。
「くすくす、お祖父様、仕事に行きたくないの?僕、ゆっくり、ゆっくり食べるからね」
「こらケビン、お祖父様を揶揄うのでない。お祖父様はゆっくり朝食をみんなで食べたいだけだよ」
「そうだよケビン、私達もゆっくり美味しい朝食を食べたいだけなんだからね。たださ、こっちに来てしまっただろう。奥さんに絶対怒られそうだよ。なぜ自分たちを連れて行かないってね」
「兄様、私もです。絶対怒られます」
ルシおじちゃんとクリスおじちゃんは何も言わずにこちらに来てしまい、奥様を置いてきてしまったから怒られるだろうね。プププ。
「ケビン、笑っていないでしっかり食べなさい。大きくならないぞ」
くそー、そういう返しできたか!いいもん、3人がお仕事をしている間に奥様を連れてきてしまおう。ニヤニヤ。
「ケビン、戻ってきたら話があるんだ。相談に乗ってくれ」
おっ、フェルおじちゃん、なんだろう、相談って?訝しむ僕にジェラルディンさまがケビンちゃーん、あなたが頼りよ、相談に乗ってねと言われた。なんの相談?怖いんだけど。絶対ジェラルディン様は無理難題を言ってきそうな気がする。父様ヘルプミー。王都商会立ち上げと競馬開催、音楽家と絵描きの面談の後にして欲しい。どちらが優先順位が上?どちらなんだ?
父様に首を振られた。ジェラルディン様が優先なのか!隣国に僕行くの?保護者同伴でお願いします。
しばらくしてお祖父様達の準備が整った。さてクルさん、お祖父様達を送っていくよ。
王宮では事務官達が手ぐすねを引いて待っていた。連行されるように行ってしまった。
振り向きざま、今日も迎えにきておくれと言って奥の執務室に連れて行かれた。事務官強し!あれ、ボロレスはどうした?
なんでも、自分がいないと仕事にならないだろう、ふふん!と言って本日は登城していないそうだ。ふーん、仕事というのは自分がいないとダメと思っていても、なんとかやっていけるものだよ。はじめは戸惑いや仕事が遅いと思われるけど、慣れれば普通に仕事は回るんだ。あなたがいなくても仕事は回っていくものなんだよ。
念の為、お祖父様に帰ると挨拶して帰ろう。書類の山で姿が見えない。
「お祖父様、ルシおじちゃん、クリスおじちゃん、帰るね。うーん、大変そう。そうだ!これあげるね」
僕は事務官を含め、みんなの分のそろばんを出し使い方を伝授した。やっていくうちに間違っている箇所を数箇所見つけた。なんだ、この間違えだらけは!それも多く予算をもらおうとしているのがわかる。
「こんなアバウトな予算取りでは国民が暴動を起こすレベルですよ。貴族は国民の税収を預かっているのに、こんな私利私欲なことをするなんて、ボロレス公爵がこれをやっていたらそのまま通るのでしょうね?今までだって通していたのでしょうね!」
お祖父様達が俄然やる気を出し不正箇所を探し出している。
「「「ケビンちゃーん」」」
ガシッと抱えられ、ルシおじちゃんとクリスおじちゃんの間に座らされた。目の前にはお祖父様。そして事務官が僕の補佐に入る。
クルさんは悠々自適にお菓子を食べゴロゴロしている。侍従にブラッシングされたご満悦だ。
オラはおじちゃん達の奥様を連れて帰りたいだけなのだ。オラ、少しでも減らせるように頑張るよ。オラのソロバン技をとくとご覧あれ!トホホ。
ケビンちゃーんは恐ろしい呼び方だ。裏がある呼び方なんだ!帰ったらジェラルディン様とフェルおじちゃんの話を聞かなければいけない。なんの話だろう。ふと考え事をしているとすかさず声がする。
「ケビンちゃーん、手が止まっているよ!」
僕は、俺は9歳なんだ!




