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199 これもこれもあげます、不測の事態用です

 僕は考えた。考えて考えてフィルお兄ちゃんにマジックバッグを渡すことにした。不測の事態に備えるためだ。みんなにそんなことを言って渡しているが、誰か一人でもいいから持っていれば何とかなる?と思っている。登録した人以外が開けるとただの袋だし、まぁ大丈夫だろう。


「フィルお兄ちゃん」


 フィルお兄ちゃん?キョトンと僕を見るフィルズ様。アルお兄ちゃんと言ってあるからフィルお兄ちゃんでもいいかなぁと思ったけどダメかな。フレンドリーすぎたか。


「あははは、フィルお兄ちゃんか。確かアルバートのことはアルお兄ちゃんだったな。ではダニエルはダニお兄ちゃんか?」


 いや、ダニお兄ちゃんは嫌かな。この世界にダニがいるかわからないけど元日本人だった僕にはダニとは言えないよ。


「そこは追々考えます。それでですね、フィルお兄ちゃんも命の危険などありますよね?バレるかもしれないけど、僕が作ったとぜーったい言わないでくださいね。マジックバッグを渡します。これは時間停止機能がついてますので冷たいまま、熱いまま保存されます。これはポーション、解毒剤、媚薬を盛られたとしても効くはずです。それから、野外活動一式セット。テント、寝袋、魔道コンロ、大盤振る舞いで電動アシスト付き自転車?を入れておきます。あと家を入れてあるので広いところっ出してください。お風呂にシャワーをつけてあるので、よく取り扱い説明書読んで使用してくださいね。他の人が開けてもただの袋です。所有者しかマジックバッグの機能はしないので盗まれても機能しないので大丈夫だと思うのです。戻る機能はないので、捨てられたらしょうがないです」


 一気に捲し立てて説明してしまった。


「は?ケビン、ケビンが言ったことが、まったくわからないんだが」


 あれ?日本語でしゃべってしまったか?


「ん?もう一度言いましょうか?」


「いや違う、違うから。マジックバッグ?アルバートの腰につけていたあのポシェットはケビンが作ったのか!同じようなのが入っているんだな。はあ、本当に規格外なんだけど。でもありがたい。使い方を実演して教えてくれないか?」


 僕達はコソコソと外に出た。周りは準備で慌ただしくしている。静かに静かに外に出た。笑ってはいけないよ。


「このぐらいの敷地なら家を出せますね」


「ケビン、本当にわけのわからないことを言っているのは自覚がないのか?家が出せるって?」


 百聞は意見にしかずだ。さっさと見せてしまおう。人が来たら困るし。ドーンと家を出した。


「フィルお兄ちゃん。はい取扱説明書。これを見ながら確認していってね。ここが玄関ね。指紋認証をしよう。指紋認証した人しか開けられないから。はい、ここに手を置いて」


 それから中に入りリビング、それぞれの部屋、お風呂、キッチン。魔石を置けば水が出たり、魔道コンロが稼働することを説明。そしてシャワーの使い方。最後かぎの掛け方。ついでにテントの使い方。これで全部説明で来たかな。あれ、フィルお兄ちゃんが疲れ切っている。


「お兄ちゃん、大丈夫?」


「大丈夫に見えるか?本当にアルバート達はよくついていけるな」


「慣れですよ、慣れ」


 大笑いしているフィルお兄ちゃん。俺も慣れることにするよだって。家を自分で出し入れしているフィルお兄ちゃん。楽しそうで何よりです。さてと戻る準備が出来たかな。早く帰って安心させないと、心配しているかな。


「ケビン、ありがとな」


 照れるからやめて。命と心の拠り所は大事だから活用してね。


 後ろから声が聞こえた。まずい誰か来てしまったか!夢中になっていたから気づかなかった。


「なんだこれは?家なのか?」


「あっ、父上、あのこれは家です。不測の事態用の家です。すごいでしょう」


 自慢してどうするよ!早くしまってよ、フィルお兄ちゃん。イケメンのできるパパさんにどうやって説明すべきか。とぼけてもダメそう。眼力が僕を離さない。蛇に睨まれた蛙の如く、ブルブル震えちゃうよ。僕ちゃん、9歳なんだよ。そっと、フィルお兄ちゃんの後ろに隠れた。視界を遮らないと、怖いよぉ。


「父上、小さい子供を睨んではダメです。かわいそうにブルブル震えているではないですか。ごめんね、ケビン。父様は母様や俺ら子供達には甘い表情を出すのに、特に母様にはね、他の人には怖いんだよ」


「フィルズ、ケビンは全く怖がっているようには見えないけどな。お前もまだまだだな。ケビンのように腹黒い性格を持ち合わせた方がいいぞ」


 なんですと!腹黒いとはひどいではないか!でもなぜ腹黒いとわかるんだ?絶対自分も腹黒いから他の人の腹黒さがわかるのだな!しかしここはそんなことは見せないぞ。


「フィルお兄ちゃん」


 洋服をちょっと掴んで見上げる僕。どうよ、幼気な子供風。


「ブワはっはっは。健気に見えるぞ、ケビン。で、説明してもらおうか」


 真顔のフィルパパ、怖し、恐るべし。僕の健気な子供作戦は空振りに終わった。仕方なしにフィルパパに取扱説明書を渡し、再度家の中で説明をした。


「これはいいな、くつろぐことのできる家だな。ほー、魔道ポットか、いつでも飲めるな。これは?黒い、なんだ?飲み物か?」


「それはコーヒーという飲み物です。ブラックで飲んでもいいですし、クリームや砂糖を入れてカフェオレにしてもいいです。目が冴える成分が入ってます」


「ケビンは知らない単語をさっきからぶちこんでくるよな。意味がわからないのがたくさんあったぞ」


 フィルパパごめんなさい。喋りまくっていたから、知らない単語がバンバン出たかもしれない。


「まぁ、便利な魔道具がたくさんある。これで人知れず余暇で過ごせるものだな。ここの寝具も良さそうだ。これはフィルズのものなのか?」


「はい、ケビンが()()()にくれたのです。私のものです」


 それからフィルお兄ちゃんは家をさっさとしまい何事もなかったように、ポシェットを腰につけて、屋敷に戻ろうとしていた。


「ケビン、早く戻ろう」


 腕を取られ、素早く屋敷に戻る。屋敷ではすでに準備を終え、料理人2人が待っていた。この人たちが一緒に行く料理人か。


「ケビン、わたしも行くので少し待っていて欲しい。仕事の采配をしてくる。待っていてくれ」


 フィルパパ、有無を言わせない感じなんだけど、行くことが絶対になっている。フィルお兄ちゃんと顔を見合わせ、驚いた。えー!いいの?宰相さんだよね。これをずっと考えていたのか?今日中に戻らないといけなくなるのか?僕が大変ではないか?えー。お義父上に挨拶しないといけないからな、と取ってつけたような回答。単なる転移したいだけじゃないのか?もしくはジェラルディン様に会いたいのか!大人って!




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