200 びっくり仰天ですね
フィルパパが準備万端でやってきた。
「さぁ、いこう」
「あの、向こうに魔鳥で先ぶれしないのですか?」
「ん?ジェラルディンをびっくりさせてやろうかと思うんだ。まぁ、国王陛下であるお義父上に失礼かと思ったが皆をびっくりさせてやろう、あははは」
クルさんや、フィルパパ、フィルパパ従者の方、護衛騎士2人、フィルお兄ちゃん、料理人2人、俺入れて8人ですが本当に本当に大丈夫ですか?どこか異次元空間に置いてけぼりは嫌ですけど!
「さあ、ケビン、バカな心配していないで行くわよ。パパッと行けるから安心して。ほら抱っこして!」
抱っこは必要なのか?ピンクルを抱っこして、では皆さん行くよ。
「ど、どきどきしますね」
僕もドキドキだよ。異空間放浪はイヤだ。料理人さん、大丈夫?さて、アッという間に着きますから大丈夫ですよ。
行きます。
「クル、じゃあ、お願い」
一瞬で戻ってきた。いきなり僕たちが現れてびっくりしていたが、きゃー、とジェラルディン様の声が聞こえた。見るとフィルパパに抱きついていたよ。はいはい、仲がよろしいことで。
「お義父上、お久しぶりでございます。此度は転移をさせていただき、こちらに来られることができました。クル様にご助力いただき感謝申し上げます」
ジェラルディン様の肩を抱き寄せ、お祖父様に挨拶していた。
「相変わらず仲がいいな、お前たちは」
「お義父上にはかないませんよ」
なんだよ、この夫婦仲良しアピールは。しかしジェラルディン様の肩を寄せみんなに挨拶している。
王太子ケンおじちゃんとアリステリア様の結婚はアリステリア様が押しかけ結婚。その結婚式でジェラルディン様を見初めて、半ば誘拐のような形ですぐ結婚したフェルナンド様。ドタバタ劇があったのだそうだ。他国の方との結婚はこんな形で結婚するものなのだろうか。
「ところで、義父上。何がどうなっているのですか?いったいこの国で何が起こっているのですか?」
またあのくだりを言われるのか!
「ことの始まりはケビンだ!」
えー、お祖父様、断言しないでよ。ほらあの眼力で見られてしまった。精霊様からリルクルコンビまでの話。
フェルナンド様がお腹を抱えて笑っています。この人は感情豊かな方なのでしょう。金縛りにあったかのように目力が強く、ジェラルディン様への愛情表現は大胆だし、そして笑い上戸。
「本当になんと言うか、発想が豊かなのか?規格外なのか、突拍子もないのか、常識はずれなのか、ケビンといると楽しいな。うちの国に来ないか?うちの子にならないか?」
はい?《《うちの子にならないか》》とは?これはアメリカンジョークだな。僕はいま忙しいのだ。そんなジョークに付き合っている暇はない。
「フェルナンド様が、ケビンはうちの子ですので他所にはやらないですよ」
「あははは、すまんすまん、ルーク。ちょっと言ってみたかったのだ。まぁ、本気にしていいんだよ、ケビン」
ロックオン!いやいやいや、丁重にお断りいたします。僕はうちの家族が大好きなので行きませーん。そのことはきちんと言わないとね。
「フェルナンド様、僕は家族が大好きなので家族の元を《《ぜったい》》離れません。僕は脛を齧って生きていくのですから、そんなわがままを言えるのは父様、イーサン兄様、ロナウド兄様ぐらいです。父様には100歳まで働いてもらわないといけないので、父様を労わりつつ働かせます。なので、イタッ、うー、父様痛いですぅ」
お約束のゲンコツ。イーサン兄様、ロナウド兄様はまたかという呆れ顔。母様は困った子ねと頬に手を当てて微笑んでいる。
「それに、アリス、お前、肌がきれいすぎないか?ん?若返ったか?いや、髪の毛が美しくなったのか?一体、これは」
フェルナンド様がアリステリア様を見て驚いていた。水精霊様の瓶の水をほんの少し入れただけでこの効き目だ。あまり使わないでおこうと心に決めた化粧品だ。一応、アリステリア様への献上品だ。うちには温泉があるからそちらで傷やシミや潤いなどがまかなえてしまう。これは内緒のことだよ。
「うふふふ、どう綺麗でしょう。うらやましいでしょう。ジェラルディンは家族割をケビンがしてくれるでしょうがフェル、あなたは正規値段を支払いなさい」
アリステリア様、フィルパパを煽らないでください。僕が関りがあると思われたくないのですが。それにしても2人は仲が悪いのか?
「ケビン?これもケビンが関わっているのか?」
目力が刺さる。俺は首を振る。
「もうすでに僕の手から離れ、母様やボールドウェッジ公爵様のところのアニーベル様、アンジュ様が中心となって美容部門を取り仕切ります。僕は何もしていないです。売買の関係は商会長のロナウド兄様か母様に言ってください」
良しこれで丸投げで来た。僕は言うだけ言って後は母様達にお任せなのだ。作るのは美容部門の錬金術師と薬師、魔道具は魔道具士エリン達がいる。皆に頑張ってもらおう。
「ふむ。ロナウド、商会を王都に立ち上げるのだな?見学させてもらっていいだろうか?」
「はい、ジェラルディン様も帰国前に行きたいとおっしゃってましたので、オープン前ですが案内させていただきます」
「よろしく頼む。ところで、第二王女であったフランソワとジェファーソンはどうしたのだ?」
そうなのだ、母様のもう一人の姉フランソワ様がいないのだ。旦那様はスチュワート公爵 ジェファーソン様なのだ。どうしたのだろう。また姉様、隣国料理人を転移で連れてくる仕事があるのか?タクシー代払ってもらおうかな。




