203 ゆっくりしたい
男そっちのけで話が進んでいるようだ。そこでジェファーソン様と初めましてと改めて挨拶した。
「ケビンくんだったよね、ありがとう。あんな笑顔で楽しそうなフランを見たのはいつ振りだろう。笑顔のフランが一番美しいのだ。そう思うだろ?」
えっ?回答に困るんだけど。確かに綺麗だけど、うちの親戚達は夫婦仲が良くていい。うちの両親、お祖父様達も仲が良すぎるけど、家族みんな愛情深くて心地よい。
「ところで、領地に行くのは転移で行くということなのか?これから王宮に行くのも転移だよな?魔力量大丈夫なのか?」
「えーと、減ってないので大丈夫です。王宮に行くなら荷物とかをこのマジックバッグに入れて持ち運びしましょう。これに入れて荷物を入れて王宮に行きましょう」
マジックバッグ出し過ぎだな。まあいいか女性や貴族は荷物が多いのが当たり前だ。気軽に行くためにはしょうがないことだ。一人納得するケビン君であった。
あとは侍女さんや護衛騎士達、何人連れて行くのですか選定を頼んだ。母様達が話が終わるまでに準備を完了させたい。
「あちらにジェラルディン様の旦那様のフェルナンド様もいらっしゃってます」
「え?あいつ一緒に行くと言っていたか?ん?まさか隣国まで転移したのか?」
僕は目をそらせるしかなかった。しかしクルさんが隣国まで一瞬で転移して連れてきたことを話していた。
「はぁ、ケビン、規格外だよな!言われることないか?」
「いつも言われています。そして僕のやることなすこと全て?いや少し大事になっているぐらいなので、うちの父様は心労で禿げると思います。おでこが広くなって、太陽にあたるとおでこがピカッとするのです。かわいそうに。今密かに毛生え薬でも作ろうかと考えているのです」
「あははは、それはいいな。毛生え薬があれば喜ぶ男達が大勢いると思うぞ。ケビン、みんなを巻き込んでいるんだな。だからボールドウェッジ公爵殿が今忙しそうにしているのだな。噂ではチョコ?というデザートを売り出したらしい。それが大人気みたいだ。あとは馬の競争をすると言っていたが、ボロレス公爵殿のところで先に行ったが皆つまらなかったと言っていたぞ。だからボールドウェッジ殿のする馬の競馬は大丈夫なのかと心配になっていたんだよ」
「馬の競争は大丈夫です。大々的なお祭りですから、ボロレス公爵様のところで催した馬の競馬とは比べ物にならないと思います。あー、ジェフおじちゃん、チョコ食べますか?疲れた時には甘いものを摂取する方がいいですよ」
僕はマジックバッグからチョコとチョコのカップケーキを出して渡した。
ジェフおじちゃんと言われ、キョトンとしていたが大笑いしていた。
「ジ、ジェフおじちゃんか、あははは。君のような小さい子にはおじさんだしな、まぁいい。そしてこれがチョコというものなのか?」
渡そうとしたところで待ったがかかった。チョコという言葉に女性陣が敏感に反応したのだった。
「それが今ボールドウエッジ公爵様のところのチョコなの?持っているの?」
母様が困った顔をしてフランソワ様に説明をした。考案者はケビン。材料はボールドウェッジ領とうちの領地にあることを教えた。うちの料理長が美味しいデザートを作ってくれますよ。そして食べて気に入ってくれたのだろう、領地に来たらチョコのデザートを出すことを約束していた。それから領地に来る話となった。
「まぁ、嬉しいわ。ジェフの仕事の都合もあるけどいつ行けるのかしら」
「まだ話が出たばかりなので、家を作ってからでいいですか?どんな家がいいですか?使用人は何人連れてきますか。それにより家の大きさと間取りを考えないといけないので」
2人とも不思議そうな顔で僕を見ている。
「僕が作るのでどんな家をご希望かなぁと。自分で料理をしてみたいとか、絵を描きたい、ピアノを弾きたいなど要望に応えます」
「ケビン、そういえば君は今いくつなんだ?6歳ぐらいでよく口と頭が回るよ。小さいのに感心するよ。神童だな。ルークは苦労しているようだけどメルシーは大丈夫か?」
ろ、ろ、ろくさい!!異常事態発生!6歳に見える僕。マジか!
「うふふふ、お義兄様。ケビンに失礼ですよ。これでも9歳なのよ」
か、か、母様、これでもは失礼です。余計です。プンスコオコオコです。
「母様、ジェフおじちゃん、僕は9歳です。失礼です。もう母様までひどいです。僕はプンプンです」
ひょいっと目線が高くなりジェフおじちゃんに抱っこされた。
「ごめんな、ケビン。9歳のれっきとした紳士だな。私達のために考えてくれているのは分かっている。本当にありがとう。ケビンはみんなを幸せにしたくて奔走しているんだろ?それがみんなを巻き込み、大きくなり幸せに導ているのだと思う。巻き込まれたみんな幸せになっているのではないか。だからこれからもどんどんみんなを巻き込んで幸せにしていってほしい」
やっぱりジェフおじちゃんは未来図が見えているのか?でもみんなで幸せになることはいいよね。笑顔が大事なんだよ。そうすれば精霊、妖精、神獣だってそして幻獣だってみんなみんな楽しくなるんだ。
「そうだね、ジェフおじちゃん。うちには精霊や妖精、幻獣のクルやレオンの神獣フェンリルのリルがいるから癒されると思うよ。バラの精霊がたかびし、あっいや気高いんだけど、綺麗だよ。お庭を散歩してもいいし、筋トレもできるよ」
またポカンとされた。
「ごめん、ケビン。精霊様がいらっしゃるのか?妖精までいるのか?えっ?」
「あれ?母様、精霊、妖精のことを言ってないの?」
あら?っと首をかしげる母様。リルクルの事しか言ってないか?まあいいか。領地に来れば色々舞っているし。と、考えが精霊達が領地を舞っている想像をしていたらあの子たちがやってきた。来てしまった。
「ケビン、僕達の説明が雑すぎる。遅いから遊びに来たよ。王宮でも心配しているよ。まだか、まだかって。だから迎えに来てあげたよ。みんな待っているよ」
フランソワ様の顔を覗き込み、早く行こうよというヒメたち。ルガリオ達はクルさんと一緒にお菓子を食べている。自由過ぎるよ、この子達は。誰、保護者。
「ケビン、精霊様なのか?本当に規格外だな、君は。しかし向こうでみんなが待っているのか。フラン、向こうへ行こう」
「そうですね、みんなが待っていますね」
笑顔のフランソワ様。よかった、暗い顔より笑顔で家族に会った方がいい。
それから護衛騎士、侍女たち数人を連れ、僕達は転移した。
もう、ゆっくりしたいよ。お願い、ゆっくりさせて!




