197 俺達は今
僕達は今厨房に来ている。あれから4人衆で行こうとしたらバレてちびっ子達も行くと泣きつかれ、全員でやってきたのだ。
ちびっ子達と女の子、イザーク、レックスは危ないので火がないテーブルの方で侍女、護衛騎士達に厳重に見張らせ待機させた。
「料理長、ケビンだよ。今からね、肉まんとピザまんととる?とる?なんだっけ、巻いて食べるものを作るんだよ」
レオン、また新しい用語でごめん。トルティーヤね。覚えにくいよね。名称をタコスにしてしまおうかな。両方新しい単語だな。同じか。
「初めまして、フォーゲリア伯爵家三男ケビンです。よろしくお願いします」
挨拶は大事。恰幅の良い料理人だった。グリムに酷いことをした料理人達じゃないよね?
「レオンハルト様からお噂は予々お伺いしております。今日はどのような料理を作るのでしょうか?」
怖い、怖いぞ。眼力が。たかだか伯爵家の小僧が王宮で料理だ!ふざけたことを言いやがってというような目だ。
「あの僕が作る料理は気軽に食べられるおやつのようなものなので大したものだはないのです。王族の方々に出すようなものではないので気にしないでください」
「えー、ケビンのところで食べる料理やお菓子は本当に美味しいよ。この前、ここの料理人に作ってもらったんだけどなんとなく違ったんだ。ケビン、いつでも食べられるように作り方を教えて欲しいの」
うちの料理長を連れてくればよかったよ。でも、料理人にもプライドが、特に王宮で働く料理人はプライドが高いから伯爵家の料理人に教わるなんてと思う人もいるだろう。
「薄力粉とオリーブオイルもしくは油、塩と水でトルティーヤの皮を作ります。具材は挽肉を炒めたものや、鶏肉を茹でたもの、あとはお野菜を千切りにしたもの、なんでも大丈夫です。味付けは僕がしますので曽於まで用意していただけますか」
料理を刻んだりするのはお願いした。ちびっ子がいるので細かくしてもらった。
僕は東地域でもらったエビでエビマヨを作ったり、シーフード、ソーセージ、チーズ、マヨネーズ、チリコンカンやサルサソースもどき、まだタバスコを作っていないから唐辛子でもどきを作ったのだ。
「ケビン様、これはなんですか?」
シーフードを指していた。エビ以外は知らないかな?
「これはね東地域に行った時に獲ってきたエビ、イカ、タコだよ。他にも魚はあるけど、今回はこれら。美味しいから食べてみて。味見してみて。エビマヨ、美味しいよ。これは辛いソースだよ。口の中がヒーってしちゃうよ。ソーセージは知っているよね?これはひき肉を炒めたもの。みんな、この皮とこれらを巻いて食べるのがトルティーヤだよ。料理人さん達も一緒に食べよう!味が分からないと作れないからね。そうだあとは肉まんピザまんだ。ちびっ子達に手伝ってもらわないと」
僕はちびっ子達、イザーク、レックスがいるテーブルで肉まんとピザまんの包み方を実演した。
「にぃに、ずぅーっとまえにとうさまたちとつくったにくまんとぴざまんだね。チーズがいっぱいのほうがいいなぁ」
「レオン、料理長、みなさん、子供達の補佐をお願いしたいです。こうやってパンだねを広げてその中にこの味付けした肉を入れてください。赤い方にはこのチーズを入れて、そしてここをぎゅっと具が溢れないように包んでください。できたら蒸し器で蒸します。これが道具です」
僕はマジックバッグから蒸し器を出した。かなり驚かれてしまった。
「ジュリ、できそう?」
「うん!できるよ、ほら!」
惜しい、包みが甘い。そこはそっと料理人達が手直ししてくれた。ありがたい。
みんな真剣に包むことをしていた。そうだ、クッキーもこのままやってもらおう。生地は寝かせてマジックバッグにしまってある。
「ジュリ、みんな今度はクッキー作ろう。こうやって伸ばしたらこの型で形にして欲しいんだ」
これはオズワルドさんに星、丸、四角、四葉のクローバー風、お花の型を作ってもらったのだ。料理人達に頼んでちびっ子の補佐してもらった。イザークとレックスも楽しんで作っている。慣れてくると自分の兄弟を手伝って楽しんでいた。
