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207 偶然か必然か?

 僕達4人衆はそれぞれの兄様達の自転車の子供椅子に乗りピクニックに出発した。僕の前にはクルさん、レオンの前にリルさんがいた。女性陣のところから戻ってきたのだ。ピクニックとバーベキューと聞いてこちらに来たみたいなんだ。たぶん湖でリルは本来の大きさになる気でいる。皆に自分の本来の姿を見せてかっこいいと思われたいんだな。絶対。


 子供椅子に乗った俺たちはかなり恥ずかしい。僕達も1人で乗りたいのに。騎士たちも自転車だ。ソロゾロと連なって走行する。途中途中領民に会ってはお手振りをした。


「ケビンさま、イーサンさま、ロナウドさまー」


「みんな働き過ぎはだめだよ。休憩は絶対してね」


「ケビン様、今日のスパニッシュオムレツとBLTは絶品でした。デザートのベリームースケーキおいしかったです。いつもありがとうございます」


 ベリームースケーキは王都の西側地区で採れたベリーだ。それを使って今日のデザートだ。BLTはベーコンを少し厚くして、野菜マシマシ、マヨタマを入れてボリューム満点にしたのだ。勿論普通のサンドイッチやフルーツサンドイッチも提供。スープはミネストローネだ。野菜、小麦が豊富に収穫するので領民に還元だ。今度はカツサンドも作ろう。カツは分厚くするんだ。食べ応えのあるカツサンドにするんだ。


「フォーゲリアの領民達は生き生きしているな。楽しそうに仕事をしている。食事を提供しているのか?」


 アルお兄ちゃんがイーサン兄様に聞いていた。


「ああ、うちの領地は精霊様達が手伝ってくれるから豊穣なんだ。たぶん北地域も東地域、東地域の海も同じようになるのではないかな。育てている素材を領民達に昼食として提供しているんだ。もともと昼の提供は孤児院へ提供していたのだが、いつの間にか希望する領民達にも提供しているんだ。提供する集会所を作り、そこで皆が集まって食事をするんだ。自分の家に帰って食べてもいい。それは自由だ。集まることで困っていることはないか、体調はどうかなど状況確認ができる。数日集会所に来ない場合体調を崩しているのではないかと様子を見に行ったりしているらしい」


「色々考えて、そして領民を大事にしているのだな」


「そうだな、本当に苦しい時に頑張ってくれた領民達なのだ。今のこの状況を甘んじず、日々の暮らしに感謝して仕事をしていると言っていた。領民達に感謝しかないよ」


 うんうん、領民達に感謝だよ。だからより良い環境を作るために頑張るのだ。


 しばらくすると湖に到着した。木々に囲まれ水面がキラキラしていた。透明度抜群な湖だ。あれ、こんなにきれいだっけ?ルガリオ達が舞っていた。


「ケビン、湖の精霊達があいさつしたいってさ。初めて会うよね?」


「えっ、湖の精霊様がいるの?だからこんなにきれいなの?」


「そうだよ、海精霊や森精霊達と会ったのに、自分たちが会えないなんてと寂しがっていたんだよ。だからピクニックとバーベキューをするって聞いて楽しみに待っていたんだって。もう出てきていい?スタンバイしているよ」


 えーーーー、アルお兄ちゃんやイーサン兄様にどうするのか判断をまかせた。


「ケビン、クル、父上達を連れてきてもらえないか?俺達だけで会うのは気が引ける」


「クル、良いかな?」


「しょうがないわね」


 父様達がいるところへ転移した。酒を飲んでいたよ。大人はズルい!


「け、ケビン。いきなりどうした。びっくりするではないか」


「父様達は昼間から飲み過ぎです。母様達に制限してもらいますよ」


「ケビン君、いきなり転移してどうしたんだ?」


 ジェフおじちゃんがやんわりと聞いてきた。そうだった。


「ケンおじちゃん、父様、今湖でピクニックとバーベキューをしようとしていたのですが、湖の精霊達が挨拶したいとスタンバっているみたいです。僕達だけ挨拶すると、報告がなかったと言われそうなので、報告に来ました」


