201 深刻な事情
母様のお姉様、元第二王女様、フランソワ様はスチュワート公爵家嫡男ジェファーソン様と大恋愛の末結婚した。第一子出産の際難産で、産まれてすぐ赤ちゃんは天に召されてしまった。その後は子供ができないことに塞ぎ込み、とうとう離縁するような話になっているらしい。この国は一夫一妻制。側室、第二夫人、愛人、妾は許さない。だからジェファーソン様の周りが離縁して、新たな妻をと進言していることに心を痛めているのだった。2人は子供がいなくても2人でやっていくと周りに言っているがこれは親族が許さない。フランソワ様に直接辛辣に言ってくる親族やジェファーソン様に自分の娘を見初めてもらうように接触してくる貴族もいるらしい。そして最近のフランソワ様は自分が身を引けばジェファーソン様に子供が出来、幸せな未来があると思うようになってしまったということだ。
「ここに招待したのだが、皆子供がいる中で自分だけがいない寂しさでみんなに気を使われてしまう。そしてみんなに子供ができていることで余計自分が不甲斐ない思いで、みんなに合わせる顔がないと言っているのだ。メルシー、フランソワがごめんなさい、会いたいのに会えない、本当にごめんなさいと言っていたのだ」
確かに母様とアリステリア様は最近赤ちゃんを産み、第3王子の奥様は身重だ。子供達も多い、この状態で辛いよ、ね。
「お姉様、知らなかった。お姉様が辛い思いをなされていたなんて」
母様だって周りからひどいことを言われていたけど、自分には家族がいたから乗り越えてきたと言っていた。でもフランソワ様は旦那様を今、自分から遠ざけようとしている。ダメだよ!1人で考えると余計マイナスなことを考えてしまうんだ。
よし!
「母様、フランソワ様と旦那様をうちの領地に招待して温泉に入ってもらいましょう。温泉で心と体癒し、そして穏やか過ごしてもらいましょう。2人で仲良く過ごしてもらいましょう。気分転換が必要です。フランソワ様、1人だけで考えるとマイナスな考えしか出てこないので、2人で仲良く過ごしてもらいましょう。どうですか?」
父様と母様を見つめた。2人は顔を見合わせて頷いた。
「ケビン、ありがとう。そうね、お姉様達は気分転換が必要ね。領地の温泉に入って、くつろいでもらいましょう」
僕はレオンにお願いした。
「レオン、その時にリルを貸して欲しい。犬猫セラピーでリラックスしてもらうんだ」
レオンがいぬねこせらぴー?と首を傾げていた。みんなも首をかしげていた。
「動物に触れ合うことでことで、癒しやストレス解消になるんだ。2人にはそんな環境が必要だと思うんだ」
「まぁ、ケビンちゃん、あなたって素晴らしいわ。そのおんせん?というのは私たちも入っていいかしら?」
えっ?ジェラルディン様?あのー、うちの領地に来る気ですか?来る気満々ですよね!
「あの、今はフランソワ様の心身の癒すためにした方がいいのではないかと思うのですが」
「でも、たまには姉妹での語らいも必要だと思うのよ、ねっ、メルシー。ほらジェファーソンは忙しいから仕事に行かなければならない時姉妹が近くにいた方がいいと思うのよ。1人になってしまうじゃないの」
母様に一任だ。僕には抵抗できません。母様はお祖母様に相談していた。ここでも改善ができている。
「ケビン、さっき隣国に行ったばかりだけどお姉様のところに行けるかしら。クルちゃん、どう?」
どうしてクルに聞くの?母様。
「いいわよ、お姉さんとその旦那さんを連れてくればいいのね。そして領地に行けばいいの?何人領地に行く?護衛騎士や侍女さん達もいくとかなりの人数よね。分散していけばいけるわね。それにケビン家を作らなければいけないでしょ。温泉引いたりするでしょ。日にちは決めた方がいいわよ」
クルさんや、君が仕切ってどうするの。しかしさすが年の功。経験値が違いすぎるの。ググっ、頭に乗って爪を立てているよ、この子は!
もし領地に来てくれるなら本当に家を作らなければならないなって、僕、転移ばかりしているんじゃないか?いいのか、こんな転移ばかりで。父様、怒るかな?それとも便利に使われてしまうのか?ん?やっぱりタクシー代貰おうかな。小遣い稼ぎにはいいか。老後の資金を今からコツコツ貯めていけばいいんじゃないのか?
「パパ、ケビンがまた邪な考えを持っているわよ」
「ケビン、後でお前の考えを聞くよ」
父様のいつもの呆れ顔。ははは。なぜクルはみんなに言いふらすんだよ。僕は将来の生活設計を考えている?んだよ。老後にはお金は大事なんだよ。それはさておき。
「母様、とりあえずお姉さんを連れてきますので先ぶれよろしくお願いします。いきなり行ってびっくりされても困るので」
「私とお母様が一緒に行くわよ。そして説得してくるわ」
母様とお祖母様?うそーん。お祖母様は王妃様だよ。いいの?
「クラリス。君が行くのは賛成できない。私が行ってくるよ」
お祖父様もダメですよ。あなたは国王陛下です。
「あなたではだめです。女性には女性の方がいいのよ。私はあの子の母親よ。あの子に寄り添ってあげたい。今まで私は子供達を守ることが出来なかった。下位貴族からの王妃だから、王妃としての責務をこなさなければということに重圧に耐えていて子供達のことまで考えることが出来なかった悪い母親よ。今からでも母親として寄り添っていきたい。メルシーもつらい思いをさせてしまった。私も下位貴族の出だからといつも言われつ付けていたの。必死に耐えてきたわ。ボロレス公爵に結婚でお世話になってしまったから強いことが言えず、子供達に寄り添ってあげられなかったわ。もう子供達に悲しい思いをさせたくないの!お願い、フランソワの元に行かせて」
お祖母様も王妃としての重圧と下位貴族出の嫌味を言われていたのか。
「クラリス、ああ、なぜ早く言ってくれないんだ。もっともっと君の憂いを取り除くことをしたのに」
「オスカー、あなたは本当に良くしてくれたわ。これ以上は自分で何とかしなければと思っていたの。それによって子供達を蔑ろにしてしまったことは一生自分を許せないわ」
「クラリス、それは私だって同じだ。一緒に子供達に償っていこう」
「オスカー。ありがとう。でもフランソワのところへは私が行くわ」
今は国王、王妃ではなく、愛し合う男女というかんじだ。本当に仲がよろしいことで。そしてお祖母様に強い意志の表れだ。お祖母様に任せよう。
そうだ、フィルパパ、帰らなくていいのか?挨拶したら帰るんじゃなかったのか?
「フェルナンド様、帰らなくて大丈夫ですか?すぐ送りますが」
「いや、数日滞在する。フォーゲリア領に行くかもしれないのであろう?もしくは商会王都店を訪問したい。しばらく滞在することにする。帰る時頼むよ」
ジェラルディン様の肩を抱きしめ言っているのはみんな送れってこと?やっぱりタクシー代徴収するのはありではないか?ではまずお姉さんの心と体を癒さなければ。頑張るぞ!
「母様、お祖母様、行きましょう。クル、行くよ。では行ってきます」
ピンクルを抱っこして出発だ。




