195 その頃の大人達(執事視点)
(大人達を見る執事視点で語っています)
私、国王陛下が住まう王宮の執事をしておりますリックスと申します。執事兼護衛兼影を兼ね備えた者達がこの王宮で働いております。
さて赤ちゃんのルーナ様とクレア様を囲み大人達は談笑しております。子供達は子供達で集まっているのです。
「本当にすまなかった、メルシー。何度でも謝る」
メルシー様に謝る国王陛下。王妃様との結婚の後ろ盾になっていただいたボロレス公爵様に頭が上がらず、魔法属性のないメルシー様を蔑ろにしていた日々。毎日、懺悔をする国王陛下と王妃様を見ていた私は心が痛かった。その日々が終わったのだ。
「お父様、もういいのです。私はルークと結婚し、幸せな日々を過ごしていましたから。子供達にも恵まれて、楽しく過ごしていますのよ」
少女のようにあどけなく笑うメルシー様。お若く見えるのはなぜなんだ?アリステリア様も最近若返ったようなお顔立ちなのだ?髪はとても光り輝いているのだ!
「父上、もうメルシーは謝罪はいいと言っているのです。会うたびにそんなことをしていたら、嫌われてしまいますよ」
ケンドリック様、その一言は国王陛下に辛い一言なので言ってはダメなのです」
「き、嫌わないでくれ、メルシー」
涙もろくなった国王陛下だ。メルシー様に最近お生まれになったルーナ様が王妃クラリス様にそっくりなので、嬉しさのあまり涙する国王陛下にはびっくりいたしました。
「全く、お父様はボロレス公爵に言いように使われて!宰相のウェルスをやめさせなければもっとボロレス公爵を押さえつけることができたのに!学園だってボロレス公爵の息のかかった者達が就いているわけでしょ。私物化しているのよ!南地域の無能な者達ばかりが重要なところへ就くようになってしまったではないの。ケンドリックお兄様、もう膿を一掃させなさいよ!」
ジェラルディン様の憤慨はわかります。優れた人材を排除してしまったことは、国政に支障をきたすのです。はっきり言ってボロレス公爵様よりウェルス様の方が優れていることは誰でもわかる。しかし力をつけてしまったボロレス公爵様には逆らえなくなってしまったのだ。
「あぁ、それは私も思っているところだ。父上、国王の最長は60歳までですが、もう60歳前に譲位しませんか?私が南地域の無能どもを一掃いたしますよ」
「しかし、ボロレス公爵には感謝しているのだ。確かに近年、南地域を中心に考えすぎるのだが、私も今回の件で自分の意思を押し通すことができた。これからは対等に物事を考えることにする。しかし、譲位を早めてもいいな。譲位したらルーナの近くに住もうと思う」
国王陛下はまだボロレス公爵様を庇い立てる。しかし、ん?ルーナ様のところに住むとは?
「「「「は?」」」」
皆様疑問に思われたのでしょう。
「父上、どういうことですか?ルーナの近くに住むとは」
「王宮では遠いので会いに行けないではないか。ルークの領地に移り住もうかと思う。私もルーク達が立ち上げた商会で働くぞ!そう決めたのだ」
国王陛下、そう決めたのだと豪語するがみんな納得しておりませんが!