「「「「は?みずうみのせいれい?」」」」


 僕は深々と頷いた。そう湖の精霊がいるんだよ。


「挨拶したいって」


 僕はマジックバッグからお酒を中和するポーションを渡した。これを飲んでシャッキっとせんかーい。その後母様達のところへも行き一緒に湖まで転移した。


「おまたせ」


 皆ガクッとしていた。緊張しているみたいだ。


「ルガリオ達、お待たせ。湖の精霊様達は待ちくたびれちゃった?」


「全然平気だよ。じゃあ、出てきてもらうよ」


 森がざわざわとし、水面が波打っている。どんな演出だ。所々渦が巻いている。おおー。


「んちゃ!」


 んちゃ?ちっちゃいかわいらしい精霊達。


「ちわっ、ぼくたち、このみずうみからうまれたんだ。よろしくぅ」


 生まれたばかりなのか?小さいし、言葉が可愛い。んちゃ!って、キーンって走らないのか?おはこんばんちはって言わないのか?長老はいないということか?水精霊の長老様が取り纏めるのだろうか?


「ぼくたちはみずのじっちゃんがめんどうをみてくれるんだぁ。よろしくね」


 しばらくすると湖が大きく渦を巻いている。今度はなんの演習だ?魚が出てくるのか。


「やぁ、みんな揃っておるな」


 水精霊長老ウォールッシュ様だ。


 最高礼を取るみんな。


「良い良い、初めての者もおるがそんなことをせんで良い。アルバート、久しいのぉ。森のを紹介して以来だな」


「はい、お久しぶりでございます。あの本日は私の父上達親族が集まっております」


「ほっほっほ、次期国王じゃな。いい魔力を持っておる。アルバートもみんないい魔力を持っておるぞ」


 びっくりしているケンおじちゃんではなくここでは王太子殿下ケンドリック様だ。


「ありがとうございます、水精霊の長老様。このような機会が巡って来ようとは夢にも思いませんでした。感慨ひとしおの想いでございます。このような精霊様達に触れ合うことができ、改めてこの国を統治するものとして、より良い国づくりを目指してまいります」


「ふぉっふぉっふぉっ、堅苦しく考えるな。皆が明るく楽しくしておれば、我々の糧になる。それだけのことじゃ。パパさん、今日の夜は皆でそちらに行くぞ。また、新たな酒が北から運ばれてきたであろう?楽しみじゃな」


 うちの父様にお酒の催促をしているよ。やっぱりスパイがいるんだ!スティングレイ辺境伯領から新酒を届けると連絡が入ったのは今日の朝。情報が漏れている。


「ところで、ケビン、アルバート。君らの魔力をこの湖と森に流してくれないか。地中に深く眠るものが目覚める兆しがある。アルバートの魔力に馴染むかんじだな。ケビンは魔力補完をして欲しい」


 ウォールッシュ様が何やら不穏なことを言っているのだが。地中に眠るものとは何?巨大モグラがネズミか一体何?


「父上、やってみます。ケビン、助けを頼む」


 アルお兄ちゃんは恐れない。うそーん。僕怖いんですけど。何が出るのかな?


 アルお兄ちゃんは地面に手を置き魔力を流している。俺も一緒に魔力を流した。キラキラと光っている。周りのみんなは息を詰めて見守っている。


 地面にからゴゴゴゴゴゴゴと地鳴りがしている。何?何?


 女性陣は旦那様に抱き寄せられている。お祖母様は母様と身を寄せている。


 湖からザバーンと出てきたのは卵?卵が宙に浮いている。


「アルバートよ、魔力を流し育てよ。そうすれば産まれるであろう」


「長老様、これはなんの卵ですか?」


「出てきてからのお楽しみじゃ!」


 建国の物語には精霊とドラゴンということはドラゴンだな。みんなそう思っているだろうな。


 コツン、イテッ。


「ケビン、お楽しみじゃよ」


 長老の杖で殴らなくったっていいじゃないか。痛い。父様のゲンコツよりは痛くないけどね。

 

 アルお兄ちゃんはみんなに囲まれていた。大事そうに卵を抱えている。ケンおじちゃんはアルお兄ちゃんの頭をワシャワシャしていた。俺はベビースリングを渡した。腕が疲れて卵を落としてしまうと大変だからね。結局、バーベキューをさっさと食べ、湖で遊ばず屋敷に帰ることにした。もちろん転移でね。


 偶然か必然か!





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