「にぃに、おはなのくっきーができるの?かわいい。こんどドラゴンさんのかたちがいいなぁ」
いや、それは難しいのではないか?でも言えない。
「そうだね、オズワルドさんに色々な形を作ってもらおう」
「うん!」
かわいいぞ、ジュリ。他の子達も一生懸命に作っていた。
「ケビン、何しているのだ!どこにいるかと思ったらなぜ厨房に」
あちゃー、兄様達がきてしまったよ。
「えーと、調理実習の時間です」
なんだよ、その調理実習の時間って。わけわかんないだろうなぁ。キョトンとされているよ。
「みんなで作る喜びを分かち合う時間です。自分でやることの喜びを知ってもらおうと?かな?」
胡散臭い目で見られている。
「あははは、ケビン、レオンハルトが言ったのであろう。この前一緒に作ったのだが、ケビンのところで食べたものとなんとなく違うのだよ。だからうちの料理人に教えてほしくてこんなことを言ったのだろう」
「兄上、やっぱりケビンの料理は美味しいよ。味と肉まんのふわふわ感が違うんだよ!」
レオン?もう食べたのか!口の周りにマヨネーズがついているよ。
「レオンハルト、みんなで一緒に食べなければダメじゃないか!口にマヨネーズがついているよ!」
「これは味見だよ!」
ものはいいよう。
「どうだ、ネルド。今後作れそうか?」
ネルドさんというのか。
「味は覚えました。それに近く、いえ、これより美味しく作れるようにします。しかしこの辛いソースは分かりません。この辛いソースはクセになります。ケビン様、恥を忍んでお願いいたします。レシピを教えていただきたいです」
「うちの料理長に教わるのはダメ?プライドがあるのかな?うちの料理長は美味しく作るんだよ」
「まだトーマス様がいらっしゃいますか?メルシー様のご結婚の時に王宮料理人を辞してメルシー様に付いていきましたから」
えっ!そうなの?料理長、王宮の料理人だったの?えーーー!
「確かケンドリック様がご配慮したと思います」
兄様達もびっくりしていた。貧乏でも少ない食材で栄養のある料理を作れるとは思っていたがケンおじちゃんのそんな配慮があったなんて知らなかった。
「トーマス様に教わりたいです。よろしくお願いします」
ネルドさんが頭を下げている。やめて、うちに来てくれないかなあ。そうすれば再会と料理のレシピを教えられるよね。
「今度うちに遊びに来てください。いろいろ料理を作りましょう。頭を上げて欲しいです」
「あら、私が連れてきてあげるわ、さぁ行くわよ、ケビン」
えー、クルさん、なぜすぐ行くの?
それからさっと行って、さっと連れて帰ってきた僕達。うちの料理長トーマスと副料理長ランドル兄弟を連れて戻ってきたのだ。うちの料理長トーマスと副料理長ランドル兄弟を連れて戻ってきた。単なる自分の好きなものを食べたいだけじゃないか。ここでは遠慮して言えなかったのよ、これで作ってもらえるわと言っている。もう食いしん坊め!
料理長とネルドさんと再会を喜んでいた。それからはいろんな料理を教えていた。
結局兄様達も一緒に作り兄弟助け合い、笑い合いながら作った。食べるのは厨房ではなく部屋に戻った。厨房では食べられないよね。
部屋に戻り、トルティーヤを自分で包んで食べるという初めての試みを実施。ちびっ子達は兄弟達にこれとこれを入れて包んでとお願いして楽しく食べていた。ちびっ子達の口の周りにソースがついているのを拭き取る兄達。甲斐甲斐しく世話をしている。ありがとと言って食べる弟達にメロメロだ。
そして兄達はなぜかサルサソースにハマっていた。特に隣国のフィルズ様はお気に入りになっていたようだ。そしてフィルズ様宅の料理人がうちにくる?アルバート様が王宮でしようとなったのはいうまでもない。
で?で?料理人さんは何処にいらっしゃいますか?当然隣国に、え?どうするの?
「そんなの私がいればあっという間よ」
いえいえ、怖いからやめようよ、クルさん。転移門とかできないの?どこでも扉はできないの?これは保護者相談案件です!僕は怖いから無理です!いくら僕でもそこは強く拒否するよ。