「国王陛下、我が領地で住む?いや、それは」
「ルーク、国王陛下ではない義父で良い。メルシーの夫は私の息子だ。そんな他人行儀な言い方はダメだ。これからは義父と呼んで欲しい。今まですまなかったな。だから親交を深めていくために譲位したら、メルシーとルーナの近くに住むことにする。昨日クラリスとも話をして、2人でそう決めたのだ」
いやいやいや、フォーゲリア伯爵領はその、言ってはなんだが貧乏貴族と言われている。そこに国王陛下や王妃様を住まわせるなんてできないではないか!住むためにお金を費やすと国民の非難の目が向けられてしまう。ダメですぞ、国王陛下!しかし、なんで先の国王陛下までそんなことを言うのかな。だんだん私の言葉がおかしくなっていく。私は王家に仕える執事なのだ、動揺しては行けない。常に平常心だ。ふぅ。
「私達も一緒に行こうかな。楽しそうだな。ケビンは聡明な子だ。それにジュリアスはスキルがすごい。剣術を私が教えるぞ」
先の国王陛下ドレイク様や王太后メリジェーン様が賛同する。
ルーク様とメルシー様が驚き顔を見合わせている。
「国王陛下、あっいえ、お義父上、うちは敷地は広いので住まう家は建てられますが警備面で不安要素があります。お考えを改めた方がいいかと思います」
ルーク様、敷地が広いから家は建てられるってそう言うことではないのだ。
「そうだ、父上、今度ボールドウエッジ公爵殿がけいば?という馬の競争をするらしいのです。その時にフォーゲリア伯爵領がどのような場所か見に行きましょう」
「ライアンの領地でけいば?そのけいばというのはボロレス公爵が馬の競争をしたが楽しくないと言っておっただはないか。ライアンのところのけいばは行くのか?」
「ええ、楽しそうですよ。ボロレス公爵のしたことは多分ライアン様のところで話が進み、馬の競争というだけ聞いて、その通りに行っただけではないですか?ライアン様のところは領民達とお祭りを兼ねてけいばというものをするらしいです。イーサン達魔道具士達が魔道具で楽しい乗り物を披露するらしいですよ。私も子供達と一緒にあれに乗りたいですね。楽しそうですよ」
一体どういうものを作っているのでしょうか?イーサン様とはメルシー様のお子様。確か王宮では事務次官をしていたがやめてしまったと聞いていた。魔道具士におなりになられていたのですね。魔道具士は王宮魔道施設に入る以外、道はない、狭き門だったのだが、王宮魔道具施設に就職できたのであろうか?
「そうよ、ルーク、メルシー、あなた達の子のイーサンは素晴らしい魔道具を作るのね。そしてロナウドが商会を立ち上げるなんてすごいわね。どうしてあのような便利な魔道具が作れるのかしらね。私も買って帰るわ。だから商会に立ち寄っていいかしら?」
「お姉様、まだ王都の商会はオープンしていないので、そこに入ることはできるわよね?ルーク」
「そうだな、すでに準備はほぼできているので大丈夫だろう」
ルーク様とメルシー様は仲睦まじく見つめ合って話をしている。本当にメルシー様、ルーク様と結婚して幸せそうで良かったです。貧乏と言われているのに商会を王都に作ったのか。どんな商会なのだろうか?
「ケンドリック兄様だけずるいではないのか!メルシーといつ交流をしていたのだ!」
第二王子ルシアン様もまた援助ができないもどかしさで心を痛めていたのだ。
「まぁ、レオンハルトがな、心を閉ざしていた時にケビンに出会ったんだよ。そこから交流し始めたのだよ」
そう、レオンハルト様はワガママを言っていた時期があった。本当にあの時、レオンハルトは誰の声も聞かない状況で、国王陛下達は心を痛めていた。しかしある時から明るくなられたのだ。そしてケンドリック様ご家族がひとつになりレオンハルト様をお守りし、教師陣を一掃させたのだ。そうなのか、ケビン様と出会い変わったのですか。
「レオンハルトとケビンはものすごく仲良しだよな。フェンリル様とカーバンクル様にお会いした時も一緒について行ったのだろう?それではレオンハルトがフェンリル様と契約したのはケビンのおかげでもあるのか?ケビンは精霊様を呼び寄せた立役者だあろう?」
「今頃あの子達は何をしているのでしょうかね。歳が近い、お兄様のところのレックスとうちのイザークはあの2人にどんな影響を与えられるのかしらね。特にうちのイザークは本当に消極的で何をしたいのか、何を考えているのかわからない子なのよ。ケビンちゃんがいい影響を与えてくれたらいいのだけど」
ジェラルディン様のイザーク様は消極的なお子様です。体を動かすことは不得意なタイプですね。逆にレックス様は騎士志望なので活発なお子様です。2人は真逆でしたね。
ケビン様はそれほど影響を与えるられる方なのでしょうかね。




